本読み的 死人と狂人たち 2003/11
03/11/01
原書房ミステリーリーグ主催の『本格ミステリベスト10』ネット投票に投票してきました。

1位 『「アリス・ミラー城」殺人事件』 北山猛邦 (講談社ノベルス)
2位 『神のロジック 人間のマジック』 西澤保彦 (文藝春秋・本格ミステリマスターズ)
3位 『月の扉』 石持浅海 (光文社カッパノベルス)
4位 『ハードフェアリーズ』 生垣真太郎 (講談社ノベルス)
5位 『林真紅郎と五つの謎』 乾くるみ (光文社カッパノベルス)

となりました。去年の投票では『人魚とミノタウロス』氷川透を1位にしてしまって「他に氷川を1位にしてる人いねーよ」とちょっと恥ずかしかったのですが、 なんだか今年もそうなりそうな予感です(苦笑)。 でも、いいんだ。誰が何と言おうがアリスミラーが今年の1等賞なのです。


03/11/08
11/02に早稲田大学で行われた貫井徳郎講演会に行ってきました。 メモ程度ですが簡単に日記の方にまとめてあります。 一緒に行った「コンバンワチキンカレーヨ再」の元さんの質問で、 貫井氏から「明詞シリーズの3作目は館もの予定、でも執筆開始は未定」との情報が出たのが要注目ですね。 いつ書けるかはわからないとおっしゃってましたが、館もの楽しみです。講談社さん早めに何とかしてください(笑)

わたしも参加している「mix deepest」の今月のクロスレビューが発表されてます。 第3回『砂漠の薔薇』飛鳥部勝則。 第4回の課題図書は『ダブ(エ)ストン街道』です。

『慟哭』 貫井徳郎 (創元推理文庫)
幼女誘拐殺人事件が発生。佐伯は事件に心を痛めながらも最善をつくして捜査本部の指揮をとるが、 警察内の対立やマスコミの勇み足報道などに悩まされ、また捜査は遅々として進まない。 そして、虚無感に苛まれながら日々を無為に過ごす男がいた。自らの心の空洞を埋めるために彼は宗教に傾倒していきつつあった。
読み始めてすぐのかなり早い段階で作品の構成が読めてしまいました。 最後まで結局その確信の通りに展開してしまい、そのへん擦れたミステリファンの悲哀があったりなかったりです。 ただ、リーダビリティが非常に高い作品で文章量が多いにも関わらず引っ掛かることなくすいすい読めたり、 ミステリとしての仕掛けの部分や作品の主題が読者にとても伝わりやすいかたちで書かれていることもあって、 これはとても良い本格ミステリだと思いました。前情報が何もない状態で読んでいればもっと評価が高かったかもしれません。 本格ミステリ初心者に特にオススメしたい作品。

『砂漠の薔薇』 飛鳥部勝則 (光文社文庫)
荒れ果てた洋館で女子高生の首なし死体が発見された。彼女の友人であった美奈は死体を発見した画家の尚子と共に事件の闇の部分へと踏み込んでゆく。 その洋館に越してきたイカれた彫刻家、自称刑事の謎めいた男、行方不明のもう1人の女子高生、かつていじめられ今はいじめる立場に回った女子高生。 すべては妖しく絡み合い、その行く先には一体何が…
本格ミステリのポイントは4つくらいあって(以下ネタバレ反転) 机上の空論ではあるものの首切りトリックはなかなかに面白かったし、 前半の美奈と尚子の対話におけるちぐはぐさや妙に断定的な物言いが告発の意図をもっていたというのは感心したし、 彫刻家殺害における叙述もまんまと誤読させられてしまった。 以上の点は本格としてもなかなか技巧がこらされていて評価できるのですが、 もう1つのミスディレクションがあまりにもお粗末なおかげで、事件の真相の一端がほとんど確信できてしまうために、 最終的なサプライズが弱まってしまっているんですよね。勿体無いなあ。 あと、丁寧に解説しすぎでかえってぐだぐだになっているような気もします。最後は放り投げ気味でもよかったかもしれません。
ドライな感覚や狂気の1歩手前でふらふらしているようなキャラクタたち(すでに逝っちゃっているキャラクタもいるけど)にはあまり感情移入もできず、 女子高生が幾人も出てくるわりにはちっとも萌えませんでした。 悪くはないと思いますが、わたしの好みではないです。

