『本格的 死人と狂人たち』 鳥飼否宇 (原書房ミステリーリーグ)
大学の先生を中心にすえた連作短編ミステリ。
変態的フィールドワークに燃える数学者がある殺人事件に巻き込まれる「変態」。
動物の擬態について読者も学べる「擬態」。知り合いの子供はクローン研究によって生まれた命なのか?「形態」。
そして読者への挑戦「前期試験」と解説編「補講・実態」が収録されている。
うわはははは、なんじゃこりゃ。ものすごーく変。変としか言いようがないくらいヘンテコ極まりない。
「変態」はまさしく変態な数学研究者が彼にしかわからぬ理屈でひたすら暴走していくのを、
読者は作中の登場人物と一緒に呆れ果てるほかなくて、特に女性読者にはちょっと下品というかあまりのセクハラぶりにオススメできない感じなのだけど、
フィールドワークから導き出される論理は噴飯ものの面白さであったりして。
「擬態」に至っては終盤までひたすら擬態についての講義が続くだけで、作者が一体何をやろうとしているのかさっぱりわからない。
真相にはおそらく読者のほとんどは「なんじゃそりゃ!」とつっこむか呆れるか…。わたしは大笑いしてしまったんだけど。
「形態」以降は作者の悪ノリ以外の何物でもないと思います
こんな脱力系ミステリを読みながらそこまで深読みしてる読者がどれだけいるんだよう、とほほー。
気づかなくて悔しい、という気すら起きないくらい、なんつーか、バカミスなのです。
清涼院流水とか鯨統一郎とか、とにかく変なものを好む方は「擬態」を読むべし。
ごめんなさい。正直言って、わたしこれすんげー面白かったです。こういう変なの大好きなんですよー。
『スティームタイガーの死走』 霞流一 (ケイブンシャノベルス)
幻の蒸気機関車をおもちゃ会社が作り上げた。”虎鉄”と名付けられたその列車は乗客を乗せ記念走行へ出発するが、
駅では死体が発見され、しかも虎鉄は列車ジャックされてしまい…。2002年「このミス」第4位も、版元倒産のため現在絶版中の作品。
思ったよりも虎づくしというわけでもなかったし、作品にしこまれている虎ネタも無理矢理感が強い。
ギャグはすべりまくりだわ、列車ジャックの緊迫感は皆無だわ、殺人事件の真相はしょうもないわで、ネタは盛り沢山でも総じて安っぽい。
一応この作品のメイントリックと言ってもよい列車消失方法に関しては、なるほどなあとちょっとばかり感心はするものの、
驚愕の真相!とか大トリック!だなんて恥ずかしくてとても言えませんよ。
なんでこれが国内ミステリー作品年間ベストの4位にランクインしてしまったのかが何よりも謎だなあ。
鉄な人が投票者に多かったということでしょーか? まあ、脱力系バカミスが読みたいとか、鉄道好きならいいのかも。
あと、ラストの無理矢理なメタ趣向はあまり好きじゃないです。
『マリア様がみてる 黄薔薇革命』 今野緒雪 (コバルト文庫)
黄薔薇のつぼみこと支倉令と妹の由乃が姉妹を解消したことで学園は大騒ぎになる。
果たして2人はどうなっちゃうの? マリみてシリーズ2冊目。
大方のマリみてファンの中ではあまりたいした評価を受けていないらしい、この「黄薔薇革命」。意外に面白かったです。
読んでてきゃー恥ずかしーと身悶えするような場面が1作目よりも少ないし、
この巻の主役である令さんと由乃さんの関係が百合というより姉妹(スールではなく家族的な”しまい”の意)の思い思われなところが
祐巳&祥子さんや白薔薇さまに比べて地味なんでしょうかねえ。
わたしは、恋愛感情や思慕の情に依拠するものよりも友情とか肉親の情から発した優しさの方に感動してしまうたちなもので、
黄薔薇のつぼみ姉妹の関係に素直にいいなーと思っちゃいました。や、もちろん祥子さんにドキドキしてる祐巳もかわいいと思ってますけど。
それと、わたしが結構お気に入りな蔦子さんの出番が多いのも嬉しいなあ。
『スモールボーン氏は不在』 マイケル・ギルバート (小学館)
弁護士事務所の書類金庫の中から、行方不明になっていたスモールボーン氏の死体が発見された。
病死した弁護士との関係はいかに? 犯人は一体誰なのか?
