『七度狐』 大倉崇裕 (創元クライムクラブ)
落語の名人・春華亭古秋の跡目を決める一門会が杵槌村で行われることになった。
大雨によって陸の孤島と化す村。さらに豪雨の中で全裸にされた死体が発見され…
落語の知識がまったくないわたしでも問題なく楽しめました。
作品タイトルにもなっている「七度狐」という落語に関して、
実際の噺では”狐が旅人を化かすのは二度”なところを作品内で”七度化かす”噺にアレンジしていて、
その出来には落語をよく知らないわたしでも感心させられます。
実際に落語家の人がやってるのを聞いてみたいなあ。
クローズドサークルに見立て殺人、冒頭で描かれる過去の怪異譚と村での出来事が現在の事件につながっていくあたりの仕掛けなど
本格ミステリの趣向はしっかりこらされているし、
芸の道に生きる人達の姿や落語界のことも興味深くて物語としてもかなり面白かったです。
落語をミステリ部分や物語に生かす手腕はお見事と言うほかありません。
なんか評論家受けしそうな作品だと思いました。今年の本格ベスト10候補の1つでしょうな。
『プレーグ・コートの殺人』 カーター・ディクスン (ハヤカワ文庫)
幽霊屋敷プレーグ・コートでの降霊会の最中、離れの石室の中で霊媒が殺される。死体の傍らには博物館から盗まれた呪われた剣。
周囲に足跡はなく、窓も人が出入りした痕跡はない。HM卿最初の事件。
幽霊屋敷、降霊会、密室殺人に彩られた謎に太鼓腹の名探偵が大暴れ、まごうことなく”これぞカー”な作品。
序盤から中盤にかけては展開がたるくて正直言って読むのが辛かったのだけど、
HM卿が事件に乗り出してくるあたりからぐっと面白くなってきて、満足して読み終えることができた。
定番のものやちと独創的なトリックがいくつも組み合わさっていて、合わせ技1本という感じ。
ただ、殺人トリックに関しては、ネタの着眼点はともかく(これはちょっと笑ってしまった)、
この方法はありえるのかなあ? まあ、こういうトリックの無茶さかげんもカーの味の1つなのかも。
『奇術探偵 曾我佳城 全集 秘の巻』 泡坂妻夫 (講談社文庫)
若くして舞台を降りた美貌の奇術師・曾我佳城が奇術がらみの事件の数々を紐解いていく短編集。
文庫版2分冊のうちの1冊。「秘の巻」は上巻にあたる。
わたしは元々、奇術にはあまり興味がなく知識もほとんどないもので、
奇術薀蓄や解説やショウの演目などにいちいち感心してしまい、
ミステリ趣向そのものもなかなか面白いのだけど、それ以上に奇術ネタを楽しみにしているような感じで読んでました。
これ読んでると奇術ショウが観たくなっちゃいますね。
わたしは奇術師というとプリンセステンコーとMrマリックとマギー司郎くらいしか知らないド素人なんですが(笑)
佳城さんみたいな奇術師がどこぞにいるならぜひ観てみたいです。
ミステリ短編として「花火と銃声」が一番面白い。それと「空中朝顔」の綺麗さはすごく好きです。
「虚像実像」の奇術演目は生で観てみたいなと思いました。
あと、佳城さんと弟子の串目君の関係がなんというか、光源氏計画のように思えてならないのですが、
これはわたしの歪んだ萌え魂が見せる錯覚なのでしょうか?(笑) うーん、気になる…
『七人の証人』 西村京太郎 (講談社文庫)
拉致され孤島に連れてこられた7人の一般市民と十津川警部。
7人は1年前にある殺人事件の裁判に証言者として関わった者たちで、その事件の再構成と証言の真偽を確かめるべく連れてこられたのだった。
事件の現場となった街の一部分を再現してまで、被疑者の無実を信じるその父親。十津川は公正な立場での立会人をまかされる。
