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▼二人のうたうたい

「ーさて、次のニュースです。
本日午後7時、アメリカ・ニューヨークで、いま全米チャート1位の、サウザンド・ハミルトン氏が野外コンサートを行いました。
興奮さめやらぬ会場に、中継がつながっています。
現場の、チュクヌワールさん?」
「はい。こちら、チュクヌワールです。ご覧ください!この溢れるばかりの、人間、人間、人間!
コンサート終了から、1時間程たった現在、一向に人々は帰る気配を見せません。
あ!カメラさん?大丈夫ですか?カメラさん?」
「…大混乱のようですねえ。チュクヌワールさん?」
「はい。大変失礼いたしました。
ここに居ては危険なので、私達は場所を移したいと思います。
あ!ただいま、情報が入りました!サウザンド氏が、裏の通りから出てくるようです!
インタビューをしたいと思います!」
「チュクヌワールさん?
…あ、カメラが大きく揺れていますね。走っているのでしょうか?
チュクヌワールさん?」
「ごらんください!サウザンド氏です!
取り巻きに囲まれて、いま、車に向かっています!
サウザンドさん!サウザンドさん!」
「…どこの局の人?見ない顔だなあ」
「サウザンドさん!お疲れのところ、すみません!少し、お話いただけますか?」
「…いいけど。本当に、少しだよ」
「ありがとうございます!カメラさん、こっちこっち!」
「ああ、右から撮って。おれ、右がイイんだ」
「はい。では、よろしいですか?」
「手早くね」
「では、単刀直入にうかがいます。ご友人の、ファウスト氏のお話を、ぜひお聞かせください」
「ファウスト?ああ、昔おれと組んで歌ってたやつね。なんで?あいつ、変なやつだよ?何かやったの?」
「ぜひ、お聞かせください!」
「ああ…ちょっと!ライト強すぎるよ!
そうだな…ファウスト…。
あいつは…そう。あいつは。いつからか、タワーに登るようになったんだ…」

タワー。高層ビル。
とにかく、ヤツは高いところに登った。
そして、必ず外に出るんだ。
それは、足もすくむような窓の梁だったり、立ち入りが禁じられた屋上の柵の上だったりした。
強風でヤツの髪はいつもバサバサだった。
ひざと言わず、ケツまで破れたジーンズに、丈の長い白いシャツ。
そうだ。
その白いシャツがはためいて、おれには時々天使の羽が見えたね。
ヤツは今にも飛びそうだったよ。
そしていつもいつも、ただ何にもない青い空に向かって、歌をうたうんだ。
以前はおれと一緒に、地下鉄とか、繁華街の路地で歌っていたんだけどなあ。
そう、ヤツはある時急に、街で歌うのをやめた。
多くの人々に叫びかけるのをやめた。
ただ、空に向かって歌うことにしたのさ。
ただ、何もない、ぽっかりと青いだけの空に。

「だから、縁を切って、おさらばさ。
ねえ、ヤツは今、何やってんの?おれといれば、ビッグになれたのにな。
ねえ。もういい?」
「どうもありがとうございました。以上、ファウスト氏のご友人、サウザンドさんのコメントでした!」
「…ファウストの友人?
あんたら、おれのコンサートとおれを撮りに来たんじゃないの? なんで、あんな変人の話しばっかしてんの?」
「では、回線をメインスタジオにお返しします。ジグジヌオさん?」
「はい、どうもありがとうございました。惑星115N98NYから、中継はチュクヌワールさんでした。
では、次のニュースです。」
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