1950年に出たとは思えないくらい現代風な印象を受ける作品で、訳者が上手いのか原文がそうなのか、非常に読みやすい。
所々に配した伏線が最終的に生きてくるというタイプの本格ミステリで、トリックやロジックが薄味なぶんパッと見はかなり地味なんだけど、
弁護士や秘書たちの人間関係や何やが次第に明らかになってくるところは面白かった。
くすっと笑える会話のやり取りもいくつかあって、堅苦しい印象があまりないのが良いですな。
こういうのが英国ミステリなんですかー、なるほど。
『奇術探偵 曾我佳城 全集 戯の巻』 泡坂妻夫 (講談社文庫)
若くして舞台を降りた美貌の奇術師・曾我佳城が奇術がらみの事件の数々を紐解いていく短編集。
文庫版2分冊のうちの1冊。「戯の巻」は下巻にあたる。
文庫版2分冊の構成は、「秘の巻」の方が舞台奇術とミステリ重視の短編が多めで、
「戯の巻」は完結編の3編に加えシリーズ全体を俯瞰できるような作品を収録しています。
発表年でいうと90年以降の短編で「秘の巻」に収録されているのは「真珠夫人」だけで、その短編も舞台上での事件を扱っているものですから、
収録短編の振り分けは上記の理由で間違いないかと。
ということで、本格ミステリを期待するのなら「秘の巻」、曾我佳城ほかのキャラクタが気にいったのなら続いて「戯の巻」という読み方をおすすめ。
分厚くてしかも2冊というのに気後れして手を出せない方は「秘の巻」だけ読んでみるというのもいいと思います。
「秘の巻」と比較してしまうとトリックは全体に小粒で奇術薀蓄も控え目な印象。
これだ!という短編はないものの、そのぶん、「白いハンカチーフ」の実験的な書き方や、
「浮気な鍵」のコメディ色、「石になった人形」など
風変わりな短編が多くてバラエティにとんでいます。バグジャラジー!とか結構お気に入りだったりします(笑)
「おしゃべりな鏡」のネタにはまいりました。
偶然そうなるはずなんてないですから、シリーズ書き始めた当初からあたためてたネタに違いない。これを20年寝かせてたってのが凄い。
完結編の「魔術城落成」、うっひゃあ、そんな終わらせ方するんですかー。
あ、あれが伏線でしたか…。うう、わからなかったけど、あれは反則です。
でも、結末にはなんとなく納得できていたりもして。
それと、最後まで読んで、シリーズの中でもかなり異色の短編である「空中朝顔」がなぜ文庫版の一番最初に配されているのかもわかったような気がしました。
『月の扉』 石持浅海 (光文社カッパノベルス)
ハイジャックされた飛行機の中で人質の乗客の1人が死体になって発見された。
いったい誰が? なぜ? どうやって? ハイジャック事件のサスペンスと閉鎖状況下の死体の謎解きが融合した本格ミステリ。
物語的弱点がいろいろあるのは承知の上であえて傑作だと評したい。
師匠・石嶺についてのエピソードが足らず稀有なカリスマ性に対しての説得力が薄い、
死体の謎をえんえんと推理していることでハイジャック事件の緊迫感が弱まってしまう、
ラストがすっきりしない…云々。ごもっとも。
それらにひっかかってしまう人が少なからずいることはわかるし、誰もが傑作であると認める類の作品では決してないことを承知の上で、
それでもこの作品を素晴らしい本格ミステリだと主張したい。
石持浅海氏のデビュー作『アイルランドの薔薇』は本格ミステリファンの間ではそれなりに良い評価を受けていたものの、
わたしにはちっとも面白くなかった。どんなに舞台設定が凝っていても肝心のミステリ部分が全然駄目だろうと、
なんでこんなしょぼい真相を皆が許せてしまうのかがさっぱりわからなかった。
さらに、探偵小説研究会が創元推理文庫で出している『本格ミステリこれがベストだ!2003』に収録された
石持氏のコラム(ミステリ小説を書くときに自らに課しているという”べからず集”)がこれまた私的に賛成しかねるものばかりで、
石持浅海なんかもう読まねーと半ば本気で思っていた。
そんな折に出たのがこの第2作『月の扉』である。
ハイジャック事件によってクローズドサークルが生まれ、密室状況下で死体が出るのだという。
あらすじを、いや表紙と帯を見た瞬間に”やられた”と思った。
それまでの石持浅海氏に対しての不審感から素直に認めたくない気持ちもあったし、やっぱり自分には合わないかもしれないという不安感もあって、
高まってしまった期待感を抑えつけながら読み始めたのだけど、そんな杞憂は一気に吹き飛んでしまった。
ハイジャック事件の展開にはハラハラドキドキである。
3人のハイジャック犯は決して悪い人なわけではなく、特に語り手の女性が普通の善良な女性であることで、
読み手として少しばかり安堵するのと同時に彼らの行く末が心配になってしまうのだ。
主人公たちは許されざる犯罪をしている。しかも乳幼児を人質にとるという卑劣な手段をとっている。
にも関わらず、読み手のわたしは警察の勝利を望まずに、寧ろハイジャック犯たちの安否を気づかっている。
キャラクタもサスペンスフルな展開も申し分ない。
発生する事件は、誰がやったのか? 他殺ならば何故このハイジャックという異常事態の最中にそんなことをしなければならなかったのか?
