チャット大会にも参加してくださった政宗九さんがミステリと読者の世代について書いておられて、 それに付随して滅こおるさんと 186一服中さん。 こうしてみるとやっぱり皆若いなーと思うのと同時に、74年生まれでもうすぐ大台にリーチがかかりそうな年齢のくせして 「いーちゃんの新本格魔法少女がちょー楽しみだっちゃ」(若干誇張)とかのたまっているリッパーさんは一体なんなんですかと(笑)
『神のロジック 人間のマジック』 西澤保彦 (文藝春秋・本格ミステリマスターズ)
外界から隔絶された学校(ファシリティ)で6人の少年少女たちが教授や世話役たちと一緒に暮らしていた。
そこでは推理テストめいた実習が行われていて…
これはまいった。
謎の学校、推理テストめいた実習、新入生がはいるときの試練、皆がもつ物語、
加速しながら進行していく事件が最後に落ちつく先は崩壊の円舞曲。
ミステリとしての仕掛けにも驚かされたし、それをささえる世界構築が崩壊と表裏一体になっているあたりに
圧倒されてしまった。
わたし自身はとても面白く読めたし傑作だと思うのだが、本格ミステリともSFともとれる崩壊のカタルシスは評価がわかれるかもしれない。
『歌の翼に』 菅浩江 (祥伝社ノン・ノベル)
生徒や周りの人達の抱えている悩みやちょっとした事件を、ピアノ教室の亮子先生が解きほぐしていく連作推理短編集。
亮子先生の穏やかな人柄や彼女をとりまく人たちが暖かくて、読んでいて心がなごむ。
嘘や駆け引き 嫉妬に悪口といった負の面のほろ苦さもきちんと描きながら、
それでもすべてを優しく包みこんでしまうような、爽やかな終わらせ方が凄くいい。
そして、亮子先生の秘密が明らかになり、迎える最終話。
…まるでどこからか音楽が聞こえてくるような。あふれだしてくる優しさと穏やかな幸せに、わたしは感動して泣いてしまった。
第二話「英雄と皇帝」はピアノという素材を使って論理的な推理短編にしたてた逸品で、ミステリとしてはこの話が一番。
『マーチ博士の四人の息子』 ブリジット・オベール (ハヤカワ文庫)
メイドのジニーは恐るべき日記を発見してしまう。書き手は女性を死にいたらしめることが快感な殺人狂で、
自分はマーチ博士の四人の息子のうちの1人なのだという。そして殺人者の手記通りに殺人事件が起き…
殺人者の手記とジニーの日記のみで展開する一風変わった作品になっている。
倒錯的な殺人者やジニーのキャラクタはよく立っているが、マーチ博士や犯人候補の四人の息子はいまいち影が薄く
そのうえ真相看破のためのヒントが少なくて、容疑者候補が複数いるにも関わらず犯人当ての面白さがあまりないのがちょっと残念。
殺人者とジニーの対決はなかなかスリリングで、オチも”フランスの新本格ミステリ”きたーという感じで悪くはない。
『スイートホーム』 遠藤淑子 (白泉社文庫)
『王室スキャンダル騒動』に続く遠藤作品の文庫化第2弾。コミックス『スイートホーム』を中心に
絶版になったいくつかの単行本から短編を収録している。
遠藤淑子のマンガを読むとなんだか凄くホッとする。
ドタバタ騒動に笑ったり、シリアスな話にしんみりしたり、
ここぞというところで出てくる台詞に思わずハッとさせられたりと、読んでいていいなあと感じる瞬間はいくつもあるのだけど、
いざ遠藤淑子マンガのいいところをあげてみようとすると、どうしてもその安心感を強調したくなってしまう。
語られるお話があるべき所におさまっていくことの安心感。紡がれる言葉がぼくらの心にすんなり浸透していくことの安心感。
絵柄は地味だし、心をゆさぶるような鮮烈な印象の残るストーリーの書き手でもない。
でも、何の気負いもなく、ふとしたときに読んで気持ち良く本を閉じることができる。
中には心にもやもやしたものが残ってしまう短編もあるが、それはそれで”頑張らないとなあ”とほんのちょっぴり前向きになれる、
そんな気にさせられてしまう。
SFやミステリやホームコメディといったジャンルの境界線をふらふら漂いながら、
ほんの少しセオリーを踏み外すことで読者を笑わせるユーモアと味のあるキャラクタがおりなす騒がしくも穏やかなお話。
遠藤節だなんていわれるそんな作風がもう好きで好きで何度も読み返している。
コミックスでは『ヤマアラシのジレンマ』にはいっていたような記憶がある短編「シンシアリー」が収録されているのが嬉しかった。