そして、証言の真偽が次第に明らかになっていく中で殺人事件が発生してしまい…
昔は西村京太郎もこんな本格者の興味をそそるような奇抜な設定の作品を書いてたんですねえ。
それと、こういった作品に十津川が立会人兼探偵役として登場しているというのも意外性があって驚きでした。
ミステリ部分はあまり無茶な飛躍はしていないので真相は見抜けちゃいましたが、さくさく読めて結構面白かったです。
1977年発表の作品ということの古くささは若干あります。ビデオレコーダーが最新家電というあたりに、あ、そんな時代なのかーと。
『殺意は幽霊館から』 柄刀一 (祥伝社文庫)
温泉地で夜の間欠泉見物に出かけた一行は、幽霊館と呼ばれる廃ビルで宙に浮かぶ幽霊を目撃する。
その翌日死体が発見され、殺害現場がその幽霊館だと判明する。
ぶははは、空飛ぶ幽霊のトリックに思わず爆笑してしまいましたよ。
幽霊目撃譚をきっちりトリックとして回収していく手並みにほへーんと感心してました。
まあ、ミステリとしての驚きにはあまりつながってないものの、
1時間少々で読める中編という話のボリュームからすれば過不足ない出来かと。
この龍之介シリーズを読んだのは初めてで、探偵役の龍之介君の弱っちい姿にはなかなか好感をもったのですが、
語り手はどうも好きになれないし他のキャラクタも魅力を感じられなくて、
改めてシリーズ読んでやろうという気にはあまりなれなかったのが残念。
文芸誌「ファウスト Vol.1」 太田克史・編 (講談社)
製作段階から物議をかもし、ミステリ系や他のジャンルのファン層も含め、ネット上では否定的な見方や辛辣な意見が多かったように思われる文芸誌の創刊号。
編集の形態や文芸誌としての方向性など雑誌としていろいろ主張したいものが編集サイドにはあるようですが、
短編小説が4作品しかなくて冊子全体における小説の密度が薄いことや、
その出来が飛びぬけてよいわけでもない(舞城・佐藤・西尾の作品は3つともその作家のアベレージですよね)こともあって、
そう大きなインパクトは与えられなかったと思います。真価を発揮するのは第2号以降ということなんでしょうね。
正直言ってもうちょっとはじけた雑誌になると思っていたんだけどなあ。
それと、西尾維新の短編以外ではミステリ要素もほとんどないので、ミステリ者として読まなければいけない必然性というのは皆無です。
『ドリルホール・イン・マイ・ブレイン』舞城王太郎
漫画『巨人の星』で星飛雄馬が投げる消える魔球(大リーグボール2号)のような面白さ。
と言って通じるだろうか?
はちゃめちゃで凄いのはわかるけど、球筋がまったく見えなくて(消えるから)果たしてストライクゾーンを通ってるのか判別不能、という感じなのです。
読んでいる間は夢中になって読んでいるのに、読み終わってから我に返ると「めちゃくちゃで変な話だなあ」としか思えない。
小説読むよりもカラーの絵を見る方が「舞城だなあ」という気になるのはなぜなんでしょうね。
『赤色のモスコミュール』佐藤友哉
先に読んだ『人生・相談』は面白かった。
なのに、なんで創作になるとこんなものしか書かないのか。全然面白くない。
下品な残酷さと壊れ衝動がひたすら叩き売りされているようで気持ち悪い。最低。安過ぎる。死んじゃえよ、もう。
わたしは佐藤友哉に一体何を期待してるんだろう。好きでもないのに何で読んでるんだろう。
知り合いに佐藤友哉ファンが何人かいて、その人たちとの話題作りのために義理立てして読んでるだけなんじゃないかと自棄ばちな気持ちばかりわいてきて自己嫌悪。