どういう方法で行われたのか? 本格ミステリの謎解きの3要素は揃っている。
探偵役が状況を分析し論理立てて推理していくさまには思わずウットリ。
そして、外部の視点を交えつつ進行していくハイジャック事件と、飛行機の中の死体とが交わる瞬間、
思わず拍手喝采したくなるくらいのカタルシスがもたらされるのである。凄い。
怒涛のクライマックスへ。精緻に論理立てて組みたてられた推理は最後の飛翔をへて鮮やかに着地する。
ひゅー!ブラーヴォ! そんな動機まで見抜ける読者なんてそういないよ! すげえ。
トリックはちょっとしょぼいかもしれない。でも無理はしてないじゃないか。
ああ、なんて美しくも危うい本格ミステリなんだろう。そして、なんて歪なラストなのだろう。
何とも形容しがたい不思議な余韻を残して、月の扉は閉じられていくのであった。
『学校を出よう! Escape from The school』 谷川流 (電撃文庫)
幼い頃に事故死し幽霊になった妹にとりつかれているヨシユキは、彼女が強力なEMP能力をもっていたがために、
彼自身には何の特殊能力もないのに第三EMP学園で世間から隔離された生活を余儀なくされ、
もう1人の妹(こちらは生きている)の若菜やエキセントリックな性格をした周囲の同級生や後輩たちに囲まれ騒がしい日々をおくっていた。
妹の幽霊にとりつかれている主人公という妹萌え要素やら、超能力者を集めた学園という舞台設定、
電撃文庫の中ではわりあい珍しいかもしれない正統派少女マンガライクなイラストといった掴みの部分はかなり魅力的。
キャラクタはちとエキセントリックにすぎるかなとも思うのだけど(特に真琴)、まあ許容範囲内かなと。
そういった要素をとり揃えてはいるものの、
主人公が彼女たちや自分の置かれている状況に対してかなり冷めていていまいち感情移入しずらいことや、
話の展開のさせ方が手際が悪くもたもたしていて冗長なことなどもあって、作品に乗りきれなかった。
ハードSFな設定もあって、そのへんも読みごたえがありそうな気がするのに、
SF要素と萌え要素が互いに反発しあっている感じ。勿体無い。
もうちょっと、兄妹のエピソードを重ねるとかで主人公や妹たちに感情移入させてくれればよかったのでは?。
同時発売の『涼宮ハルヒの憂鬱』と比べるとバランスが悪いです。
まあ、こっちの方が変なキャラクタが多くて好みに合うとか、SFガジェットに凝ってて良いと評価する人もいるかもしれませんが、
わたしはいまひとつだと思いました。
『学校を出よう!2 I-My-Me』 谷川流 (電撃文庫)
3日後の世界からとんできたらしい神田Aと3日前の世界からとんできたらしい神田Bが現在の世界ではち合わせ。さらに元々存在しているはずの神田Nもいるらしい。
これは時間遡行かドッペルゲンガーが平行世界移動なのか? 2人の神田健一郎は同級生の星名サナエに助けを求めて…
時間遡行ものSFに正面から突撃していったような作品で、そういうのが大好きなわたしはとっても楽しめました。
主人公は現在の神田Nではなく、過去からきた神田Bと未来からきた神田Aで、しかも時間転移している2人の方が何が起こっているのかまったくわかっていない、
という不可思議な設定がまず魅力的。
幼なじみの姉妹の姉の方に痛めつけられたり、妹の方の悩みを気にかけてみたり、世話になっている星名嬢にちょっとときめいていたりするのも楽しいし。
記憶をなくした神田Aが持っていた血まみれのナイフの謎や女児誘拐事件が何かに関わっていそうだというサスペンスを予感させる展開も結構どきどきものです。
3人の神田君の謎についての真相もパズル的で良くできており感心いたしました。面白かったー。エピローグも綺麗でイイ。
世界観が共通していて宮野&茉衣子が狂言回しのような役割で再登場することもあって、「学校を出よう」の続編扱いになっているのだけど、
話は独立しているのでこの作品だけでも問題無しです。時間遡行ものが好きな人はぜひとも読むべし。
