リッパーさんと面妖な死者たち 2003/07/05〜
前回「神のロジック 萌えのマジック 2003/06」からのつづき
03/07/05
『第四の扉』 ポール・アルテ (ハヤカワミステリー)
幽霊が出ると噂される部屋で交霊会の最中、殺人がおきる。その部屋は密室になっていた。 その事件以前におきた殺人未遂と失踪事件との関連は?  怪奇趣味と密室殺人で”フランスのディクスン・カー”と称されるポール・アルテの第1作目。
これは面白い。
「海外モノ古典のような本格ミステリを読んでみたい。 でも、重厚すぎるのとか古くさいのは苦手」という人に断然おすすめ。 オカルトな道具立てや密室殺人といった古典の香りを継承しながらも、翻訳の古さからくる読みにくさもないし、 ミステリネタの量のわりにお話自体はコンパクトにまとまっていてさくさく読める。 わたしはカーの作品は『皇帝のかぎ煙草いれ』と『赤後家の殺人』しか読んだことがないので、 ”フランスのディクスン・カー”なんて言われても正直あまりぴんと来ないのだけど、 カー好きにも特別そうでない人にも結構楽しめる作品なのではないかと思った。こういうの好き。 それと、トリックの1つは既読の日本の某作品と同じだったのに、真相明かされるまでまったく気がつかず。

『死が招く』 ポール・アルテ (ハヤカワミステリー)
ミステリ作家が食事会の用意がされた密室状態の部屋の中で死んでいた。 死体を飾り立てたのは誰か? そして死んだ作家が構想中の作品が現場の状況と同じシチュエーションのものだったことが判明し…
ふむふむ、これまた面白い。
始まっていきなり、死体とド派手で奇っ怪な装飾が登場してきて「おおお」と盛り上がる。 さらに、作家が書きかけた作品の通りに殺人が起きるという趣向や 密室に幽霊に顔と指紋のつぶされた死体などなど本格ミステリネタがたっぷりとつまっていて、 そのわりに作品自体は短めにまとまっているというのは前作『第四の扉』と変わりない。 語り口の違いなのかアルテの上達か翻訳者の慣れかはわからないが、 前作よりもさらにとっつきやすくなっており、リーダビリティは非常に高い。 シリーズとはいっても前作とのつながりは別にないので(共通点はツイスト博士が出るだけ)、 アルテ初体験するなら『死が招く』の方をおすすめ。  二階堂氏の絶賛ははっきり言って大袈裟だと思うが(それともカー好きはみんな大絶賛なの?)、 古典風味を味わうにはうってつけの良品かと。

『両性具有迷宮』 西澤保彦 (双葉社)
宇宙人の不手際により両性具有とあいなった百合小説家の森奈津子。 奈津子とともに両性具有にされてしまった女性たちが狙われる連続通り魔殺人が発生し…。
女性に突然生えた擬似ペニスだとか宇宙人といったSF設定を下敷きに、 連続殺人のwhy done it?のミステリ形式をとりつつ、キャラクタの言動やなんやで笑わせながらも、 お話の大半をしめるのは森奈津子が繰り広げる愛と性欲の官能小説的シーン。 言うならばエロティックSFミステリーといったところだ。  しかし、ミステリとしては真相は肩透かし気味で、SFというにはナンセンスにすぎるような気もするし、 読後に印象に残っているのは「官能シーンたくさん。えええエロいですよ、奈津子さん」ということばかりで、 ミステリ側から評価するのはちと難しい。実に困ったちゃんな作品である。  とはいうものの、作品の主眼は森奈津子イズムをいかに描くかというところにあると思われるので、 そこを割りきったうえで読めば意外と楽しめるのかも。わたしはかなり面白がれました。
官能シーンでのジェンダー論とかレズビアン志向、事件に対してのディスカッションが行われるところ、 終盤で事件を一気に展開させ収束させる手並みになどに西澤作品らしさを垣間見ることはできる。


03/07/13
BLさんが作った「メフィスト者に100の質問」というのに回答してみました。 いやはや答え始めてから気づいたんですが、100問ってきついですね。 1問1分だとしても100分。もちろん考えながら答えてるとそれ以上にかかるわけで、結局2時間近くかかってしまいました。 こりゃあ、問題を作る方も回答する方も大変ですねえ。
わたしの回答はこちら