佐藤友哉ファンはこういうのが読みたいのか。これが佐藤友哉で、これしかないというのなら、わたしが佐藤友哉ファンになれる隙なんて、どこにも1mmの空間だって存在しない。
”優しい嘘”は書けないの? 書きたくないの? 壊れていることや残酷なことだけで終わってほしくない。その先が見たいのじゃよ。
暗闇の中で、例え光さすことなくとも、それを欲する姿が。
『新本格魔法少女りすか』西尾維新
先に読んだ2編がああいうものなので、読んでてなんだかホッとした。素直に”面白い”と言える。
既成の魔法少女ものの枠を踏襲したり崩したりしているあたりの面白さは、
多少なりとも魔法少女ものの作品を経験してないと通じないかもしれないですね。
西村キヌ氏のイラスト凄え。振り向きりすかの体の線の絶妙さ具合がたまりません。
きったか君の半ズボン姿も素晴らすぃ。
アダルトりすかは最近わたしのお気に入りである『ゾンビ屋れい子』というマンガに出てきそうな感じで良いです。
『魔法の国』=長崎県という設定も面白いですよ。続きものにするんだろうから、そのへんが次回以降でいきてくるといいな。
あと、西尾維新が北山猛邦の『「アリス・ミラー城」殺人事件』を読んでない筈はないと思うので書いておくけど、
りすかの変な喋り方って山根さんでしょう?と決めつけて、ひとりニヤニヤ。
『ロスタイム』飯野賢治
意外に悪くなかった。『ファウスト』につけられたイラストーリーという変なキャッチフレーズには一番ぴたりとくる。
今後どんどんゲーム業界から人材を引っ張ってこようという意図があるのなら、その第1歩としての意味は大きい。
飯野小説をまた読みたいとはあまり思わないけど。
小説以外に関しては清涼院流水インタビューが特に面白かったです。 京ミス研のこととか、太田氏との青春劇とか、ホントに流水師はキャラクタだけは規格外の大物じゃのう…。 対談企画を読んでると、滝本も『空の境界』も笠井たんの伝奇ものも読みたいなあと思っちゃいますね。 それと、流水インタビューで元長柾木の名前がJの口から出てるYO! パイプあるんですか? アンケート葉書に元長柾木キボンヌとでも書いて送ってやろうかしら。
『林真紅郎と五つの謎』 乾くるみ (光文社カッパノベルス)
世捨て人同然の余生を送っている元・法医学者の林真紅郎が出会ってしまった事件の謎を推理していく短編集。
ある程度はロジックでつめておいて最後は直観でズバリと真相を見抜く……ように思わせながら、
そこからさらに前提条件をひっくり返したり、解答の正解を保障しないまま放り投げたり、 最終的に”とても奇妙な真相”にたどり着いてしまったりと、
正統な本格ミステリのフリをしながら意図的に何かずらされているところがあって、その捻り具合がとても面白い。
思えば前著作の『マリオネット症候群』も奇妙に捩れたオチになっていたし、
『Jの神話』や『塔の断章』もそうした面が強かったように思えるし、
変なものが好きだという人に向いてる作家なのかもしれない。”初期メフィスト賞が生んだ奇才”とは言い得て妙ですな。
「陽炎のように」の変さが特にずば抜けていて面白いのと、
「ひいらぎ駅の怪事件」と「雪とボウガンのパズル」真相は衝撃的で唖然とさせられます。
『トップラン 第1話 ここが最前線』 清涼院流水 (幻冬舎文庫)
恋子は貴船天使と名乗る奇妙な男と出会う。トップランテストというものを受ければ100万円をくれるというのだ。
しかもテストの結果によってはさらに大金をくれるらしい。一体なぜ?