『密林』 鳥飼否宇 (角川文庫)
角川文庫55周年記念書き下ろし作品。 沖縄のやんばるの森(米軍演習場内)を舞台に、昆虫マニアの凸凹コンビ、 脱走したアメリカ兵、地元のハンターが繰り広げる宝物争奪サバイバルアドベンチャー。
死体消失や死因の推理といったミステリ的な要素もあるにはありますが、 暗号解読や大自然からの脱出行など本格ミステリというよりは冒険小説といった趣の作品です。 登場人物も少なめで内容もこじんまりとしているものの、なかなかサスペンスフルな展開で面白かった。 かなり緊迫感のあるはずのシーンで妙に間の抜けた描写があったり、 昆虫マニアたちの尋常ではないキャラクタ性がちらほら出ていてるあたりも変で良い。

『絵の中の殺人』 奥田哲也 (講談社文庫)
元プロ野球選手の輝彦は美術学校の事務員に採用された。 その歓迎会が行われた翌朝、輝彦の先輩が死体となって発見される。いまだ解決していない1年前の理事長の死と関係はあるのか? 学校と同僚を守るために、輝彦は素人なりに調査と推理に乗り出す。
奇抜なトリックがあったり推理を重ねたりするところもあるものの、 謎のポイントがあまりはっきりしていなくて本格というには今一つとらえどころがないです。 身近に起きてしまった事件に対して素人探偵が右往左往しているだけなので、 読者として推理できる余地があまりないんですよね。 奥田哲也の、姿勢は大真面目なのになぜか笑えてしまうという作風もあいまって、軽めのユーモアミステリという趣でした。 わたしがこれまでに読んだ奥田哲也作品『赤い棺』『エンド・クレジット』『冥王の花嫁』の大胆不敵で超絶馬鹿な秘技と比較すると、 ミステリとしての味わいは地味かなあ。変なトリックも使い方次第では面白くなりそうな気がするだけにちょっと残念。 でも、語り手の輝彦をはじめとしてキャラクタたちがいい味だしていて、読んでてなんだか心がなごみました。お話としてはわりと面白かったかも。

『鳥肌』 松岡弘一 (光文社カッパノベルス)
姉・咲子の殺害現場で凶器をもって自失していた悦子。2年間の精神病院暮らしをへて退院した悦子を待っていたのは、 痴呆のすすんだ父、その愛人、かつての恋人で悦子を裏切り姉の夫になった男の3人。 安寧のかけらもない家の中では陰湿な出来事が相次いで悦子を襲う。 一方、連続猟奇殺人鬼は彼の殺人を模倣した事件の真犯人への報復をうかがっていた。
何が起こっているのか窺い知れない不可解さはまあいいとしても、見え隠れする悪意と欺瞞に満ちた人間関係や、 悦子を襲う陰湿な嫌がらせが極めて醜悪で不快です。読むのが苦痛でした。 それだけでももう許せないのに、さらに追い討ちをかけるようなミステリとしてのオチが待っていて、大地雷というか超地雷というか。 …うう、わたしは結構バカミスが好きだったりしますし、くだらないトリックもわりと笑って許せてしまえる性質なのでありますが、 作品が不快きわまる内容なだけにこのオチは脱力感5倍増徒労感10倍増というところでした。いくらなんでもこれは駄目だー。 こんなんで「構想10年。奇跡が起きた。1秒で答えが出た」っていうんだから、ホントもう何をどうつっこんでいいものやら。 良い子はこんなの読んじゃダメです。