『バッカーノ! The Rolling Bootlegs』 成田良悟 (電撃文庫)
それを飲むと不老不死になれるという酒をめぐり、錬金術師やギャングたちが血みどろのバカ騒ぎを繰り広げる。
禁酒法時代のアメリカを舞台にした作品。
明確な主人公が決まっておらず、多くのキャラクタが出会ったりすれ違ったりしながら、
ある者は積極的にある者は意図せずして”不死の酒”を巡る大騒動に巻き込まれ最後のクライマックスへ雪崩こんでいく、
という映画的な作品構成が効果的で、たいへん面白い。
不死の術というライトノベル向けガジェットで作品を支えつつ、ギャング映画のかっこよさがほどよくミックスしてあるところもいい感じ。
キャラクタではアイザック&ミリアの泥棒バカップルの天然ボケぶりが最高です。
殺し合いなどもあって作品全体が殺伐としたものになりそうなところを、2人のおバカさかげんが救ってくれてます。
2人が騒動の只中へ飛びこんで行く決意を固めるところなんかちょっと感動ですよ。
読み終わってすっきり爽快な気分になれた気持ちの良いお話でした。
『血塗られた神話』 新堂冬樹 (講談社文庫)
かつて悪魔と呼ばれるほどの冷酷な取り立てを行っていた街金融の社長・野田。
しかし、1人の男を自殺に追いやったことをきっかけに野田も少しかわってきていた。
そんな折、新たに融資をした客が無残な死体となって発見され…。第7回メフィスト賞受賞作品。
街金融および裏金融の世界を舞台にしたサスペンス(もしくはハードボイルド?)小説で、
暗黒小説と名高い新堂作品にしてはわりにとっつきやすい。
解説によると2作目3作目になるにつれ凄惨でハードなものになっていくそうなので、
そういった作風が苦手なわたしとしては新堂作品を読むことはもうないと思います。
この『血塗られた神話』もメフィスト賞受賞作品でなければ読むことはなかったかも。
サスペンスあり、謎あり、恋愛あり、凄惨なシーンもありと結構盛り沢山な内容で飽きさせないし、
悪くはないと思いますよ。わたしの好みには合いませんが。
『傷だらけの遠い明日 ブロークンフィスト2』 深見真 (富士見ミステリー文庫)
古流剣術の演武会で殺人事件が発生した。首を斬られ頭部を燃やされた死体。消えた凶器。
そして、秋楽と闘二は謎の剣客に襲われ…。
富士見ミステリー文庫の新人賞である第1回ヤングミステリー大賞に輝いた『闘う少女と残酷な少年』の続編。
相変わらず作者の趣味全開で、格闘技や武術に耽溺しきったマニアっぷりに加え青春小説っぽい要素と同性愛(レズビアン)が盛りこまれており、
さらに恐ろしいことにミステリでもあったりして、有栖川有栖命名”体育会系ミステリ”なのは前作と同じです。
そんなに面白いというわけでもないのだけど、なにしろ他に類例のないタイプの作品なもので、物珍しさだけで案外読めてしまったりして。
前作ほどのインパクトはないものの、今回の凶器消失トリックもなかなか衝撃的でした。わたしゃトリックが明かされた瞬間に机につっぷしてしまいましたよ。
過去の本格ミステリの中で誰かが類似トリックの作品を書いているんじゃなかろうかという、中途半端なプチ本格ぶりがなんとも味わい深いです。
前作を読んだ上で怒らなかった人ならば、読んでもいいかも。
『撲殺天使ドクロちゃん2』 おかゆまさき (電撃文庫)
天使なのにエッチなめにあうと(桜クンが意図的にあるいは偶発的にセクハラすると)棘突きバットで撲殺してくれちゃう血塗られた愛天使こと
ドクロちゃんと桜クンのおりなす愛と血みどろのシリーズ2作目。今回もあなたのハートに「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪」
帯や「びんかんサラリーマン」はちょっと悪ノリしてるなあとは思いつつも、中身との相乗効果でつい笑っちゃいましたよ。
