2002年10月27日  黒い汚物

 

 

珍しく、ある繁華街の路上で黒い羽虫を見る。

通常のより2回りほど大きなその姿に、一瞬たじろぐ。

私はヤツを黒い汚物と認識している。

 

もの言う口があればこう言うだろうか。

「私が戦闘モードで厨房に現れた時、店主を悪夢が襲うだろう。」

 

もちろん、有名店にでも現れれば、その不快さ醜悪さに騒ぎは起きる。

だが、それだけだ。汚物は汚物のまま、世評が動こうはずもない。

どれほど果敢に闘おうと、騒ぎを拡大しようとも、汚物は汚物。

ただ残るのは雑菌と不快感、そして潰された自分の臭い汁ばかり。

 

しかし、路上の黒い汚物には、そのような自己顕示欲も感じられない。

 

本能で動いているだけマシなのか、自覚がある方がマシなのか、

そのような問いは意味を成さない。汚物は汚物、それだけだ。

だから、通常は汚物の側も人目を意識しないものだ。無駄だから。

 

そのまま、ヤツは巨体に似合わぬ素早い動きで闇に溶ける。

 

ヤツとはそれっきり。どこへ行くのか見届ける必要もない。