夏のやかん 2003/08/02〜
前回「リッパーさんと面妖な死者たち 2003/07」からのつづき
03/08/02
トップページのデザインをちょっとばかり模様がえして、リンクページを作ってみました。

『似非エルサレム記』 浅暮三文 (集英社)
聖地エルサレムの土が永き眠りから突然目覚めた。彼を呼ぶ声に導かれ、土は移動を開始する。 聖地の逃走という一大事に人間社会は大騒動。土は黒犬ブラッキーを乗せて歩み始める。
読む前はもっとユーモラスな作品だと思っていた。 確かに移動するエルサレムを取り巻く人間たち国際社会の騒動ぶりは茶目っ気たっぷりに、 けれども国際情勢をきちんとふまえた上でわりとリアルに描かれている。 お話の最初の頃は、自意識をもった土というSF的な発想や人間側の思惑と土の意識とのすれ違いなどを面白がっていたのだけど、 いつの間にかエルサレムやブラッキーの方にすっかり感情移入してしまっていた。 エルサレムの旅が成し遂げられますように、ブラッキーが無事に宝物を口にできますように…。 自由と救いを求めてさすらう土のお話は再生と解放の物語だった。良いもの読んだ。


03/08/03
昨日書いた『分岐点』の感想を手直しました。

『分岐点』 古処誠二 (双葉社)
読んでいる間、沖縄戦のことばかり頭をよぎってしまい、どうしようもなく遣る瀬無い気持ちにしかならなかった。 作品そのものについてわたしが語る言葉は、何もない。 戦争の記憶の風化に関してわたしなりに思うところが多少あって、それがこの『分岐点』という作品を素直に物語として受け入れることが出来ない理由なのだと思う。

『CANDY』 鯨統一郎 (祥伝社文庫)
”あなた”は突然見知らぬ世界に迷いこんでしまった。 変な世界で反ブッダと呼ばれ命を狙われることになったあなたは元の世界に帰るため?あるいは世界を救うために3つのキャンディを探さなければならないらしい。
懐かしのゲームブックのように読み手=主人公として”あなたは……した。”と記述するスタイルのため、 終盤あたりで選択肢があって物語が分岐するのかなと思っていたら、そんな仕掛けは何もなかった。 一体どういう意図でそんな記述形式をとったのかがまず謎。何もないなら普通に一人称でいいじゃないか。 それとも何か、鯨統一郎はミステリ作家としてデビュー前に別名義でゲームブックを書いていたとかそういうことですか? もうわけわからん。 一応SFとは銘打たれているものの、脱力するばかりのナンセンス小説で怒っていいやら笑っていいやら。 パロディ要素満載で(パロディしかないとも言う)そこがツボにはまれば面白いんだろうけど、わたしにとってはちっとも面白くない。あうう…。 おそらく作者はうすた京介の漫画を小説にしたような不条理ナンセンスギャグを書きたかったのだろうが、それは見事に大失敗したといえよう。 いくら400円文庫書き下ろしだとしても、ちょっと作家の姿勢として誠意が無さすぎるんじゃないの? まほろ市冬よりももっとひどい作品があるとは、祥伝社400円文庫も奥が深い。

『涼宮ハルヒの憂鬱』 谷川流 (角川スニーカー文庫)
高校に入学した主人公・キョンは美少女だけど変人との噂の涼宮ハルヒと出会う。 退屈な日常に飽き飽きし、宇宙人や未来人や超能力者との邂逅を求め、ハルヒはキョンを巻きこんで部活を作ろうと計画する。
傍若無人な美少女ヒロイン、眼鏡の読書好き少女、萌え担当のかわいい先輩、謎の転校生(男)とキャラクタを配し、 彼女たちと主人公との交流を通して日常を描きながら、やがて非日常のSF話に展開させていくという手堅い作風で、 そういったギャルゲーっぽい趣向が好きな人にかなり好まれそう。 各キャラクタそれぞれ萌えポイントがあるのだが、特にみくるちゃんの弄ばれぶりが萌え楽しくて最高れす。 それと、メタフィクションな世界構築を感じさせるハルヒの発言が終盤にじわじわきいてくるのがたまりませんな。 扱われているSFネタが、3年ほど前に出た『sense off』というエロゲのとあるシナリオを思い出させてくれて、 そのへんも面白い。