『NOVEL21 少年の時間』 (徳間デュアル文庫)
アンソロジー集。短編が6本と、巻末に西澤保彦・山田正紀・大森望の対談の前半が収録されている。 (対談の後半部分は姉妹編の『少女の空間』に収録)
全体的にSF濃度高め。徳間デュアルの本だなあという感じです。好きな作家さんが書いているなら読んでもいいんじゃないかな。
上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」、上遠野節らしからぬ軽やかさが珍しい、意外にSFしてると思う。
菅浩江「夜を駆けるドギー」、瑞々しい痛さと爽やかなラストがたいへん良い。菅さん優しいなあ。
平山夢明「テロルの創世」、んー、普通。
杉本蓮「蓼食う虫」、何をも犠牲にしてでも手にいれたいものというのは誰にでもあるのかもしれないし、他人がそれを認めてくれるとは限らないということだあね。わりと良い。
西澤保彦「ぼくが彼女にしたこと」、西澤さんにかかれば幼い頃の淡い思い出がこうなっちゃうのよと、捻くれまくったひどい話だー。でも面白い。
山田正紀「ゼリービーンズの日々」、よくわかりません。


03/11/09
『君の嘘、伝説の君』 清水マリコ (MF文庫J)
操(中二、男の子)は授業で読書感想文の音読をさせられてしまう。 不機嫌になる操だったが、クラスメートの女の子からその作文が欲しいと言われ…。 操は伝説と魔女、そして嘘をめぐる物語にとりこまれていく。
過ぎ行く風はセピア色。どこかに置き忘れてきてしまったような街の風景。 自分がかつてそこにいたのか、錯覚でそんな気持ちになっているだけなのかわからないけれど、 古びた街の片隅に自分がいて他に人が全然いない風の音しか聞こえて来ない。 そんなときにふと少女があらわれてはかなげに笑いでもしたら、誰でも魔法にかかってしまうと思う。 子供たちをたぶらかしてどこかへ連れていこうとするのは魔女の証拠ですよ。 でも、誘惑には抗えないし、お願いされたらお兄ちゃんにでもなっちゃう。そう。そんな嘘つきは妹にしてしまうがいい。 あと、手をつないであてどなく歩いてみたりするくだりがとても心地よかったりするわけで。 不思議で嘘つきでちょっと痛い、そんなお話です。好きだなあ。

『涼宮ハルヒの溜息』 谷川流 (角川スニーカー文庫)
「だからね、みくるちゃん。目からビームくらい出しなさい!」  涼宮ハルヒ率いるSOS団は文化祭に向けて自主映画をとることになった。 1人元気に張りきる大監督のハルヒ嬢に振り回され、主演女優に指名された朝比奈みくるが泣きそうになりながら頑張ります。
いやあ、それにしても、表紙のみくるたんには萌えすぎて眩暈をおこしそうな。 萌え担当だとはっきり明言させ、あからさまに萌え様式をこれでもかとつめこんだ典型的萌えキャラなのにも関わらず、 朝比奈みくるの破壊力たるや凄まじく、ヒロインであるはずの涼宮ハルヒがただの引き立て役になってしまっていて、 一体どちらが真のヒロインなのやらという有り様です。 webでの検索頻度からいっても朝比奈みくるの方が圧倒的に人気があるような感じです。 今作はとくにハルヒのわがままお姫様ぶりが際立っているために、ただでさえあまり高くなさげなハルヒ人気がさらに下がった予感。 わたしの中でもハルヒ株は大暴落です。もうちょっとキョンがハルヒを説教してやんなきゃいけないような気が。
それと、新キャラの鶴屋さんが結構いい感じです。作中でちらとふれられていた草野球の話は次回の短編集あたりに収録されるのかな?  まあ、そんなこんなでハルヒたちのバカ騒ぎぶりは面白いですねと。
SF的なガジェットも前作からの文脈を引っ張りつつも、観察者たちの対立軸をほのめかして別の解釈もあるよとにおわせているあたりがなかなか興味深い。 単なるキャラ物になってはつまらないので、SF魂とキャラ物の面白さをバランスよくおりまぜつつ、シリーズを続けていってくれれば嬉しい。