さすがに1巻のときのような衝撃はすでになく、1巻第1話の異様なノリには及ばないし、
ドクロちゃんの暴走ぶりは健在なんだけどそれをさらにわやくちゃにする敵役の存在がいないのでやや物足りない感じも。
とはいうものの、ドクロちゃんの珍妙なボケと桜クンの丁寧かつテンションの高いツッコミのおかげで、笑いどころにはことかきません。
お約束なえっちシチュエーションとおバカな萌え要素を楽しむぶんにはじゅーぶんなような気もする。
第2話「おれがあいつであいつがおれだよ! ドクロちゃん」はタイトルだけで笑ってしまいました。
中身もほぼ予想される通りなんだけど、なんで桜クンが入れ替わるんじゃないの?と思ったら、そういうネタにもっていくためなのねーという
お約束破りなパターンを用意していたりするところも何気にほめていいんじゃないでしょうか。
それと、マイキャラに****を着せたがる作者って、もうどうしようもないっちゅーか(笑)
あと、前作のミニスカたくしあげドクロちゃんイラストの如く、動物的な餌(半裸な***ちゃんとか、巻頭のしたちちイラストとか)は相変わらずたーんとまかれていますなあ。
まあ、過剰なまでの読者サービスぶりは嫌いじゃないかも。寧ろ微笑ましい。
ドクロちゃんとえっちと撲殺ぴぴるぴってのは、ストーリー上意味があるとかないとかそういったものを超越しているので、この作品はいくらでも動物的な餌をまいてもいいんです。
だって、作品の存在意義の根幹なんですよ?。撲殺しないドクロちゃんはドクロちゃんにあらず、えっちなシチュエーションに遭遇しない桜クンは桜クンにあらず、なのです。
もう大いに遠慮なくどんどんやんなさい。それこそが『撲殺天使ドクロちゃん』なーのーだーかーらー。
『学校を出よう!3 The Laughing Bootleg』 谷川流 (電撃文庫)
舞台は再び第三EMP学園。
平和なひとときにのんびりしていた光明寺茉衣子の元に「密室状況で消えてしまった同居人を捜してほしい」という少女がやって来て…。
学校を出ようシリーズ3作目にして、1作目の正式な続編。
一見してミステリライクな導入。まあ、EMP能力という何でもアリな力が存在する世界での話なので、
あくまで形がそれっぽいというだけなのだが、それでもミステリ風味の物言いやロジックがいくつかあって、そのへんがちょっと面白かったです。
作品の前半部分は消失の謎の解明にあてられていて、後半はその解決をふまえた上で大騒動が発生。この騒動がすごく楽しい。
光明寺茉衣子や宮野の愉快なキャラクタぶりがいかんなく発揮されているし、
喜劇的な展開で笑わせてくれた上にラストはしっとりした爽やかな締め方をしてくれて、読後感がとても良いです。
あと、何気に百合なところも見所の1つかも(笑)
シリーズ1巻を読んだときに感じた不満点、ストーリー展開のテンポの悪さとか、主要キャラのつながり方のよそよそしさとか、がかなり解消されているのもいい感じです。
特に1の語り手だった高崎佳由季が周囲に(宮野や真琴に対して)作っている壁が作品やキャラクタに感情移入するのに邪魔だったんですよねえ。
今回の実質主人公は光明寺茉衣子で、外見は傲岸不遜でクールな美少女…と見えるように意識しているという内面の部分を描くことで好感度がぐっと上がるし、
騒動に巻き込まれて対処できずにあたふたしている茉衣子の姿はとてもかわいらしくて。
宮野との出会いを語ってるところや、何だかんだいって必要以上に宮野を意識しているところなんか萌えー。
1が気にいらなくてだめぽと思ってる人も、3までは読んでみることをおすすめ。
面白いし、ラストのたたみ方が綺麗で、わたしはかなり好きです。
もう1つ。類の事件の解決において語られる事柄が、わたし自身にとって致命的なところにド直球でぶちこまれてきて、息がとまりそうでした。
…それを解決するには一体どうすればいいんでしょうね(ひとりごと)
『天正マクベス』 山田正紀 (原書房ミステリーリーグ)