それと、文庫版の表紙どうしてこんなに崩れた絵を使っているのやら…。そこがちょっと残念というか。
『王室スキャンダル騒動』はそんなことなかったのになあ。
傑作なはずの西澤作品の感想文が短めで、ミステリにあまり関係ない少女マンガの紹介文がやたら長いのは気にしない気にしない。 『歌の翼に』は優しい気持ちになれる小説が読みたい人におすすめ。今年2冊目の泣いた本になりました。 『神のロジック 人間のマジック』は今年のベスト級。『「アリス・ミラー城」殺人事件』とどっちが上かちょっと悩む。
そういえばカウンタが10000hit突破しました。去年9月の開設から約9ヶ月での達成。 週に1〜2回しか更新しないわりには意外に早かったなあ。見に来てくださる皆様ありがとうございます。 10000hit記念企画をやってみようかなと思うのですが、何をしましょうかねえ。アイディア募集。
『ハードフェアリーズ』 生垣真太郎 (講談社ノベルス)
バーの地下室で三人の男が銃殺され一人の女が生き残る。
20年後、その事件を再現した短編映画が映画祭の応募作品の中に…
前作『フレームアウト』にくらべると、謎やお話のポイントが明確で、
キャラクタ達もとっつきやすくなっていている。
擬似翻訳スタイルの書き方もあいまって、まるで海外ミステリを読んでいるような印象を受けた。
リフレインを繰り返す構成とか視覚的なイメージを仕向けるような文章はわたしの好みかもしれない。
歌うホームレスの場面とか映画の中で見てみたいなあ。
複雑に絡み合った事件(と人間関係)の真相が明らかにされる衝撃のラストがもたらす酩酊感はかなりのもの。
ただ、そこにたどりつくまでがちと長すぎるのが唯一の不満かな。
『壷中の天国』 倉知淳 (角川文庫)
地方都市で連続通り魔殺人が起き、電波系怪文書がばらまかれる。
一方、知子は通り魔殺人を気にしながらも家族3人でのほほんと暮らしていた。
小説としてお話として、たいへん面白い作品である。
登場してくるキャラクタ、殺されてしまう被害者側もふくめて、盆栽・発明・占い・投稿・健康などなど
趣味にのめりこむ人達(オタク)ばかりが出て来る。
彼らが少し世間から浮き上がってしまっている姿がうまく描かれている。
面白いのと同時にほんのちょっと悲哀を感じてしまう。
わたし自身もミステリやその他の趣味を”壷中の天”として抱き、世間から少し外れてしまっている類の者なので、
キャラクタにとても感情移入しやすかった。
主人公達が完全の事件の部外者であるという構図自体は短編などにはよくあるが、
長編でやっているのは珍しいような気が。
推理はなかなか論理的だし、伏線の張り方やその回収も充分なレベルなのだけど、
犯行動機が意外性はあるものの感心するよりも思わず笑ってしまうという類のもので、はっきり言ってバカミスである。
わたし自身はとても楽しめたのだが、”第1回本格ミステリ大賞”という冠にはこんなのでいいのかな?と思わなくもない。
『中野ブロードウェイ探偵 ユウ&AI』 渡辺浩弐 (講談社ノベルス)
ロボット技術の発達した近未来。ニンテル1024という最新型CPUを搭載したロボットが突然暴走をはじめるという事件が連続して起こっていた。
天才ハッカーである少年探偵小林ユウがその事件の捜査を依頼され…
ニンテルという会社の名前や、その社長ビル・ウォール
(連載「怪人21世紀」最終回の載っているメフィスト誌を見たところ、ボブ・ウォールという名前でした。
単行本化にあたりパロディ色を露骨にしたもよん)、
さらには怪獣映画に***の動く城などなど、パロディ要素が盛りだくさん。
個人的にはAIの電撃ネタに大笑い(元ネタの作品好きなんですよー)。
万能でコスプレで萌えーな電脳美少女・AI(アイ)の大活躍がたいへん面白い。
あと、終章にでてきたロボット娼館の設定に「お、SF!」と感心したり
(決して本当にあったら逝きてーなんて思っちゃいないですってば!)。
とあるミステリの形式を揶揄するような展開に笑ったりと。
結局これって”近未来SF探偵活劇”とでもいうのかしらん、という気がゆるみっぱなしのまま楽しめる娯楽活劇でした。
それにしても、こういう作品が「週刊ファミ通」じゃなく「メフィスト」に連載されてたってのが凄いなあ。
担当は太田克史?