『七人の迷える騎士』 関田涙 (講談社ノベルス)
風夏学園の文化祭。ヴィッキーはミスコンと演劇部の助っ人にはりきっていた。 そして、語り手の誠の目の前で殺人がおき、部室で、屋上で、次々と密室殺人が。学園は地獄と化す。
警察サイドがヴィッキーと誠に協力依頼をするあたり『密閉教室』を意識してるんだろうか? 前作もそうなのだけど、どうも関田氏はデビューするのが10年遅いという印象が拭えない。 中学生を語り手にしているくせに、女の子を”若い肌”というおっさんじみた描写をするところとか、 使われているネタが作品内で昇華されきれなくて妙に痛々しいところ、 そして(時系列的に)最後の殺人で失敗する可能性を犯人が考慮しなかったのか?という点など、 見逃すにはちょっとなあという箇所も多い。 (特に演劇部の部室でのあれはちとご都合主義じゃなかろうか)
まあ、読んでいる間は本の厚さが全然気にならなかったし、 ミステリ劇としての舞台の整え方や展開のさせ方はそれなりに面白いんじゃないかなあ、とは思う。 女の子がいっぱい出てくるので、わたしがそれに幻惑されてるだけという可能性もなくもないが…。 春佳ちゃんかーいー。それと、誠が女装させられるというネタはわたしのツボをつきました。い、イラストをよこせー(笑)。 …っていうか、こういうキャラ萌え路線がいまいち失敗しているような作品は イラストでフォローするべきだと思うのだがどうか。担当編集の方は一考してもらいたい。
あと、とあるトリックに全然気づけなかったのが非常に悔しかった。 使い古されたネタなのにー。うわーん。…これだから推理力のない奴は。

『花に舞 麿の酩酊事件簿』 高田祟史 (講談社ノベルス)
出会った女性たちが心に抱えている悩みを主人公の文麿が解きほぐしていく。 マンガ用の原作として書かれたものを原作者の高田氏自らノベライズしたという連作短編集。
元がマンガ原作のためか、キャラクタ重視・会話重視の軽妙な作品になっており、 QEDシリーズの真面目さ単調さがあまり肌に合わないというわたしも、これは楽しく読めた。 主人公のキャラクタも愉快だし、各話の展開がパターン化しているのも良い。 もし次回作以降であのキャラと文麿の関係性が進展するのなら、ラブコメな要素もありだと言っていいかもしれない。 高田氏がこういうの書くとはちょっと意外で、その意味でも面白かった。 マンガ版も気になるなあ。

『第三の銃弾 (完全版)』 カーター・ディクスン (ハヤカワ文庫)
目撃者となった刑事の目前で銃声が2発。密室状況の現場には被害者と容疑者の2人のみ。 容疑者は銃を所持していて発砲されていたにも関わらず、被害者は容疑者の持っていた銃で殺されたわけではなく、 しかも容疑者は犯行を否定する。
冒頭からいきなり事件が始まってくれるので退屈する暇まったくなし。 殺人事件はおもいきり不可解で魅力的だし、容疑者候補たちと探偵役のマーキス大佐とのやりとりも読んでて楽しい。 また、古典ものにしてはお話に無駄がなくシンプルにまとまっているのが良い。 オカルトな道具立てがないので、あまりカーっぽくない作品なのかな?とは思うけど、 結構面白かったんで問題なし。 でも、次に読むのはいかにもカーな作品を選ぶことにしようっと。

『ルドルフとイッパイアッテナ』 斉藤洋 (講談社)
飼い猫だったルドルフは誤って長距離トラックに乗ってしまい、故郷から遠く離れた見知らぬ街で野良猫生活をすることになってしまう。 その街で出会ったイッパイアッテナという野良猫にいろいろなことを学びながら、ルドルフは成長していく。
イッパイアッテナのいいアニキぶりがかっこよくて、文字の読み書きができるという設定が面白くて、 そして他の猫への厳しい態度の裏にある悲しい過去にしみじみとする。 そんなイッパイアッテナに学びながらきちんと前を向いて成長していくルドルフの姿が、真っ直ぐで気持ち良かった。 キャラクタは猫だけど、物語としては少年成長ものといっていいだろう。 ルドルフが帰る手段を見つけたときの3匹の喜びようにはこちらもなんだか嬉しくなったし、 友を思うイッパイアッテナの姿にちょっとじーんときて、ルドルフの決断にハラハラ。 猫たちの友情に素直に感動してしまいました。 児童文学を読んで感動している大人な自分ってのが少し照れくさいというのはあるけども、 大人だろうとなんだろうと、いいお話はいい。読めてよかった。 紹介してくれた方に感謝かんしゃ。

