「雑念エンタテインメント」

1.

「栞ってさぁ」
「なんですか?祐一さん」
「胸小さいよなぁ」
「……そんなことしみじみ言う人は、基本的には嫌いです」
「……基本的には?」
「はい。
 祐一さんって結構カッコイイと思うんですよね。顔がですよ?顔。でもあえてランク
付けするならやっぱ中の上ってとこなんですよね。で、顔がそれ以下のランクの人から
今みたいな事を言われるのは嫌なんです。ほとんどの男の人はランク中の上以下なので
つまりは『基本的には』ということです。だがしかし!その人がめったにいないランク
が上の人だったら?ジャニーズのOくんやTくんみたいな超イケメンに今みたいな事を
言われたとしたら?嫌いだなんてとんでもない!!そんな人達にだったら私なに言われ
たって嬉しいです!!まあ結局何が言いたいのかっていうと、要は顔がよけりゃ何言わ
れたってかまわない、顔が全てってことですね」

「……なぁ」
「はい?」
「……お前って、貧乳だよな」
「嫌いです」


2.

「おはようございまふぁ〜」
 
 俺が朝食を食べていると、名雪がやっと制服に着替えてリビングに降りてきた。
 しかし、その手には、緑色の物体。こいつはまだ、寝ぼけているらしい。

「お前、早くメシ食わないと遅刻すっぞ」
「けろぴーは、ここ。……たぶん」
「は?たぶん?」
「……こっちだったかも」

 ぼす。

「……あのな名雪、良いことを教えてやろう」
「うにゅ」
「そこは、俺の席だ」
「……」
「そして今、そこには俺が座っている」

 ぼすぼす

「だおー」
「……」

 その日は、遅刻した。


3.

「ボクの最後のお願いです」
「……」
「……ボクのこと、忘れてください」
「本当にそれでいいのか?」
「え?」
「もったいないな〜。大丈夫、黙ってたって忘れるから。だからもっと違う願いにすれば?」
「うぐぅ、なんか、すごく悲しいことを言われたような気がするよ」
「気にすんな。で、願いは?」
「じゃあ……ボクのこと、忘れないでください、なんちゃって」
「あ〜ムリムリ。俺に出来ることじゃなきゃだめだって言ったろ?」
「うぐぅ……じゃあ、たい焼き奢って」
「ああ、わかった。だけどいつもの屋台は高いから別のところで買うぞ」
「……」
「昨日安い場所を見つけたんだ。きっとしっぽまでアンコは入ってないだろうけど大丈夫。
  そこは俺のまごころでカバーだ」
「……」
「よし、じゃあ行こうか」
「……うん」

 こうしてボクは歩き出した。
 たい焼きのしっぽに入っているという彼の微かなまごころを求めて。

 ていうか、忘れろよ。


4.

「……あたしに、弟なんていないわ」
「うん、それは知ってる」


5.

「天野、俺はお前のことが……前から好きだった」
「……」
「……俺と、付き合ってくれ」
「……そんな、酷なことはないでしょう……」

「……あのさ」
「なんでしょう?」
「俺、絶対そう返されるってわかってたんだよ。でも、実際言われてみろよ……」
「……」
「つらいぜ……」
「……ごめんなさい」


6.

「結局さ」
「……なに、祐一」
「お前の言う”はちみつクマさん”ってさ、あれだろ?」
「……?」
「○゜ーさんだろ?」
「……」
「そうなんだな?プ○さんなんだな?」
「……」
「やっぱりそうか!くまの○゜ーさんだったのか!」
「……ッ!」

 ぱちん。

「……」
「……祐一」

 頬を叩かれ呆然としていた俺に、舞は静かに言った。

「世の中には、言っていいことと悪いことがある……」
「……」
「……わかって、祐一」
「……ああ、悪かった」

 ふたりの初めてのケンカだった。


7.