『天国に涙はいらない 9 ふんどし汁繁盛記』 佐藤ケイ (電撃文庫)
各キャラクタにスポットを当てた短編が4編収録されたシリーズ初の短編集。 各話それぞれ順に賀茂編、菜間編、律子編、葉子編となっております。各話にアブデルと閻魔の対談解説つき。
「肉人形恥辱の体育倉庫」、影は薄くても一応シリーズの主人公なんだし、 今さら賀茂を短編の主役にせんでも…と思ったんだけど、こんなオチをやりたかったのか…。あまりのおバカぶりに脱力するしか。
「ふんどし汁繁盛記」、一見人情話風。その実…。つい笑っちゃうんだけど、アホです下品です下劣です。
「誇りの代償」、第1巻からのレギュラーにも関わらずまったく底の知れない律ちゃんがついに主役ですよー。 しかもハードボイルド風。しかし…。これ、メタフィクション的な趣向をこらしていると言えなくもないよなあ。 アブデルの解説には思わず納得してしまいそうになりましたよ。
「五十年恋歌念仏<お梅狂乱>」、この短編集の中で唯一の良心。 お気楽なほのぼのとしたムードから始まって、シリアスな展開へ、最後はぐっとくるいい話。 バカなノリや萌えも面白いけれど、こういういい話もたまにあるのが「天涙」の素晴らしいところです。 ちょっと目をうるませながら余韻にひたっていたら、アブデルと閻魔の解説がそれを台無しにしてくれやがりました。 ぐああ、こいつら超ぶん殴ってやりたい。

『マリア様がみてる いばらの森』 今野緒雪 (コバルト文庫)
リリアン女学園を舞台にしたと思しき自伝的小説が出版され、その作者が白薔薇さまではないかとの噂が学園を騒がせていた。 白薔薇さまの過去に一体何が? そして、小説の作者の正体は?
これでマリみてを読むのも3冊目。周りで評判の良い作品なのでちょっと期待してました。 確かにキャラクタの描き方は丁寧だし、今作に関しては「作者の正体を探る」というミステリライクな話の引っ張り方をしていて そこそこ面白いことは面白いんですが、そんなにいいかなあ?
正直なところ「マリみて」の何が多くの人の興味を惹きつけているのか、わたしにはよくわかりません。 元から少女小説を愛読していたとか学園ものが好きだとかいうのならともかく、 普段ミステリを愛好しているような人たちがこぞって「マリみて」を読んじゃう理由って一体何なんでしょうね。 わたしも、祐巳かわいいなあとかロサギガンティアさまええのう蔦子さんにもっと出番をおおとか思ったり思わなかったりしてますけど、 皆さんもそんな読み方をしているんでしょうか。
「いばらの森」はそこそこ面白かったです。 「白き花びら」のようなセンシティブな少女像はちょっと苦手なので、楽しめませんでした。 白薔薇さまはもうちょっと超然としてて欲しかったのに…。またトラウマなのか。 ええっと、いままでの3冊の中では評価低めかも。わたしの好みに合ってないです。白薔薇さまは好きなのにー。無念。

『暗夜鬼譚 空蝉挽歌』(壱〜伍、全5冊) 瀬川貴次 (集英社スーパーファンタジー文庫)
平安の都を舞台に、貴族の青年・夏樹と若き陰陽師・一条が活躍する伝奇ファンタジー。現在はコバルト文庫にてシリーズ継続中。 左大臣家を襲う恐ろしい龍馬。一条を救うために冥府に向かう夏樹。怪異の黒幕たる久継と夏樹の出会い。 過去の裏切りと久継の復讐の行きつく先は…
長い間このシリーズから離れていたのですが、スーパーファンタジー文庫のレーベル自体が廃刊になって久しく、 いずれ入手困難になるだろうということもあって、まだ買えるうちに読んでおこうと思い立ちました。
敵役の久継に対しての夏樹の煮え切らない態度にイライラしたり、一条の活躍が少なかったりという不満もいくらかあるものの、 さすがに5冊もかけただけあって久継の魅力は十二分に描けている感じ。久継の存在感にすべてが霞んでいる気さえします。 あおえのボケに加えしろきが絡んでくるところも妙に笑えるし、勇猛果敢な伊勢の君に助けられる賀茂の権博士というところには萌えました。 まあ、とりあえず、本が入手不可能になる前に読むのを再開できてよかったよかった。