ところで、わたくし「メフィスト者に100の質問」の メフィ作家の作品全体のベスト3という問いに清涼院流水の『ジョーカー』を入れてしまいまして、 皆様方にわたくしのミステリ観を疑われるやもしれぬなどと恐れおののきながら、でも傑作だと本気で思ってるわけでございまして、 ええいどうせわたしなぞミステリ者の中でも異端のキャラ萌え者として認識されているのであろう、 それは確かにわたくしが本読みとして色物キャラであることは今さら否定のしようもありませぬが、 わたくしにも体裁というものが…ああっおやめくださいまし旦那様っ それをそのままアップロードされてはっ! リッパー様が流水オタだなんて流言蜚語がミステリ系サイトの津々浦々にまで流布してしまい オフ会でコズミックジョーカーカーニバルノベルス5冊セットなんて押しつけられあまりの重さによろめいた瞬間 ホームから突き落とされ電車にひかれてしまい事故として処理され完全犯罪成立という事態が、 ええい今さら何を恐れるかジョーカーを傑作だと言い龍宮萌えだということはすでに披露しているくせに一体何をためらうことがある貴様は流水大説を胸に抱き死ね。 と、わたくしの中の人たちが心の円卓会議を続けている中、決死の覚悟で回答をアップしたのでございますが、 こたび他人様の回答を見ればなんとまあ…。永世国の若様と佐藤友哉好きの国の将軍様までもが『ジョーカー』をあげなすっておいでになり、 開いた口がふさがら…もとい、大いに共感することしきりで「ぼくはひとりじゃなかったんだ…」と、 ぼくにはかえれるところがあったんだ、ララア。以下中略。

『ジョーカー』をベスト作品に推すような物好きがわたしの他にもいることを知って、 ちょっぴり嬉しかったのです。


03/07/26
若竹七海脚本のお芝居「死が一番の贈り物」を観てきました。 その後は7月オフ会へとなだれこみまして、今月も楽しいひとときを過ごさせていただきました。 お会いした皆様ありがとうございます。いつもお世話になってます。 そして、オフ会でいただいたパワーを読書やサイトの更新に……生かせればいいんですけどね。

観劇の感想とオフ会のダイジェストレポートはこちらに書いてあります。 みすらぼのmatsuoさんにお会いできたのがちょっと嬉しかったり、matsuoさんもがくしさんもわたしより年少であるという事実に内心驚愕したりとか、 もう一人初顔のカメイさんとあまりお話しできなかったのがちょっと心残りだったとか、 未成年さんと薬屋について語りたいです、というところを付け加えておきます。

『過ぎ行く風はみどり色』 倉知淳 (創元推理文庫)
主人公・成一が10年ぶりに実家に帰ってきたその日、誰も出入りできなかったはずの部屋で殺人が起きる。 そして、怪しげな降霊会の最中にふたたび不可解な殺人が…
倉知淳はキャラクタ作りがうまいなあ。探偵役の猫丸先輩は相変わらず(今作も)ユーモラスで飄々としていて愉快だし、 その猫丸にあらゆる陰気な表現を駆使して揶揄される鬱々とした主人公もなんだかおかしいし、 もう1人の語り手をつとめるヒロインの女性もなかなかに魅力的。 ヒロインの恋心?を描写するパートは読んでて気恥ずかしかったりもするんだけど、 この部分もミステリ部分の構築に役立っているし、なおかつ爽やかに物語をしめくくってくれる効果を上げていて、うまいなあと読後に感心させられた。 事件のトリック部分だけ抽出してみるとわりとバカミスすれすれな気もするものの、状況の不可解さの魅力のおかげで軽薄な印象を受けない。 メイントリックは盲点だった。うはー、まだこういう手があったんだなあ。 本格ミステリとしても、またお話としてもなかなかに読ませる佳作だと思う。

『田舎の事件』 倉阪鬼一郎 (幻冬舎文庫)
舎を舞台に、とち狂った人たちが巻き起こす凄惨な事件の数々を描いた短編集。
奇人変人大集合のギャグミステリ…というか、田舎という共同体にまぎれこんだ異分子の悲哀がひたすらに暴走していくさまがブラックでシニカルな笑いを誘う。 爆笑とまではいかないけど所々笑えるところはあったし、期待しすぎなければさくっと読めるので悪い作品ではない。  「亀旗山無敵」オチは途中で見え見えなのだが、締め方が爽やかでよい。この短編集の中でただ1つのいい話?  「頭の中の鐘」あー、これは切ない。しみじみとしてたら、最後のオチでずっこけた。  「無上庵崩壊」これは普通にコメディにしてくれた方がいいような気が。そば職人のキャラクタはわりとお気に入り。  「梅の小枝が」ふははは、発狂だ、発狂。あなたもわたしもミステリサイトでこんにちわ。