「あははー、私に弟なんていませんよー」
「いや、あははーじゃないでしょ佐祐理さん」


8.

「どりゃあ!!」
「うわあ!!」

 北川がいきなり教室のドアを突き破って入ってきたもんだから、祐一は驚いて思わず叫んでしまった。

「ったく、驚かすなよ」
「おぉ、お前びびった?北川、北側から参上ってな」
「ぶっ」

  祐一、吹き出す。

「くっ……くく」
「え?」
「く……あははは!あはははは」
「え?なになにそんな面白かった?」
「やばい、やばいってこれ……あはは、あはははは」
「なに?大ヒット?もしかして」
「いや大ヒットどころかクリティカルヒット!」
「マジ?マジ?」
「つうこんのいちげき!」 
「うぉ、ちょっとこれこんなウケるとは思わなかった」
「マジやばいって……お前最高」
「こっちこそそんなにウケてもらって光栄だ」
「あー面白かった」
「ふう」


「ぶっ」
「え?」
「くっ……くく、あはは、あはははは」
「え?なになに?」
「やっぱ最高!お前のギャグ最高!あははは」
「……」

 イケる。北川はそう確信した。

「ったく、あんた達は賑やかねぇ」
「あれー、祐一なんで笑ってるの?」

 そこへ香里と名雪が教室へ入ってきた。
 今こそ、俺の至高のギャグを見せつけるとき!!

「美坂!水瀬!」

 俺 の ギ ャ グ を 聞 い て く れ っ ! !



 かおりんはバシルーラをとなえた!

 きたがわはえいえんにとばされた!


9.

「おーい、キツネー」

 リビングのソファーで寝そべりながらマンガを読んでいたら、いきなり祐一にそう呼ばれた。
 瞬時に真琴は思う。これはいくらなんでも酷すぎるのではないかと。
 だって、キツネ。
 キツネって。
 いや、確かにそうなんだけどさ。でもちょっと、あんまりじゃない?デリカシーなくない?
 基本的人権を尊重してなくない?
 いやでも、キツネに人権って関係なくない?
 ……ああうるさいっ!!

「ちょっと、祐一ぃ!!キツネってなによぉ!!」
「え、なんで?」
「なんじゃないわよぅ!そんな呼び方ないでしょっ!!」

 昔はどうだったか知らないけど、今は人間の姿なのっ!!
 真琴がそう言おうした時に、

「だって、キツネじゃん」

 祐一はそう言って自分の尻をぽんぽんと叩いた。
 ……お尻?
 真琴は自分のケツのあたりをまさぐる。

「……あ」

 しっぽ。
 しっぽだ。
 しっぽが生えている。

「ほら、キツネじゃん」

 祐一が得意げに言う。だが、真琴は全然悔しくなかった。
 真琴は祐一のケツに目をやりながら、祐一よりももっともっと得意げな笑みを顔中いっぱいに広げて
 言ってやった。

「ゆーいちにも、ゲルディモンキーのしっぽ、ついてる」 
「ゲルディモンキー!?」

 祐一は『なんだそのアグレッシブな名前のサルは!?』とかなんとか叫びながら鏡のある洗面所に走っていった。
 しめしめ。ホントはそんなの生えてないよーだ。

 真琴は自分にキツネのしっぽが生えていることも忘れて笑った。

 
10.

 名雪と初めて結ばれた次の日の朝、目が覚めると天井に紙が張ってあった。

『了承 秋子より』

 墨汁で書いてあった。やけにデカい字だった。
 かなり殺伐とした書体だったのがなんだか凄く気になる。
 だけど、まだ5時で眠かったのでさっさと二度寝することにした。
 目を閉じる。

 おやすみなさい。






 あとがき

 初めは名雪とか佐祐理さんだけだったのが、書いてる途中で全員登場させることになりました。
 なんで、無理矢理ネタを考えたキャラもあったり……だめじゃんそれ。


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