『天国に涙はいらない 8 姉振り会うも他生の縁』 佐藤ケイ (電撃文庫)
シリーズ8作目。悪霊退治の依頼を受けた賀茂は1人の少女と出会う。なんだか初対面な感じのしない賀茂。 少女の方も知り合いの弟と賀茂の雰囲気が似ていることからついついお姉さんぶった態度をとってしまう。 新たに”お姉さん”萌えに目覚めた天使アブデルが1人大騒ぎする中、悪霊と相対した賀茂は…
天涙シリーズは毎回1つの萌え属性にスポットをあてるのですが、今回は”お姉さん”なのであります。 しかも今回ヒロインの紗智さんはなんと10歳の女の子。10歳なのにお姉さん。 ああ、なんと甘美な響きなのでありましょうか。おもいきり年下のくせに年長者をいい子扱いしては優しく頭をなでて微笑んでしまわれるのです。 間違った行動言動は優しく諌め、何をされても言われてもポジティブシンキング。 年上の余裕で相手の心をつつみこみ甘えさせてくれる素敵なすてきなお姉さん。しかも10歳。 これはもう神(びしょうじょ)の下僕アブデルならずとも萌えるしかあるまいて。 アブデルが「お姉さんは生まれたときからお姉さんなのだ」と相変わらずキチガイじみた論理を振りかざし我々を大笑いさせてくれ、 賀茂は幼い頃の苦い思い出と対峙しつつ久しぶりに妖怪ものらしい燃えストーリーを展開させており、 最後のシーンにいたってはちょっとばかり感動でございます。 レギュラーの女の子たちがちょっと影が薄いのだけど、そのぶん賀茂と紗智お姉さんにスポットが当たっており、 お話としてもなかなか良いものになっております。安定して楽しめる良いシリーズであります。

『撲殺天使ドクロちゃん』 おかゆまさき (電撃文庫)
未来からやってきた天使のドクロちゃんが桜くん家に居候を始めた。 ロリロリでナイスバディで無邪気で?かわゆいドクロちゃんだけど、何かあるとすぐに特製バットで人間を撲殺しちゃうのです。 けど、ご心配なく。ドクロちゃんが「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪」と呪文を唱えればあっという間に撲殺なしよ。さすが天使です。 こうして桜君とドクロちゃんの愛と涙の血みどろのハートウォーミングストーリーが展開されちゃうのでした。あらすじ一部嘘。
美少女萌え要素をこれでもかこれでもかこれでもかーとつめこみまくって、 ひたすら過剰に過激に破天荒に、萌えと笑いと撲殺の大騒動がどこまでも暴走していくさまは爽快きわまりなくて、 その暴走ぶりに電波小説とか感想はぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜だけでいいんじゃないかという妙ちくりんなブームをライトノベル読みの間に蔓延させている 今年最大の(おそらく)話題作との風評の通り、実に凄まじい逸品でありました。 特に第1話のテンションの高さとノリだけで突っ走る投げっぱなし具合は素晴らし過ぎ。 あっという間にドクロちゃんの世界に飲みこまれ、「ああっボクもぴぴるぴされたいですっ!」とあらぬ言葉を口ずさんでしまいそうになります。 ほら、君も一瞬そう思ったでしょ? 部屋の扉をノックしないで開けたら中で女の子が着替え中でうわーなんて思ったら次の瞬間に撲殺されちゃうんですよ。 そして天国に逝きかけながらぴぴるぴ〜でハイ元通り。 そんな無茶なとかアホかとか言うなかれ。これはあれですよ、21世紀型ライトノベルの現時点での最終進化形なのです。 90年代後半〜から去年くらいまでの「ぼくの世界」的小説ブーム(そういうのをセカイ系なんて言うんですか?よくわからないんだけど)の果てに、 ライトノベル小説はおかゆまさきを撲殺天使を生み出したのです。 緻密な世界設定もまともなキャラクタも日常性も物語性もいらない、ひたすらに萌えと笑いとパロディのパワーだけでどこまでも駆け抜けて行く。 その疾走する姿はまるで、そう、ソウル・オリンピック100m走のベン・ジョンソンのように!! ドーピングしてるのかよ。
ここまでおバカな作品もそうない。普段ライトノベルを読まない人でも一読の価値はあるんじゃないかと思う。 きっとカルチャーショックを受けるに違いない。ああ、面白かった。


03/08/09
今週はミステリーランド3冊を読みました。3冊合計6000円…、うーん、やっぱり値がはるなあ。 内容に関しては、小野不由美さんの本はジュブナイル本格ミステリとして申し分ない出来だけど、 殊能氏・島田氏の両作品はミステリファンあるいは少年少女が読んで面白いかどうかいまいち微妙なところです。 特に、1年以上も新作を待ち焦がれていた殊能ファンにとっては納得いく代物ではないでしょうね。 殊能ファンがまっとうすぎる児童文学を読みたがっているとも思えないしなあ。 まあ、わたしは児童文学も楽しんで読める性質なのでこれはこれでアリかと。上手いしね。
わたくしちなみに、今回の『透明人間の納屋』が”はじめての島田荘司作品なのー、というネタを用意していたのですが、 作品が中途半端なのでいまいち不発に終わった感じです。うう、無念。 乱歩のジュブナイル向けっぽいの期待してたのに、扱われているネタがわりに大人向けなんだもん。

