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▼キャベツの種

それは、うららかな昼下がりのことでした。
小さな国の、小さなお城の、ちょっといばりんぼうな王様が、ふと思ったのです。
「あれ?キャベツの種って、どんなのだっけ?」
王様は、大臣に聞いてみることにしました。
「おい。キャベツの種って、どんなのだっけ?」
大臣は、聞かれて首をかしげます。わかりませんと言いかけて、でも待てよ、と考えました。
大臣は、賢くなくてはいけません。
わからないことがあっては、良くないと、そう思いました。
だから、大臣はせき払いをして、しかめっ面しくこう言ったのです。
「王様。わからないことは、調べると良いのです。考えるのです。簡単に人に聞いては、いけません」
王様はそう言われて、なるほど、そうかと思いました。
「じゃあ、キャベツをくれ。葉をむいて、種を探してみるから」
王様は、ぐいと手の平を大臣に差し出しました。
すると、大臣は言いました。
「キャベツなら、コックさんのところにあります」
王様は、コックさんのところへ行きました。
「おい、コックさん。キャベツの種を探すから、キャベツをくれ」
コックさんはそう言われて、ちょっと困ってしまいました。
コックさんはいつもキャベツをむいていましたが、その中に種など見つけたことは、一度もなかったからです。
でも、種なんてありません、とは言いたくありませんでした。
なぜかと聞かれると、困ると思ったからです。
だからコックさんは、少しとぼけてこう言いました。
「王様。今夜の料理はたまご料理なので、ここにキャベツはありません。畑に行って下さい。畑には、いま山のように、キャベツができています」
王様は、おもてのキャベツ畑に、出かけて行きました。

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なるほど。そこには確かに、キャベツがたくさんできていました。
「よし、種を探そう」
王様は、土の上に腰をおろすと、早速キャベツをむきはじめました。
ぱりぱり、ぺりり。
王様は、キャベツの葉を、どんどんむいていきます。
三枚むいて、八枚むいて…とうとう、最後の一枚をむいた時。
王様はそこに、青くて小さな、キラキラ光るビー玉のような種を見つけたのでした。
「おお!これは、きれいだ。良いものを見つけたぞ」
王様は、嬉しくなりました。
嬉しくなったので、そばを通りかかった国民を、みんな呼び集めました
「これがキャベツの種だ!きれいだなあ!おい、みんなでこれを集めろ!種ひと粒と、金貨一枚を交換してやるぞ!」
きゃべつ畑は、大混乱になりました。
ぱりぱり、ぺりり。
ぱりぱり、ぺりり。
みんながキャベツをむいています。
「ハズレ!」
「これも、ハズレ!」
どのキャベツにも、種などはありませんでした。
「おかしいな。キャベツには、当たりとハズレがあるのか?」
王様は首をかしげます。
するとそこに、騒ぎを聞き付けたコックさんがやって来ました。
「おお、コックさん。ほら、種が見つかったよ。どうだ、きれいだろう?」
王様は最初に見つけた、ひと粒の種を自慢そうにコックさんに見せました。
コックさんも首をかしげます。
「ああ、確かにキャベツの種ですね」
さらに大臣もやって来ました。
「おお、大臣。見つかったよ。これがキャベツの種だ」
王様は、大臣にも青いそれを見せました。
「ああ、これです、これ。確かにキャベツの種ですね」
大臣も、首をかしげながら言いました。
キャベツの種。これって、本当に、キャベツの種?
王様以外の誰もがそう思っていた時です。
王様の手が、つるりと滑りました。
「おっと、危ない!」
王様は、落とすまいとして、思わずそれをグウにして握りしめました。
ぷすり。
その時です。
王様の爪が、青い種に突き刺さりました。
その時です。
「あれを見ろ!」
誰かが叫びました。
空を突き破って、大きな指が現れたのです。
これって、本当にキャベツの種?
王様が、空を突き破った指を見上げました。
大臣とコックさんも、それを見上げました。
「ああ、だから王様!いつも爪を短く切りなさいと言っているのに!」
…これって、本当に、キャベツの種?
> 本当はお金で買えないもの。人の良心と緑の大地。でしょ?
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