『コズミック・コミックス AND』 清涼院流水・蓮見桃衣 (角川書店あすかコミックスDX)
1月1日、JDCにファックスで殺人予告状が届く。
「JDC、ミナゴロシ」という予告の通り、休暇中の龍宮達の目前で、JDC本部内で、探偵たちが次々と殺されていく。
アメリカで消息を絶った九十九十九の行方は? 殺人の方法は? 犯人は?
事件の背後で暗躍する**の魔の手からJDCの探偵達は逃れることができるのか?
コミック版JDC第2シリーズ。前作の『エキストラ・ジョーカー』はまだ原作(小説版)のアレンジという形だったのだが、
今作は原作とはまったく違うシロモノになっている模様。というか違ってください。
この展開で原作と同じオチにもっていかれても困ります。
読者公募の探偵がわんさか登場し、何人かは主要キャラとして活躍。
なんかオリジナル探偵を登場させて消化することに手一杯で肝心のシナリオの方がロクに進んでいないというのか、
主役のはずの龍宮の出番は少ないし、眼鏡な刃さんがその道の女の子のハートをがっつりゲットしてそうというか、
おまいら”刃xやるき”なんですか?とか、前作であんなにプッシュされた龍宮x若(若x龍宮)が…(涙)とか、
四葉さんはもっとぽやっとした感じの天然キャラにしてくださいとか、
うわーピラミッド水野ー!とか、いろいろあるわけですが、
わたしが声を大にして言いたいのは 犬神夜叉くんに萌えもえですっ! ということなのです。
それだけかよっ。ああ、それだけさっ。
JDCトリビュートとして出版された『ダブルダウン勘繰郎』や『九十九十九』よりもずっと、
JDCワールドにふさわしい作品のような気がする。
まあ、同人誌的お遊びだと言ってしまえばそうなんだけど、わたしはこういうの好きだなあ。
JDC探偵の読者公募に本気で応募したくなるくらいに。
名前:石崎コージィ(セクハラ探偵) 女の子にセクハラし激しいツッコミを受けることで推理がひらめく。助手に女子高生2人組。
とか、どうですか?<オリジナルちゃう(笑)
『雨あがり美術館の謎 名探偵チビー』 新庄節美 (講談社青い鳥文庫)
美術館から「ハリネズミのほほえみ」という絵画が消えた。
盗難時、館内には4人の容疑者。史上最小?の名探偵チビーの推理が炸裂する!
推理のための伏線を全部提示した上で”読者への挑戦”をつけるという趣向が楽しいジュブナイル・ミステリ。
探偵同士の推理(捜査)合戦もあったり、ダミーの真相があったりと、
キャラクタや事件の作り方などは本格ミステリの手法そのもの。
推理のポイントはやさしめではあったものの、真相を看破できてよかったよかった。
わたしのミステリ者としての面目もなんとかたちました(笑)
6/17に「fluid methodology」の フランネル様をお迎えしたオフ会に参加してきました。 その模様ははてなの方で書いてます。→オフレポはこちら。 東京近郊にお住まいなミステリ者の皆さん(もしくは東京近郊に用事で来られることのある皆さん)、 オフ会とっても楽しいんで、機会があれば是非いらしてくださいねー。
『笑う怪獣』 西澤保彦 (新潮社)
怪獣! 宇宙人! 改造人間!(妖怪?) SFなんだかオカルトなんだか特撮ものなんだか
人知を超えた者たちが跳梁跋扈し、なぜか奴らと接近遭遇を繰り返してしまう3人組の悲喜劇を描いた連作短編集。
奇想天外な道具立てを使った本格ミステリ!とかを期待してはいけない。
この作品は「西澤さん、こんなアホなお話を書いちゃってるよ。わははは」というのが正しい楽しみ方だろう。
なにしろ怪獣や異形のものたちに関しての理屈や説明は一切無い。
怪獣はただ突然主人公たちの前に現れては暴れまわって去っていくのだ。
一応ミステリらしき謎解きの形式をとった短編もあるにはあるが、この本はやはりミステリというよりはナンセンスコメディではないだろうか。