小説の舞台設定が2000年になっていて、そのときの実際の時事ネタが作品内でまとめられている。
3年もたった今となっては「そんなこともあったよね」という感覚で読むことも出来るものの、文章の水増し感は否めないですな。
話の筋はもうびっくりするくらい進まずに、1巻の半分がトップランテストの回答と分析に費やされており、
これはこれで実は面白かったのだけど、果たして小説としての面白さなのか?と考えると首をひねらざるをえません。
うーむ、とりあえず続きが気になるので2巻は読もうと思ってる時点で、すでに清涼院の術中にはまってまるような…。
『最終エージェント☆チカル』 大迫純一 (MF文庫J)
ドジっ娘でちびっちゃくて運動神経のない女子高生・チカル。
幼なじみのタクや担任のヒトミ先生やちょっとばかし変なパパたちに囲まれ普通に暮らしていたチカルに危機が訪れる。
チカルが最終エージェントって一体なんなの!?
はいはい、ツインテールでセーラー服な萌え系少女が秘密結社の陰謀に巻きこまれてハードアクションでワショーイ、
と一言でまとまってしまうようなお話でした。いまいち。
ネタもあまり捻られてないし、何より文体や雰囲気の軽さにちっとものれなくて、読んでてテンションが落ちる一方。
えろいシチュエーションがかなり邪魔くさくて、おまけにそれのおかげでタクへの好感度が著しく下がるので、チカルちゃんとのラブシーンに至っては引きまくりですよ。
クライマックスの見せ場のつもりなんでしょーけど、そんな男好きって言うなと本気でツッコミたい。
主人公のチカルは結構かわいいのに、脇のキャラが駄目すぎてキャラ萌え小説にすらなれてないのが致命的です。駄目だこりゃ。
今日は新宿で「ファウスト」のイベントがあるんですよね。わたしは残念ながら仕事があって観に行けません。 清涼院流水氏が喋ってるところを生で見たかったです。でも、なんで清涼院氏と佐藤友哉が一緒に出ないんでしょう。その方がミスマッチで面白そうなのに。
『雷電本紀』 飯嶋和一 (河出文庫)
江戸時代の伝説の相撲取り・雷電為右衛門と町人・鍵屋助五郎の生涯を描いた時代小説。
雷電というと、あまりにも強すぎて土俵上で相手を死なせてしまったことがあるとか、
そのために横綱になれなくて引退するまで大関であったとかの伝説を、
大相撲大百科みたいな本で幼い頃に見聞きしたような記憶があるのですが、この作品の雷電にそういったものはまったくありませんでした。
相撲では天下無双の強さを発揮し荒々しく妥協のない闘いを繰り広げていた雷電。しかし土俵を降りれば、知性高く温厚で人情に厚い人間として描かれている。
どちらが真実の雷電に近いのかは別段相撲に詳しいわけではないわたしには判断つかないものの、
『雷電本紀』で描かれる雷電為右衛門はとても魅力的で熱くてかっこいい。
もう一人の主人公である鍵屋助五郎も、そして2人の脇を固める他の登場人物もそれぞれに魅力的で、語られるエピソードの1つ1つが印象深かったです。
天災と悪政に苦しみながらも懸命に日々を生きていくしかない民にとって、雷電の強さが明日を生きていくための希望になっている。
そのへんの熱さがグッときます。ヒーローの活躍や強さに触れ憧れることが生きる糧になることもあるのだ。
わたしは普段は時代小説の類はほとんど読まないのだけど、ここに描かれる江戸の時代と社会、
人々の生き様の壮大さにちょっと感動してしまいました。読んでよかった。満足。
相撲に興味のない方にもおすすめしてみたい感じです。
『9S (ナインエス)』 葉山透 (電撃文庫)
天才マッドサイエンティストが世界に残した”遺産”と称される科学技術や知識やアイテムの類。
その1つである海上に浮かぶ完全自律型研究施設が何者かによって占拠された。
遺産犯罪対策部隊は対テロリストの切り札として、地下深く拘束されていた少女を投入する。