あちらこちらでネット書評の均一化とかコミュニティ主導型に対する論議や、 はたまた新しくミステリ系サイトへ仲間入りした若い方々がサイトの方向性を模索している姿などを目にしていると、 当サイトの適当ぶりをどうにかしないといけないような気になりつつも、 でも気張っても長続きしないしねいつも通りマイペースを貫くのがいいというかやってる本人が楽しければそれでいいんじゃないかな、 と結局は日和見ちゃんな結論に落ちついてしまうリッパーさんなのでした。


03/07/27
『冥王の花嫁』 奥田哲也 (講談社文庫)
首を斬られ、裂いた腹の中に頭を埋め込んだ女性の死体が発見させる。 その姿はまるで、頭が無く腹に人間の顔をした神話上の生き物・ハーピーのごとく。 そして同じような姿をした女性の死体が次々に発見され…
猟奇的でグロテスクな死体の謎。一体どうして犯人はそんなことをしたのだろうか?  幕間に挟まれる被害者の女性たちの描写らしきパートはいったいどういう意味が?  いやはや、さすがにあの『赤い柩』や『エンド・クレジット』の奥田哲也。 不可解な謎に合理的な解決、それもちょっとやそっとじゃ思いつかない見事な奇想ぶりを披露してくれた。 「う、う、嘘ーーーー!」と思わず声を荒げてしまうと同時に「うわーん、バカー」と笑いだしたくなる (もしくは「ありえねー」と怒るか)ような真相。 ネタの根幹そのものはありがちっちゃありがちなのだけど、それをこういう形にして本格ミステリに仕立てているあたりの手腕はさすがと言うほかない。 終盤の探偵役の論理の飛躍ぶりなんか最高。まさしく奥田哲也って感じである。 ホラー小説じみた(いや、どっちかというと奥田哲也はそっちがメインなのか)描写や展開のさせ方が実にいい味を出している。 クセがあって読みにくいという人もいるかもしれないけど、この文体のおかげで酩酊感がますんじゃかなろうか。 ユーモアも結構悪趣味。変なものや猟奇ミステリが好きな人は読むぞなもしー。 間違って売れてしまえば絶版になっている本の復刊もありうるかも??

『仔羊の巣』 坂木司 (東京創元社)
ひきこもりで人間嫌いで若干情緒不安定の気がある鳥井。鳥井のすぐ側で彼を見守り続けてきた坂木。 そんな2人をとりまく人達の、日常やちょっとした事件を描いた連作短編集の第2作目。
前作「青空の卵」よりも坂木や鳥井が成長してるのかというと、どうも亀の歩みのごときで 相変わらず2人でべたべたしてるようでもあり、でも少しずつ枠が広がっているような。 謎を解決するときに皆を集める場所が、鳥井の部屋から栄三郎じいさんのうちになったというのが、 雛鳥が卵の殻を破って巣へと出てきたというシリーズ展開のイメージとうまくリンクしているようには感じられる。 恥ずかしさと痛々しさと説教くささと優しさをまったりと味わいながら、 増えていく登場人物や成長していく(はずの)坂木と鳥井をのんびり見守っていきますかのう。

『しずるさんと偏屈な死者たち』 上遠野浩平 (富士見ミステリー文庫)
人里離れた病院に入院している薄幸の美少女しずるさん。しずるさんを見舞いに足しげく病院に通う物語の語り手・よーちゃん。 世間を騒がせる奇怪な事件を病床のしずるさんがたちまち解決してしまう、安楽椅子探偵ミステリな連作短編集。
ふはは、”よーちゃん萌え小説”というか”百合萌え小説”というか。 上遠野浩平が美少女萌えの文法をそのまま用いた小説を書いたというところが実は最大のサプライズなのかもしれない。 イラストの絵柄もあいまって、よーちゃんとしずるさんはとにかく美少女っぽさ大爆発で、 特によーちゃんは昨今のライトノベル作品の中でもずば抜けた萌えキャラであるようなないような。 よーちゃんとしずるさんの絡みはこれまた萌えもえで、あの終盤でのアレはちょっと反則気味なくらいキュートである。 イラストがあればなおよかった。とまあ萌え要素はこれ以上ないくらい良いが肝心のミステリ部分がいまいち面白くない。 猟奇的な死体を登場させる謎の提示の部分には目を惹かれるものの、その解答があまりにもしょぼいのが残念。 まあ、一応合理的な解決はしてるんだが、…見せ方の問題なのかなあ。

