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童話 短編 結婚

<ふうせん遊泳>

ぼく、旅行するなら夜と決めてる。 夜は昼よりももっといろんなものと会えるんだ、知ってる? 
知ってるなら、きみ、ぼくの友達だ。

 その夜は絶好の旅行日和だった。 何故って、空はすてきな満月で、
その上そのお月さまは特別にご機嫌だったのさ。 月の光って、青白いと思ってる?
でもその夜は、あまりにお月様がうたをうたうので、空はとろけそうなはちみつ色だったんだ。

ぼくはすぐにわかったから、ネコのポッキーとでかけたんだ。
公園に行くと、ぶらんこもすべりだいもお月様のうたにうっとりして、
普段はきぃきぃばたばたうるさいのに、すごく静かにしてるんだ。 
ぼくはふうせん売りのおじさんにちいさく声をかけた。
「ぼくにあおいふうせんを、特別製でください。 これからお月様のそばまでいかないといけないから」
ふうせん売りは言ったよ。
「そうかぼうやは今日呼ばれているんだね。 では特別製をいまこしらえてあげよう。」
おじさんはとても器用に、青い、ちょっと普通より大きなふうせんを、きれいな模様付きのボンベにつなぐと、おおきくおおきく、もっとおおきくふくらませた。そして、ポケットから透明なはさみをとりだして、さくさくとぼくのからだの大きさに合わせてふうせんを切ってくれた。

さっそくふうせんはぼくのための船になって、それにのったぼくとポッキーはどんどんどんどん、 はちみつ色のもっとはちみつ色なところまで、空を登っていった。 なにしろお月様の招待はめったにないから、お月様のご機嫌がよいときのすてきなうたを聴けるなんてもっともっとないから、ぼくの胸はふうせんほどにわくわくでふくらんでいたんだ。
 どんどんどんどん、またずっと登って、とうとうお月様の顔が見えるところまで登ってきた。 その時のお月様の衣装のすてきなことったら、もちろんうただってすてきだけど、それより10倍もすてきだったよ。 世界中の全部の花の色あわせたよりもっときれいだとぼくはおもったよ。

お月様はぼくに気がつくと、極上な笑顔ではなしかけた。
「よくここまで来てくれましたね、遠かったでしょう? 今日はお友達も来てくれてありがとう」 ポッキーは自分も歓迎されてることを知って、これまた極上の声で答えて、わらった。
とにかくその夜はすばらしかった。 あとの時間はお客はぼくとポッキーだけ、しかも特別製のふうせんの船は、そのリズムにあわせてゆらゆらとゆれて、ぼくはいつの間にか子守り歌の気持ちで、うとうととしていたんだ。 世界中で最高の子守り歌だよ!

「きみ、そろそろ、ぼくの出番だから、きみはもうおかえり」
突然の声に、ぼくは、知らないうちにずいぶん時間がたったのに気がついたんだ。
声をかけてくれたのは、下から登ってくるお日さまだった。 ぼく、あわてたよ。 なんたって、お月様の魔法がとけないうちに、下に戻らないとふうせんから落ちちゃうじゃないか。
でもおひさまは、そんなぼくににこにこ話し掛けてくれたよ。
「あわてなくても、実はぼくも、今夜はお月様のうたを聞かせてもらっていたんだよ」
そう、知らないうちに、お月さまのコンサートは、ぼくとポッキーの他に、山の陰で寝ていたお日さまも加わっていたんだよ。 お日さまは、実にすてきな夜だったね、と、ぼくのふうせんが下まで降りるまで、そこでにこにこ待っていてくれたよ。

だから、ぼく、夜と同じくらい、昼も大好きだね!