(↓新しいもの)
幕間の雑談
「あ〜超能力欲し〜!」
「また馬鹿なこと言い出した これが主人格と思うと、もうムカつくとかの次元通り越すね。」
「まぁいいんじゃん このガキっぽさが。」
「AYAは興味がないからって勝手なこと言ってるけど
そんなこと言うからコイツここまでこんなまま来ちまったんだよ。」
「じゃあ改造手術でもやる?」
「なんだよ ヒーローでも作るのか?こいつがなっても超ヨワそうだけどな。」
「俺の話聞いてた?」
「聞いてない。」
「だから、超能力もらえるならどれがいい?ッて話。」
「くだらない。」
(AYA、相手してやらないとまた腐るぞコイツ)
「じゃあ超能力のあるなしは置いといて、どんなのがあるか言ってみ。」
「えーと、知ってる限りだと透視・千里眼・念写・サイコキネシス・物体創造
サイコメトリー、くらいかな」
「交霊とかは?」
「それも・・・まぁアリか 予知能力、精神感応、テレポーテーション、パイロキネシス
なんてのもそうかな。」
「パイロ・・・何?」
「パイロキネシス。念力の力だけで火を起こせる力のこと。あとは時間移動くらいかな」
(なんだ、功刀も結構こういう話題好きなんじゃん)
「超能力を日常レベルで使うとするとどうなるかな?」
「透視・千里眼は・・・覗き?念写はなんだろ浮気の証拠写真?
サイコキネシスは手を使わずにお茶碗が持てるとか
サイコメトリーはやっぱり覗きの1種かな 予知は競馬とか賭け事に
精神感応は他人の心を覗くんだよね テレポーテーションは世界旅行ができそう
時間移動は・・・よくわからない。」
「予知はよさそうだ。」
「そうかな?パンドラの箱の伝説には最後に残った災厄が予知の力だって言われてる
『希望』って言うのは意訳だからね。人間に『不確かな未来』があるから
将来何になろうとか夢があるんじゃん もし予知能力のおかげで
自分のなりたい職業に就けないことが、さらに早死にすることがわかったらどうする?」
「・・・・でも予知能力者は自分の都合の悪い未来は見ないって言うよね。」
「それは自分の何とかできる範囲ならなんじゃない?
右の道には怖い犬がいて左の道には財布が落ちてる予知をしたから、
左の道に行く、ってことはできると思うけど、
いつ死ぬかとかは自分の自由にはならないからねぇ。」
「じゃあやっぱり時間移動!」
「永遠に死なないからね 2000年に死ぬとして
あらかじめ1998年に2010年にいっておけば自分の葬式に参列した人に会う、
なんてこともできる。」
「それ誰だっけ?」
「サン・ジェルマン伯爵。」(こことここもどうぞ)
「AYA意外と博識だね。」
「いつそんな知識仕入れてんだろ。」
「くだらない時間を過ごしたね。」
「たまにはいいんじゃん。」
「あたしが考えた今回のスタイル 誰にも気付いてもらえなかったのはちょっと残念。」
―――――――――――――――――――――――――――
(↓過去のもの)
第6場
〜近視眼の禁止観〜
「息するためだけにここに来んな。」
「・・・・・・」
愁は何も答えない。視線は止まっていて、焦点もはっきりしていたが
彼は見ているだけであり何も「視て」いないことを確認してから
功刀は顔を上げて肺に酸素を満たした。
愁はぼそぼそと何かつぶやく以外は静かにしている。
邪魔はしていないが、かといって居る意味もない。
普段価値判断の基準を善悪より意味の有無においている愁が
意味のないことをしている。そしてそれに本人が気付いていない。
「そんなに後輩に幸せレースで負けたのが悔しいのか?」
「・・・・・・」愁は一瞥もくれない。
(軽口を叩くのもムダ、か・・・)
この調子では愁は少なくとも今日は何も答えないだろうし、
もしかしたらかなりの時間をここで過ごすかもしれないと功刀は考えた。
そして少し胸が痛んだ。愁がこうなったことには功刀にも責任がある。
―あの時―
告別式の最後に行なわれる献花。
生者と死者が最も近づく瞬間。
あの時も愁はここに降りてきていた。この場所、自分たちでは「ルーム」と呼んでいるが
ルームは何も愁の辛いときの逃げ場所、駆け込み寺ではない。
ルームは余裕があるときにはダベリ場のようになっているが、
全力で物事に当たらなければならないときは、一度ここに来て100%を導き出す、
そのための場でもある。
告別式でも感情的には余裕などあるはずもなく、ルームは真摯な空気に満ちていた。
遺影は見た、が憶えていない。現実に話した顔の記憶があるのだから、それで充分である。
しかし献花の時は歩みはゆっくりになった。
愁は棺の中をしっかり見ようと考えていた。棺の中には白い布で隠されているとはいえ、
確かに「カラダ」があるはずだった。それを見ることが礼儀なのではないかと思ったからだ。
愁は足元からだんだん視線を動かし、腰、腹、胸、肩・・・・。
功刀はそこで視線を止めさせた。愁が驚きと怒りの混じった目で振り返る。
「やめておけ。」