脅威の力を持つ”遺産”の数々、それらを生み出したマッドサイエンティスト、
その知識と技術を受け継いだ少女、殺戮者の人格を内に秘める少年、そんな兄を気遣う妹、
”遺産”を武器にした敵、等々。おいしい設定がこれでもかとたくさん詰め込まれている上、
膨大な設定に負けないような派手なハードアクションが展開されていて、めちゃんこ面白かったです。
対決シーンを書くのをはしょったなと思われるところがちょっとあったりするものの(由宇vs光城とか)、
全体を通してみると活劇シーンは十二分にあるし、展開も意外性があって最後まで飽きさせません。
キャラクタの魅力も申し分なし。敵にほとんど一人で立ち向かうことになる少女・由宇はやたらかっこ良いわ、
妹キャラの麻耶たんは健気でかわいいし、由宇が***を*いてないのが判明するところなんざ萌え転がりまくりですよ?(←馬鹿)
拘束されて生きることを余儀なくされている由宇が、たった1つだけ、どうしても求めずにいられないもの。
そのために必死になる。天才として常人の範疇を遥かに越えた力を持っているはずの由宇が、そんなちっぽけなことを心の支えにしているというのが、せつなくっていい。
『どこまでも殺されて』 連城三紀彦 (新潮文庫)
どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる。
6歳のときに初めて殺されてから、7回殺された僕は今また殺されようとしていた。
そして、高校教師のもとに男子生徒の声で「僕は殺されようとしています。助けてください」という電話がかかってくる。
上のあらすじでも引用した一文(斜体の部分)が何より印象的で、”7回殺される僕”の異様さに一気に引きこまれます。
しかし、現在パートのノリやミステリ的な部分が冒頭に比べて面白くなくて、正直言っていまいち。
トリッキーな作品ではあるし、非現実的な描写の落とし所にはなるほどなあという部分もあるのだけど、
とある人物の行動原理に無茶があることなどもあって真相にはあまり感心できず。
この作品のようなキャラクタや道具立てがわたしの好みとは外れているミステリの場合、トリックや真相が予想の範囲内におさまってしまうと、
どうしても評価が辛くなってしまいます。良くも悪くも新本格ミステリな一品という感じ。
『文章魔界道』 鯨統一郎 (祥伝社文庫)
作家志望のミユキの師匠・大文豪(おおふみ ごう)の大作が文章魔王によって奪われた。
それを取り返すためにミユキは文章魔界道へと向かい、文章魔王とその手下との文章バトルに挑む。
『CANDY』に続く鯨統一郎の祥伝社400円文庫作品で、今回は会話を主体とした戯曲調な文体になっている。
期待に違わずナンセンスさ大爆発な小説で、これで日本語ミステリーと称するのはどう考えても詐欺だーと声高に糾弾したくなるくらい。
しかし、そのナンセンスなギャグがメタな趣向を帯びているために、ついつい笑ってしまうのです。(以下引用)
「少し疲れた。二行ほど休もうか。」
「はい。」
「で、映画でしか出来ない表現方法を…」(以下中略)
こうして抜き出してみるとどうかと思うのですが、読んでるときは爆笑しちゃったんですよう。
ギャグの他にも、同音異義語の羅列で作る文章や作家をネタにした回分などの言葉遊びの部分は盛りだくさんだし、
見た目やコンセプトのくだらなさのわりには意外に面白かったような気がしたりしなかったりです。
いや決して鯨作品慣れして毒されてしまったなんてことは(汗)
『ブラックナイトと薔薇の棘』 田村登正 (電撃文庫)
高校のIT研が運営していたインターネットサイトの常連である「天空のアイ」が交流のあった人たちに別れを告げる旨のメールを送ってきた。