『暗夜鬼譚 狐火恋慕』(前後編) 瀬川貴次 (集英社スーパーファンタジー文庫)
恋の悩みを何でも解決してくれるという噂の尼僧が御所に招かれていた。その尼と偶然出会ってから、一条の様子がおかしくなる。 一方、夏樹とともに狩りに出かけた者が次々と不審な死を遂げ…
いやはや、承香殿の女御の情念には恐れ入りますわい。悪女萌えな人にはたまらなそうなヨカン。 『空蝉挽歌』に続き一条がへたれており、そのぶん賀茂の権博士に活劇が回っていて素敵です。 っていうか、自分が賀茂の権博士萌えだということにようやく気づきました。 やっぱり、伊勢の君は賀茂の権博士とくっついた方がいいと思うんだけどなー。 幼なじみっていうのは確かに強いけれど、夏樹に気持ちを気づいてもらえないままの方が萌えるっていうか、 もう1人くらい姫君が出て来てもいいような気が。 そんなわけで今回の月姫は結構お気に入り。人外との恋にロマンティックなものを感じちゃうんですよー。 あと、あおえと伊勢の君の恋女房トークには爆笑。


03/11/15
講談社ノベルスの新刊で霧舎学園シリーズの新作が11ヶ月ぶりに発売されました。 七月編と八月編の2冊同時発売はともかくとして特典つきの限定プレミアム版発売とか、 八月編の巻頭に雑誌グラビア風イラストを配してみたりと、いろんな意味ですごいです。 それで、八月編にも収録されている琴葉イラストの壁紙がダウンロードできます。 →こちら。 早速マイPCの壁紙にしてしまいました。積極的に踊らされてます(笑)

『七月は織姫と彦星の交換殺人』 霧舎巧 (講談社ノベルス)
棚彦のもとに笹乙女委員会なるものから謎の短冊が届いた。 その頃、琴葉はまたもや死体を発見してしまい、その死体の背中には棚彦が受け取ったものとよく似た短冊が…。 霧舎学園シリーズ第4作目。今回のテーマは交換殺人。
主要キャラクタ以外では五月編に出てきた芸能人たちが再登場。最初はどんなキャラだったか咄嗟には思い出せず、ちょっと焦りました。 五月編を詠んでから1年以上たったということもあるし、そもそもへたれなキャラクタ作りのおかげで全然印象に残っていないからということもありそうです。 Hさんって誰? 五月に死んだ人?なんて考えちゃいましたよ。七月編詠んでいるうちに思い出せてよかったです。
内容は、まあいつもの霧舎ミステリでした。 タイトルで交換殺人だと堂々とかかげた上で1ひねりさせたネタはそれなりに魅力があると思うのですが、 そのトリックをお話として成り立たせるための手腕がどうにもぎこちなくて、 キャラクタの動き(特に犯人の動き方)に無理が生じてしまっているような。 ミステリとして成り立たせるための作者の要請でしかキャラクタが動いていなくて、どうしても不自然になる……というツッコミは 実はこれまでの霧舎ミステリ全部に共通して言えることで、そのへんの嘘くささ作為くささを読者としてどれくらい許容できるかが、 霧舎ミステリが読めるかどうかの分岐点なんだろうなと思います。
キャラものとしてもつっこみどころは多々あるものの、 講談社ノベルスというレーベルでこのキャラクタにこの設定でミステリをやろうという、 そのアホな情熱だけで笑って許せてしまうので、激しく空回りしてようが、あんまりキャラ萌えできなかろうが、 これからも生あたたかい目で見守っていこうと思います。 キャラでわりとわたしの好みなのは頭木くん。今回のの子先輩がいいと思った(全然出番なかったけど、その理由がかわいい)。 倫子さんは嫌ーい。外野としてうるさ過ぎだと思います。そのへんの霧舎氏のラブコメ観にかなり疑問があったりして。 あと、表紙の浴衣の琴葉たんは萌えますな。