「うるさい。出てくるな。功刀が行動調整をするのは反射的な行為が必要な時だけだろう。
越権行為だ。」
愁はそういうと軽く功刀の胸を突き飛ばし、献花を続けようとした。
「止めろって言ってる。」
功刀は愁の肩を掴み「スポット」から引きずりだすと、自分が表に立ち
献花をすませると退場した。
その瞬間で愁の右拳が飛んできた。功刀はその衝撃で「スポット」からはずれ、
机やなにやらに腰を打って止まった。
愁はどちらかというと気持ちを落ち着けたまま拳を飛ばしたようだった。
そんなことをしても表に出た行動としては「献花を行い退場した」それだけである。
それをわかっているからこそである。
―そして今―
功刀はなぜあんなことをしたのか自分でもわかっている。
功刀は今でも原始的な感情を多く持ち、あの時は純粋に「畏れ」を感じた。
死ぬのが怖いとか、死者を見るのが怖いとかそういうはっきりした怖れではなく、
ただ全身を絡め取るような感情が功刀には耐えられなかった。
だから功刀は視線を上げず、はっきりと棺を見ることもせず、逃げるように退場した。
功刀はそんな自分自身許せなかった。仕方がないと自己弁護してみても、
仕方がなくないこともわかっていたし、愁が考えた礼を尽くせなかったことにも悔いが残り、
そしてそれを愁が責めないことも辛かった。
傍から見れば男二人がなんとなく重い空気の中にいる。なんて滑稽な光景だろうか。
愁も、功刀も、疲れきっていた。
――――――――――――――――――――――――――
第7場
〜コース〜
愁は左の頬をさすった。まだ熱を持っていて、触ると少し疼く。
「最近暴力的になったのかな。」誰に聞かせるでもなく、口の中だけで生まれた言葉は
口の中だけでその役目を終え、空気中に放たれることは無い。
外界とルームのちょうど中間、冷たい階段に腰を下ろして愁は一つ小さく息を吐いた。
―話は2時間前に遡る―
さながら動物園の中で欲求不満になった熊のように、愁は目的もなく歩いていた。
ルームの中心にはAYAがいる。そろそろ髪の毛を切る時期だ。
本筋には関係ないがAYAはセールストークに意外と弱く、買い物に計画性も無いため
街をふらつかせると当初の目的とは全く違ったものを買ってくることもしばしばあり、
その度に功刀に睨まれていた。今回は本来の仕事についているようだが。
「なにうろうろしてんのよ。ジャマ。集中できないじゃん。」
「集中したらいいものができるのか?」
「しないよりはね。そういうテキトーなこと言うなら別に構わないよ。
明日店に行って『モヒカンにしてください』って言うだけだから。
1回やってみたかったんだよね。モヒカン。ベッカム、、、、はちょっと古いか。」
「これから入試だってあるんだっつーの。」
「じゃあこんなとこいないで勉強でも何でもしてなよ。」
「・・・・・・。」
「でた。『ボク、悩んでます』のポーズ。そんなんだからオンナに捨てられちゃうんだよ。」
「ふぅ。『妬み』って感情も人間だから持つよなぁ。」
「そりゃね。なに、誰かを妬んでるの?」
「たぶん、ね。」
「それだけ分かってれば充分なんじゃないの?妬みにまみれた人間でありたくないなら
何とかしてそれを消すしかないじゃん。終了。」
「違うよ。そうじゃなくて妬みがなぜ生まれてるのか、もっと言えば俺がなにを妬んでるのか、
そこが悩みの種よ。」
「ふーん。で?」
「なんか最近自分の歩みが遅い、自分が進歩してないような気がしてね。」
「年はとってるけどね。」
「茶化さない!」
「でも実際年取ってる分前に進んでるとは思うよ。単に自己評価が低いだけじゃない?」
「そうだとしても。こう、、、、周り見渡してみるとさ、結婚してる奴とか明らかな目的持ってる奴とか
就職してく奴とかいるじゃん。それをなんだか妬ましく思ってるみたいなんだ。」
「それ・・・・・アンタの一番なりたくないオトコに近づいてるよ。」
「っていうと、、、。」
「そ、弱いオトコ。だってそうでしょ?自分でそういうコースに乗るのが嫌で
今の人生選んでるんだから、それでコースに乗ってる奴を妬むなんてお門違いもいいとこ。
自分の選択を引き受けきれないなんて弱いオトコ以外の何者でもないじゃん。」
「・・・・・・」
「あんまりいじめてばっかいてもアレだから。そういうのってよくあることだよ。
自分のおかれてる状況がちょっと望んだものと違ってるから他人を羨んだり憎んだりすることは。
大丈夫、『一時の気の迷い』ってやつさ。妬んだりするのはまだまだ心が健康な証拠。」
「・・・・・・」
「あーもう。あたしの仕事すすまないじゃん。ちょっと目つぶって前かがみになって。」
愁はなんかいいものくれるのかな、と思いながら言うとおりにした。
いいものがきた。目から星が出るくらいのビンタが。
「はい、退場!」
―思い出すだけで痛い―
愁の左ほほはだいぶ治まってきた。階段は冷たくて尻が冷える。
次はどんな髪形になるのか 不安半分 期待半分である