『子どもの王様』 殊能将之 (講談社)
団地住まいのショウタは小学生。正義のヒーロー・バルジファルが大好きで、テレビを見たり 学校で友達とじゃれあったりしながら日々を過ごしていた。 そんなある日、ショウタの友達トモヤが語った”子どもの王様”そのもののような大人が団地のすぐ近くに本当に現れた。 ミステリ作家による児童向け叢書”ミステリーランド”第1回配本。
子どもの世界というのは時代によって変化しているように思えても、 実際は小学生くらいの頃ならば精神的にはそんなに昔と変わっていないような、そんな気がする。 テレビが好きで、友達がいて、ガキ大将的な存在もいて、たいして意味もなさそうなことがこの上なく楽しかったり。 それは作者の殊能氏の子ども時代も、20年前に子どもだったわたしの頃も、現代っ子たちも案外共通しているものなんじゃないだろうか。 その意味では作品で描かれるショウタの日常はすごく普通ですごくリアルである。 殊能将之作品といえばこれまでもミステリー小説の枠の中で取り扱うガジェットによってがらっと装いをかえてきたのだけれど、 児童文学にもあっさりと違和感なく対応したようで、殊能氏の懐の深さには恐れ入るほかない。 穏やかな日常を破壊・侵蝕してくる恐怖に対し、勇気をふりしぼって立ち向かっていくショウタの姿はなかなかに読ませるし、 そこに特撮ヒーローの要素をとりこんでいったのも良い。ただ、ラストがちょっとジュブナイル作品にしては残酷だなあ。
それと、ミステリ作品ではないどころか、本当に普通の児童文学っぽい作品なので、ミステリファンおよび殊能ファンはそのことを理解した上でお買い求めを。

『透明人間の納屋』 島田荘司 (講談社)
家の隣で印刷屋をしている真鍋さんをぼくは慕っていた。一緒に遊びいろんなことを教えてくれた真鍋さん。 やがて、真鍋さんの知り合いの真由美さんがホテルの一室から突然消失するという事件がおきる。 その事件は真鍋さんがいつか話してくれた透明人間になれる薬と何か関係があるのだろうか。 ミステリ作家による児童向け叢書”ミステリーランド”第1回配本。
タイトルからしてもっと稚気あふれる奇想とかジュブナイル作品っぽさを期待していたので、なんだか肩透かしをくってしまった気分。 主人公が少年の頃を回想しているような書かれ方をしていて、ところどころ難解な表現が見受けられたり、 ある程度の社会知識が物語理解のための前提となっていることなどもあって、ジュブナイル作品っぽさが薄い。 もちろん、”かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド”なのだから前者により比重がかかってしまう作品があってもいいし、 社会派なネタを物語に組みこんでいく手腕とかドラマ部分など読ませる部分も多々あって、読後はやや感傷的な気分になれたりと、決して悪い作品ではない。 ただ、子どもが読んで面白いかというと微妙だなあ。ミステリ部分の出来はいまひとつ。

『くらのかみ』 小野不由美 (講談社)
資産家の旧家に集まった親戚一同。子どもたちは大人に内緒で真っ暗な座敷蔵で四人ゲームを行う。 明かりをつけたら4人は5人になっていた。その頃、大人たちの食事に毒がいれられる事件が起こっていて。 ミステリ作家による児童向け叢書”ミステリーランド”の1冊。
第一回配本の3冊の中ではもっとも”ジュブナイル・ミステリ”の冠にふさわしい作風で、 なお且つ本格ミステリとしてきっちり成立していて感心した。 迫り来る危険に鈍感な親たちを守るために子どもたちが事件を調査・推理していくという筋立てもいいし、 発生する怪事件の数々はきちんと論理立てて解明される。 子どもたちの中に紛れ込んでしまったお蔵さまという特殊な設定が事件に少なからぬ影響を与えており そこに気づくことで事件の真犯人とお蔵様が誰か?という謎が一気に解けるところなどはお見事。