天空のアイが自殺しようとしているのではないかと推察した「ブラックナイト」は同じ常連である「薔薇の棘」とともに天空のアイを探し始める。
全然、電撃文庫の匂いがしないです。徳間デュアル文庫とかの方がたぶんしっくりくる。
非常に落ち着いた雰囲気の作品で、狂騒的なノリもないし、キャラクタも地味。
中盤までは(特にアイの捜索方法について)いろいろ違和感があって、これ本当に面白いの?と不安になりかけたんだけど、
アイの正体が判明するあたりからぐぐーっと盛り上がってくれました。ああ…、うん。
SFなロマンティシズムとセンチメンタリズムがかきたてられますね。余韻がとても心地いい。
これは青春小説と言ってもいいんじゃないかな。
あと、ブラックナイトと薔薇の棘がお互いをハンドルで呼び合っているあたりが面白いなあと思ったり。
実際にわたしもインターネットを介して知り合った人たちに対しては、例え本名を知っていたとしてもハンドルで呼んだ方がしっくりくるし、
自分自身がハンドルで呼ばれることにさして違和感ありませんし。そういった点で主人公たちに感情移入しやすいというのはあるのかも。
『護くんに女神の祝福を!』 岩田洋季 (電撃文庫)
世界最高の天才ビアトリス使い(魔法使いみたいなもの)でありワガママお嬢様な鷹栖絢子が年下の男の子に一目惚れ。
突然告白された護くんは生徒会の大騒ぎに巻きこまれてんやわんや。絢子はとんでもない力の持ち主で、でもとっても純情で…。
とかく元気な魔法学園もの+ラブコメなお話で、読んでて楽しかった。
主人公の護くんは笑顔の似合う素直ないい子で、絢子との出会いを機に少しずつ成長していくのがかわいい。
絢子は普段はクールな世界最強(最恐)の少女なのに護くんの前では頬を赤らめてがちがちになってしまうという二面性がかわいらしい。
そんな絢子&護をあたたかく見守る(というかけしかけて遊んでいる)生徒会長の兄妹がいい味出してて笑えます。
ラブコメとはいっても、読んでるこっちが恥ずかしいという類のものではなくて、2人をとりまく周囲の馬鹿騒ぎぶりを笑って楽しむタイプの作品ですね。
2人の間に横槍をいれるライバルキャラがいなかったりすることもあって、せつなさとかそういったものがないのはちょっと惜しいかも。
ただ、そういうのがないぶん、護くんの心のうつりかわりがじっくり描かれていているように思うし、最後のシーンは微笑ましくて良かったです。
『消えた短冊 なばかり少年探偵団』 雑破業 (富士見ミステリー文庫)
少年少女ほのぼのラブコメ+ミステリ風味ちょっとだけのシリーズ3作目。短編3本収録。
いかん、面白い。これまでの2冊と比べてもかなりバランスが良くなっていて、思ってたよりもずっと楽しめちゃいました。
「消えた短冊」 幼稚園児がおねがいを書いた短冊が消失してしまった事件の謎を追うという話で、
これちゃんとプチ本格ミステリになってます。事件の真相にはなるほろろーと感心してしまいますた。
あと、幼稚園の先生が即興で紙芝居を作っていくというシーンが冒頭にあって、こういう先生が実際にいたらいいなあとこれまた感心。
「旧校舎の怪談」 少年探偵団が学校の七不思議と霊感少女の嘘を暴く!
という趣向と冒険部分のドタバタぶりは楽しくて、ちょっぴりせつない真相が良いです。
「巨乳襲来」 今回のラブコメ話。あまりの恥ずかしさに読みながら薄笑いがとまりませんでした。
エッチな要素が少し盛りこまれているのが恥ずかしさを倍増させてくれます。
あとがきで「今回のが売れなかったら最後」と書いてあるので、
これまでいくつもシリーズものを2〜3冊で打ち切りにしてきた富士見ミステリー文庫の所業からして、
おそらくこの3作目で終わりなんだろうなあという予感がします。
ようやくエンジンがかかってきてラブコメとしてもライトミステリとしても面白くなってきたところなのに、ああ勿体無い(悲)