『雨のちカゼ なばかり少年探偵団』 雑破業 (富士見ミステリー文庫)
宝の地図?を手に入れた”なばかり少年探偵団”がお宝探して町内をかけまわる「たからもの」、 楽しいドライブのはずが激走カーチェイスに…「あおいさんパニック」、女の子の微妙な心を描く「雨のちカゼ」 の3本がはいった連作短編集。
これは前作からそうなのだけど、主人公たちが中学生にしては幼い。小学生にしたとしても、たぶん何の違和感もないんじゃないかろうか。 お話も少年探偵団の宝探し冒険やヒロインの初恋?といったエピソードなわけで、 富士見文庫の主読者層よりももう少し下の世代(小学生)の方が受け入れやすそう。 イラストも制服着てなければ小学生にしか見えないような絵柄だし(笑) なんだか惜しいな。 お約束通りな展開にちと凡庸な印象はあるものの、ほのぼのできて安心して読める作品ではある。 わたしはこういうの嫌いじゃない。

『聖霊狩り 死の影の谷』 瀬川貴次 (集英社コバルト文庫)
前作「贖罪の山羊」でいったん完結した聖霊狩りシリーズの後日譚を含む短編集。 安内市の彼女たちのお話、柊一が主役のお話、ヤミブンの3人のお話、の3本収録。
聖霊狩りシリーズの主役は柊一であり早紀子なのだけど、闇に歌えばシリーズから瀬川作品を読んでいる身としては やっぱりどうしても誠ちゃんとその仲間の方に目がいってしまうわけで、 彼らを主役にした短編が読めるのはもう嬉しくてうれしくて。 闇歌ではついぞ明かされることのなかった克也の過去話であるのも興味深いし、 誠ちゃんが克也の腕のな(中略)あたりはにやにやしながら読んでいた。 いやあ、その場面を吉野ちゃんに見せたかった!  それにしても、聖霊狩りでちょっぴり大人になった誠志郎を見てると、闇歌の頃の(特に最初の頃の)ちょっとひねくれた誠志郎が思い出されて、わたくし萌えまくりですじゃ。 誠ちゃん最高ー。かーわいくてしょうがねえや。
安内編の方は『闇がざわめく』と同じネタかよーとつっこみたくなったけど、ああいう締め方をするためだとわかり納得。 柊一編はお話としては別にどうということもないが、克也との夢のタッグ結成話というだけでいいのかしらん。女子人気高そうな2人だしね。

『ルドルフ ともだち ひとりだち』 斉藤洋 (講談社)
東京へ来てから1年、兄貴分のイッパイアッテナや友だちのブッチーとともに、ルドルフは気楽なノラ猫生活を送っていた。 新しい友だち。旅立ちの決意。思いがけない再会と別れ。黒猫ルドルフのシリーズ第2作。
感動して泣いちゃった。あーもう、だってだって、しょうがないじゃないか。 ニャーなんて言われたら。その一声につまっているであろう想いのたけを想像してしまったら、 どうしようもなく目頭が熱くなって視界が揺れて、涙がぽろぽろこぼれてしまう。 ああいう描き方じゃなかったら涙をこらえられたかもしれないけど、ニャーだなんて、ニャーだなんて、もう思い出したたけで目がうるみそう。 イッパイアッテナがすごくかわいい。ルドルフと遊んでるとこなんか最高。 ブッチーもおいしいキャラだし、新しい友だちもなかなかいい奴だ。 そして、ルドルフの決断とその結末には、寂しさを感じるわたしと、なぜかホッとしているわたしの両方がいた。 この作品を読む子供たちはどう思うのかなあ。

『ルドルフと いくねこ くるねこ』 斉藤洋 (講談社)
テリーという新しい仲間。自分を見つめ直すブッチー。ルドルフも少しずつ大人になっていく。 くろねこルドルフとゆかいな仲間たちのシリーズ3作目。
あの娘のあの台詞にはわたしも打ちのめされた。 街中でもし誰かとすれ違ったとき、わたしはその人に気づくことができるんだろうか? その人に気づいてもらえるんだろうか? こたえは出ないまま、わたしも心の奥にそれを仕舞う。 イッパイアッテナが完全に脇役になってしまい、そのぶんブッチーにスポットがあたる。 ブッチーにもいろいろあるんだなあと思いながら。 いいことばかりじゃないけれど、わたしは元気です、って「魔女の宅急便」の台詞ですな、そういうお話でした。 これでルドルフ3冊読了。いやー、読めてよかった。続編がいつか出るのなら、必ず読もう。 姪っ子が字を読めるようになる頃に弟夫妻にこの本をプレゼントしたい。


「夏のやかん 2003/08/02〜」につづく
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