『邪馬台国はどこですか?』 鯨統一郎 (創元推理文庫)
とあるバーにて常連客3人とマスターが、歴史の常識とされていたものを引っくり返すトンデモ仮説をめぐり 歴史トークバトルを繰り広げる連作短編形式の歴史ミステリー。表題作の「邪馬台国はどこですか」を含む6編収録。
これは面白い。無駄なものが何一つなく、純粋に、奇天烈な発想と意図的な史料解釈の面白さのみで勝負するすんばらしい歴史読み物ですよ! わたしのように歴史薀蓄をきかされるのが苦手な人でも、この作品で示される仮説の突飛さには思わず目を剥くだろうし、 まるでそこに一片の真実が存在しているかのごとく錯覚してしまいそうになる説得力も素晴らしい。 信じる信じないはともかくとして、意外な発想と軽妙な会話がとても楽しめた。 鯨統一郎をちょっとだけ見直しましたよ。
神をもおそれぬ「奇跡はどのようになされたのですか?」が一番わたし好み。 これはきっと真実に違いありません! 奇跡や予言はそれを成そうとする者によって実現するものなのですっ!  あと、「維新が起きたのはなぜですか?」はもしかして『タイムスリップ明治維新』につながっていたりするんですか。


03/08/24
先週は夏祭りのためお休みしました。 その間、東京に遊びにきた「M←d」の元さんとオフ会したりしてました。 その模様は例によってはてなダイアリーの方に書いてあります→ 8/158/16

『蝉の羽 薬屋探偵妖綺談』 高里椎奈 (講談社ノベルス)
ダムの底に沈むはずだった村で、住民が突然昏倒し後に失踪する事件が相次ぐ。 依頼によりその村へ向かう薬屋一行。だが、村へ通じる唯一のトンネルでは不可思議な現象が起こっていた。妖怪探偵シリーズの第10作目。
薬屋シリーズでは久しぶりにミステリライクな作品で、ほとんど何も考えずに読んでいたためか伏線にはまったく気づかずに、 真相には普通に驚いてしまった。むうう、ちょっと悔しい。 部外者が村に入れないという超常現象や、植物によって住民が死んでいるのではないかというような 妖怪部分だと思われる箇所と、ミステリ的にロジックで解明できる箇所との境界線がひどく曖昧で、 ミステリとしてはあまりフェアな書かれ方をしていないのが惜しい。もうちょっとどうにかならんのかな。
薬屋シリーズファンとしても今作の味わいや物語は正直言っていまいちかも。 妖怪トリオとゆうき君以外のキャラクタが痛々しくてあまり好きになれない。うーん、残念。 リベザルのど直球ぶりはかわいいんだけどねえ。

『タイムスリップ森鴎外』 鯨統一郎 (講談社ノベルス)
明治〜大正時代の文豪・森鴎外が何と現代にタイプスリップ。 現代に戸惑いながらもうまく順応していく本名・森林太郎(通称モリリン)は過去に戻る方法を模索しつつ 文学史におけるある1つの謎を探り当ててしまう。
文学史にまつわるネタは『邪馬台国はどこですか?』の一短編にもできるようなトンデモ奇説で、 それをユーモアSF仕立ての長編にしたという印象。 相変わらずけったいな発想の作品であることには変わりないけれど、軽いノリがなかなか楽しくて、 ラップコンテストにおける含蓄のある歌詞にちょっと感動したこともあって、意外に面白かった。

『はなれわざ』 クリスチアナ・ブランド (ハヤカワ文庫)
ヨーロッパのツアー旅行中に殺人事件がおきる。 当てにならない現地警察の捜査に代わり、旅行者の1人に加わっていた警部が事件の真相を探る。 容疑者はコックリル警部自身を含めた限られたメンバーの中に…
クセのある登場人物たちやメロドラマじみた錯綜した人間関係がどうにも底意地が悪くて、 おまけに探偵役のコックリル警部も含め誰一人信用できそうにない騙しあいばかし合いな雰囲気がぷんぷん漂っているのが実にいい。 主要登場人物全員をとりあえず1回は犯人候補として仕立てていく類の推理構築がとてもわたし好みで、 中盤から終盤にかけてぐるんぐるんひっくり返らせていく展開が楽しかった。 真相は見抜けちゃいました。そっか、このトリックかー。さすが海外古典ミステリ。

