第8話 名付けられる予感
present by まさき
ボクはカウンターの奥にいる店主を呼ぼうとした。
「すみませ・・・ん!?」
店主はボクらの席のすぐそこに立っていた。
「どうしたのかな?」
年老いた店主の深く鋭い眼光がボクらの時間を止めた。
「あ・・・あ・・の・・・」
ボクの言葉は老人に喰われた。
「この絵がどうかしたのかな?」
ボクらの視線とともに、腰に手をやった老人はゆっくりと絵の前に歩み寄った。
そしてボクより先に、ナミエがこの事態を説明しだした。
「ね、ねぇ、この絵がね・・・・・・・・・」
ナミエは赤い服の少女を必死に説明しようとしている。
ようやく泣きやんだかえでもそれを聞いていた。
「・・・・・・・・・というわけなの。」
ナミエの話が終わると同時に、老店主はカウンターの奥へと戻ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。」
ボクの呼びかけに老人は小さな声で答えた。
「3人ともクルミだったよね。」
ボクらは老店主の一挙手一投足に見入っていた。
いや、むしろあの鋭い眼を持ったその人間につままれていたのかもしれない。
新たな客が入ってくることもなく、老人1人と高校生3人の静かすぎる空間には、時計の針の音が小気味良く打ち響いていた。
やがて店主が『クルミ』を持ってきた。
「おまちどうさま。」
店主の眼には先程の厳しい光はなかった。
「大丈夫かい?」
老店主はかえでを気遣いながら3人の輪に入ってきた。
「かえでちゃんを泣かせちゃだめじゃよ。」
「あ、はい。」
そして老いた店主はボクらの前の席に腰掛けると話し始めた。
「この絵はね・・・・・・」
気のせいか、老人の口元がわずかにゆるんだように見えた。