『八月は一夜限りの心霊探偵』 霧舎巧 (講談社ノベルス)
先月、カメラマンにスカウトされた琴葉は漫画誌でグラビアデビューを飾ってしまう。 夏休みということで、学校の教師から誘われ伊豆の山奥に遊びにきた琴葉や棚彦たちは肝だめし大会をやることになって…。 霧舎学園シリーズ第5作目。今回のテーマは心霊探偵。
表紙は海で遊んでいる水着の琴葉たんですが作品の舞台は山です。エピローグあたりで海に遊びにいくのかと思いきやそれもないでやんの。詐欺だー。 と、何はともあれ、巻頭に配されたイラストが笑いを誘いますです。このグラビアページはあの『迷路館の殺人』を彷彿とさせますね!(違)  絵師の方も相当気合いのはいった絵を描かれていてますし、もうやり過ぎなくらいの遊び心には感服いたしますよ。 でも、エッチなのはいけないと思います。
意外と面白かったです。心霊探偵といってもさすがに降霊会とかをやるわけではなく、肝だめしをきっかけにした夏の夜の大混乱という趣で一体何が起こるのか先がさっぱり読めなくて、 しかも、何気なく書かれていて読み流した箇所が後になって伏線だったとわかることも1回や2回ではなく、 多少ごちゃごちゃしすぎな感はあるものの、解決編に突入する1歩手前の混乱が最高潮に達した電話のシーンではあまりの展開に呆然としてしまうくらい。 相変わらずやってることは無茶苦茶なんですが、サプライズにまんまとひっかかったし、解決編はちゃんと落としているし、微妙だけどミステリとしてもわりといいんじゃないかなあ。 あかずの扉研シリーズとのリンクで(ネタバレ反転) 冒頭に不吉な予言をしてくれるのが咲枝嬢で、展開上のミスリードにもなっている温泉でワッキーに桶をぶつけた”ひろみちゃん”が 由井広美(2ちゃんでパンティラネタばかり繰り返されるユイたん)ですな。 予言少女の正体はすぐにわかったのに、同じ列車に乗っていて行き先も琴葉たちと同じ温泉地であるというところにまで考えがまわらなかったのは、やられたって感じです。
レギュラーキャラクタの役割もはっきりしてきて人物相関図が複雑になってきて、そのへんでも面白くなってきました。 さすがに5冊も読めば琴葉たんたちに愛着がわいてきたし、素直な気持ちで続きが読みたくなってきました。霧舎学園にはまったのかも(笑)


03/11/23
「Locked Room」さんからの提案もあって、 「第2回メフィスト賞作家ファン度調査」の準備をしてました。 cgiの改良と作品リストの作成はほぼ終わり、あとはデータを打ちこむだけ(これがまた面倒なんですが(苦笑))なので、12月にはなんとか間に合いそうです。
一応作品リストをサイトにあげておきますので、もし抜けている作品や調査についての質問等があればご連絡ください。 →「第2回メフィスト賞作家ファン度調査」作品一覧
なお、森博嗣氏の著書については小説および童話に限定してあります。

リスト作成にあたってキセンさん@「未明の研究 - Study of Mystery&Mephisto」に協力いただきました。 とても助かりました。ありがとうございます。

ファン度調査の準備に加え旅行と帰省が立て続けてにあって忙しいので、 感想文書きはしばらくお休みします。


03/11/29
「第2回メフィスト賞作家ファン度調査」をはじめました。
メフィスト賞大好きという方だけでなく、森博嗣や舞城王太郎や西尾維新らのメフィスト賞受賞作家の本をいくつか読んだだけというような薄い方でも、 どしどし回答していただけるとありがたいです。 人気投票とかではなく、どれだけ読まれているのか?という調査なので気軽にご参加ください。

それと、通常の得票順表示とは別に作家別に並べて表示することも出来るようにしました。 回答するときにはこっちを使った方が便利かもしれません。
ちなみにリッパーさんの結果一覧はこちら。148/208でした。


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