『マリア様がみてる』 今野緒雪 (集英社コバルト文庫)
お嬢様な乙女たちが集う私立リリアン学園では上級生が下級生の世話をしたりする「姉妹」(スール)というシステムがあった。 1年生でまだ姉のいない祐巳は突然憧れの「紅薔薇のつぼみ」祥子さまから姉妹宣言をされてしまい…
祥子さまのかわいさと祐巳さんの健気さと蔦子さんの煽り方と志摩子さんのほんわかと白薔薇さまのああそんなことまでっ なところに笑ったり恥ずかしがったり萌えてみたりといろいろ忙しい。 控え目な百合要素があまりそういったものに免疫のないわたし達の心をとらえてしまうとこはいくらかあるでしょうな。 お話としては慕う者と慕われる者の立場が逆転した状態での”ガール・ミーツ・ガール”な学園ラブコメな趣で、 女子校の百合小説と聞いて思い浮かべてしまう耽美なイメージよりもずっと受け入れられやすい作品になっているのが、 男性にもヒットしている要因なんでしょう。これは読みやすいし感情移入しやすい。主人公の祐巳の心情が丁寧に描写されてるから、 読んでるこちらも祥子さまにドキドキしてしまいそうになる。 はまってしまう人がいるのも頷ける気がするなあ。


03/08/31
「M←d」の企画 「mix deepest」で近日中に『マリア様がみてる』クロスレビューが公開される予定です。 わたしもレビュアーの中に名を連ねております、と宣伝をば。
あと、第2回の課題図書を選ばせていただくことになったので、石持浅海氏の『月の扉』を推薦してみました。 レビュー参加者以外にも読むことをおすすめしたい1冊です。本格ミステリ好きを自認するならば是非どうぞ。

『月の扉』 石持浅海 (光文社カッパノベルス)
国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港でハイジャック事件が発生した。 緊迫する状況の中、ジャックされた機内で乗客が死体となって発見される。 一体誰が!? なぜ? どのようにして?
これを傑作だと言う人もいるだろうし、微妙だと感じる人もいるだろうし、結末に納得いかない人もいるだろう。 この作品におけるどの部分をどう評価するかによって、その人の本格ミステリ観や小説観が見えてくるような、 自分以外の人の評価を聞いてみたいと切に思わせる、そんな作品だと感じました。

『完全犯罪に猫は何匹必要か?』 東川篤哉 (光文社カッパノベルス)
ビニールハウス内で死体が発見される。そのビニールハウスの出口に鎮座する大きな大きな招き猫。殺人犯人は猫だけが知っている?  鵜飼探偵事務所の3人組と砂川&志木の凸凹刑事コンビが大活躍するおなじみ「烏賊川市」シリーズ第3弾。
いやあ、笑えるなあ。主要キャラクタの5人がみんなどこかすっとぼけていて、行動や言動の数々がいちいち面白い。 クライマックスの緊迫しなければいけないはずの捕り物シーンですらコメディにしてしまうところが素敵。 お葬式でのドタバタも大笑いでした。朱美さんかっくいいなあ。惚れちゃいそう。
ユーモアミステリとしてだけでなく、トリックや巧妙にしこまれた伏線など本格ミステリ要素もそこそこのレベルにある。 過去2作に比べると本格としての切れ味はあまりないような気もするけど、 それは砂川警部と鵜飼探偵の対決が少ないぶんロジックのひねりが足りないせいなのかなーと。 でも、メイントリックはかなり力技で目のつけどころが面白いと思った。 わたしはこのシリーズ大好きですよ。

『工学部・水柿助教授の日常』 森博嗣 (幻冬舎ノベルス)
水柿君と妻の須摩子さんを中心に、大学や周囲の人たちの日常のちょっとしたことを描いた作品。
作者である森博嗣氏のプロフィールと水柿君のそれは似通っていて一見して自叙伝風ではあるけれども、作品内で「これは小説である」と連呼しており、 そのわりにはちと適当に書き散らかしすぎで、結局は小説ともエッセイ集ともとれる読み物ということで丸のみするしかないような。 ミステリ創作やら日常の出来事や人物についての冷めた見方ひねった考え方はいかにも森博嗣らしくて、 商業出版化された日記本まで買って読んでいるような森博嗣ファンならばわりあい楽しめそう。 まあ悪くはなかったけど、わたしはこういう作品はもういいや。森博嗣作品はフィクションだけでじゅーぶん。

『月の扉』に関しては、クロスレビュー企画の課題として選出したという個人的事情もあって、 他のレビュアーの皆さんに余計な先入観を与えないために、わたし個人の評価や感想は極力出さないことにしました。 10月になって気が向いたら改めてちゃんとした感想を書こうかなあと思ってはいます。 もし忘れてたら「『月の扉』の感想マダー?」と催促してやってください。
レビュー参加者に限らず、『月の扉』を読んだ方々がどういう評価をくだすのか、かなり楽しみにしてます


「あいにくの鮫で 2003/09」につづく
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