<8> 黒テントの罠
斯波@クソゲーハンターは、モニターの中では完全に勝利者となっていた。
しかし、モニター越しの闘いは、意外な形で終止符を打たれることになる。
美和はこの図々し過ぎる囚人に気圧され、まず武器を持って落ち着こうと、シーツに
刺さっていたメスを引き抜いた。その時・・・見てしまったのだ。
「な、なんで膨らんでるの? ここ!」
制服姿で拘束される斯波の真ん中に、黒テント。大きさはそれなりに、投げやりに。
「いや、なんでって言われても、ボクのマグナム・・・。」
何と言って良いやら。申し訳なさそうに揺れる黒テント。
動けぬ斯波の胸元へ、するりとメスを突きつけて、美和が冷たく言い放つ。
「武器を捨てなさい。私の方が早いわよ。」
「捨てろとか言われても困るし・・・そもそも早くても自慢できないし・・・。」
困り果てる斯波に、睨み付ける美和。二人の視線の先には、黒テントいっこ。
「どういう仕掛けかわからないけど、頸動脈ぷっつんしたくなかったら今すぐアレを
出しなさい。」
・・・出せ言いましたよ美和たん。今すぐアレを出せと・・・。
「手が塞がってるから・・・その・・・チャックを開けてくれれば・・・。」
言いながら赤面する斯波を、怪訝な顔で見る美和。
「銃口にわざわざ手をかざす馬鹿はいないわ。その足元の裾からでも捨てなさい。」
「足元って! 無理だよ!! ありえないよママン!!!」
黒テントも一緒になってイヤイヤをしている。
「だってボクの体のマグナムだよ? 如意棒じゃないんだよ!! 尿意棒だけど!!!」
一瞬の間を置いて、美和の時が止まる。今さらながら黒テントの居住者を知った美和は、
顔から指先までみるみる真っ赤になっていく。
「不潔よーっ!!」
スパコーーーン!!!!
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
思わず蹴りつけた美和の上履きが軽快な音を立てると、斯波は断末魔の叫びとともに
口元に泡を溜め始め、程なく事切れた。
高等部1年の春、斯波が最後に味わった鮮烈な感覚であった。