劇作家シェイクスピア(シャグスペア)が若い頃に宣教師として日本に来ていたという設定で、
織田信耀(信長の甥)を主人公に描いた歴史絵巻ミステリ。
シャグスペアが戯曲として書いたものを翻訳したという風な書かれ方をしており、時代がかった台詞や描写などに最初は少し戸惑ったものの、
慣れてくるとそれらがとても味わい深く、最後まで楽しんで読めました。
本格ミステリとしては、トリックだけ抜き出せば、そんなネター?と思わず吹いてしまうような類のものなんですが、
時代ものの舞台設定への絡ませ方が上手だなあと感心させられてしまいました。
信耀がすごくかっこよかったり、シャグスペアの異人さんっぽさがかわいかったりするのもポイント高し。
歴史ミステリとしてどうとかシェイクスピア作品との絡みというのはさっぱりわからないのだけど、
別にそのへんの知識がなくても普通に時代ものミステリとして面白く読めると思います。
『億千万の人間CMスキャンダル』 清涼院流水 (幻冬舎文庫)
素人が専用のアミューズメントマシンでとった人間CMを放送するテレビ番組「ゴールデンU」が全国的に大人気になっていた。
木村彰一はその番組の中で自分自身のCMを目撃してしまう。
名前は木村彰一、そこに写っていたのは間違いなく自分、しかし自分では人間CMをとったことはないし番組に応募した記憶もない。
混乱する木村彰一に追い討ちをかけるように、なんと木村彰一のCMがその日のベストに選ばれてしまい…
途中までは意外に悪くないかも?と思って読んでました…。ごめんなさい。清涼院流水に対しての認識がまだまだ甘かったです。
「ゴールデンU」というテレビ番組の設定もなかなか面白く、一体何が起こっているんだろうと興味深く読んでいたのに、
あまりの不人気ぶりに短期間で雑誌連歳打ち切りになったマンガのような唐突で投げやりなラストに呆然としてしまいました。
な、なんなんでしょうね、これ。
ああ、いや、今さら流水大説にそんな常識論が通じないのは理解しているつもりではいたんですが、それにしたってこの締め方は……。
わずか200ページの薄い文庫本のくせに、そのうち40ページが解説だったりするのも常識外れのような、
でも、もしかしたら、本当は解説すらも流水大説の一部なんじゃなかろうかと思ったり思わなかったりして。わけわかんねー。
『四季 春』 森博嗣 (講談社ノベルス)
『すべてがFになる』に登場して以降、森ミステリィの影のヒロインともいうべき存在であった天才・真賀田四季を描く、シリーズ第1作目。
この作品(シリーズ)はS&MシリーズとVシリーズの全20冊を読んできた人たちに向けての、森ミステリィ<解答編>みたいなものなのかなあと感じました。
Vシリーズの終章付近で残された謎の答えが明かされていてなるほどなあと感心したり、
ここがこうつながってこのキャラクタも関係してくるんだへーなどという興味深さはあったものの、
密室殺人などのミステリ要素はかなり適当だし、四季や彼女を取り巻くキャラクタたちの言動にぴんとくるものもあんまりなくて、
森博嗣ファン(それも2シリーズ20冊読破した)以外にはおすすめできない感じですね。
単純に作品のボリュームの問題もあって、これまでの森作品と比較してそんなに面白いとは言えなかったりもするんですけど、
幼い少女でも真賀田四季が真賀田四季でしかないという描き方や、
これまで謎になっていたものが少しずつ明かされていくのが楽しかったりもするし、そのへんは別にいいかなーと。
ただし、四季の主観・視点で書くことはこの先もないでしょうから
(アウトプットが四季の思考にまったく追いつかないという設定である以上、絶対に四季の主観描写は有り得ないと確信してます)
犀川創平やVシリーズの連中たちのようなキャラクタの魅力を真賀田四季に付与するのはちょっと難しいかもしれません。
そんな天才・真賀田四季を一体どう描いていくのか。先が楽しみです。