例えば「怪獣は密室に踊る」で読後に印象に残るのはミステリとしてのトリックやロジックではなく怪獣がはたした役割の方であるし、
ミステリ要素皆無でただ悪ノリした短編もある。
西澤保彦の最近の著作は重苦しいものばっかりだったので、久しぶりに能天気な西澤節が返ってきたようで個人的にはたいへん嬉しい。
バカバカしい展開や主人公3人組の駄目っぷりに大いに笑わせてもらった。
『さくらの季節 なばかり少年探偵団』 雑破業 (富士見ミステリー文庫)
眼鏡の少年・桃太、元気で無邪気な真花、関西弁の眼鏡っ娘・仲乃、にぎやかし担当の悟、心優しき正統派美少女のほのか、
仲良し5人を中心にしたジュブナイル小説。
第1話と第2話は登場キャラの紹介編みたいなもので、ミステリらしさは第3話に出てくる女の子の謎のみ。
ミステリ慣れした者にとっては簡単に想像ついてしまうネタなのだけど、ラスト近くに丹念に動機部分を解説してあるのには感心した。
講談社青い鳥文庫のジュブナイル・ミステリを読んでいる読者層におすすめしたらいいんじゃなかろうか。
第1話・第2話はほのぼのとしたお話で、変にミステリするよりこっちの雰囲気が好きという人もいるかもしれない。
と、キャラ立ての方向性やお話の作り方などポイントはきちんと押さえてあって、
これで満足できる人もいるだろうなあという感じはある。
が、この第1作目だけではちと外しているかなあというのがわたしの正直なところ。
文章がやや堅すぎで、ドタバタ騒動がじゅうぶんに面白く描かれているとは言い難く、いまいち乗り切れなかった。
ただ、作を重ねていけば面白くなるかもしれないという匂いがあって、これだけで切るには惜しい作品である。
続編に期待したい。
あと、イラストは非常にかわいらしくて良い。ロリというかショタチックなイラストが素晴らしくて、
特に表紙の桃太君のかわいさといったらそりゃあもう(死)
『助けて!ワトソン君 コスプレ探偵花梨』 じょうもん弥生 (富士見ミステリー文庫)
「探偵に必要なのは観察力とコスプレよっ!」とのたまう花梨ちゃんは中学生でコスプレ好き
な美少女名探偵。 その助手は小学生にしか見えないけど詳細不明な謎の少年ワトソン君。
そして花梨姉の小学校の同窓会でタイムカプセルから制裁リストが発見され、
その中の1人が同窓会当日に殺されてしまう。
さてさて、どこからつっこんでいいものやら…。
まずイラストがパッとしないなあという印象がある。”コスプレ探偵”なんて銘打つからにはキャラ萌えをそそる絵柄じゃないと駄目だろう。
『蒼い月は知っている』(白泉社My文庫)のメイド少女の絵くらいならよかったのに。
さらに、本文内でも美少女萌えコードがうまく描かれているとは言い難い。
つまり萌えを期待しても全然駄目なんである。
富士見ミステリー文庫の中ではミステリ色が濃い方だと言えなくもないし、
メイントリックのバカバカしさ(トリックそのものよりもそれに付随した人間関係の方)は笑えるし、
イニシャルの問題など評価できなくもないポイントはいくつかあるものの、でもやっぱりミステリとしても問題がちょっとありすぎる。
一番きっついのーと感じたのは、婦警コスプレの花梨を警察と勘違いした事件関係者が情報をべらべら喋るところ。
おいおい、花梨ちゃんって中学生の女の子じゃないのかよ。いくらコスプレしたり演技上手なんて設定でもそりゃないじゃろ。
レーベル内でもトップレベルの地雷本認定。
地雷処理班などと称されたことのあるわたしでも、さすがにこれの続編に手を出すのはためらう。
…とか言いながら読んだりして。
(冒頭のつづき) なーんて、本当はちゃんと佐藤友哉に投票しましたよ。 いや、嘘じゃないですって。そこまでユヤタンを敵視してるわけじゃありません(笑)