今朝、オレが朝の4時起きで頑張って作った二人分の弁当の前で最強で最凶のお兄様が何かしてました。
本人、何もしてないといってたし弁当にも異変は無かったので特に気にしない事にしましたが…甘かったです。
何であの時もっと注意しなかったんだろう……


クッキングパニック■記憶喪失編■


 犬飼は不機嫌だった。
先日、ようやくゲットする事が出来た天国と二人で昼食を食べる筈だったのに邪魔(野球部の一年達+沢松)がいるのだ。
しかも、その邪魔者どもは犬飼と天国の間に入り込んで二人の距離を離している。
それだけでもムカツクと言うのに邪魔者その1である兎丸が天国にベタベタと抱きついているのだ。
天国の方も嫌がっていない(実は引き離すのを諦めただけ)。不機嫌になるなという方が無理である。
 「犬飼君、人生いつも順風満帆とは限りませんよ」
そう言う邪魔者その2である親友が憎い。
今日の部活で暴投に見せかけてボールをぶつけてやろなどと物騒な事を考えながら、兎丸に抱きつかれたままの天国に目を向ける。
 「ねえねえ、兄ちゃん。弁当のおかずどれか頂戴」
 「またかよ…オマエ、何でいつもオレの弁当欲しがるんだよ?」
 「だっておいしいもん。ねえ、兄ちゃんいいでしょう?」
 「…しゃーねぇな、ホレ」
天国は自分の弁当箱から卵焼きを取り出すと、兎丸の口の中に放り込んでやった。
それが犬飼の機嫌を更に急降下させたのは言うまでも無い。
 「(あのチビ(怒)何で天国も断らないんだよ? とりあえず、夜にお仕置きだな)」
また物騒な事を考えつつ、兎丸を天国から引き剥がすとそこら辺に放り投げる。
グチャッと嫌な音をたてて落下した兎丸が黒いオーラを放ってきたが無視した。
 「おい、天国。俺にも何か食わせろ。」
 「ダメ」
要求を0.03秒で却下された犬飼は『今夜は絶対眠らさない』と、これまた物騒な事を考えながら機嫌を急降下させていたが、
 「ほら、いつも食パンばっかり食ってるんだ。弁当作ってきてやったからオレのじゃなくてこっちを食べろ。」
と、笑顔で手作り弁当を渡された時点で機嫌は元に戻るを通り越してなお急上昇していた。(単純…)
嬉々として蓋を開けると、中には見た目にも美味しそうなおかずがギッシリと入っている。
周囲の羨望と嫉妬の視線も気にせず、試しに一口。味は見た目を裏切らずとても美味かった。
 「…どうだ、うまいか?」
 「ああ、うまい」
 「そっか、よかった〜。不味いって言われたらどうしようかと思ったぜ。」
 「とりあえずお前の作ったモンを不味いって言うわけ無いだろう。」
 「冥…」
二人の世界に入ろうとしたが、それを周囲が許すはず無かった。
 「あー!犬飼クン、これ以上兄ちゃんに近づいちゃダメ!」
 「(コクコク)」
 「そうですよ。そんな事絶対に許しませんからね!」
兎丸、司馬、辰羅川が間に入り込んで邪魔をする
 「貴様ら(怒)」
 「お、おい、ケンカは止せよ」
天国が止めたのでケンカにも言い争いにもならなかったが、嫌な沈黙が周りを支配し始める。
 「そ、そう言えば猿野君って、料理上手だったんすね」
場の雰囲気を変えるために言った一言に天国と沢松は何故か遠い目をした。
 「まあ…作れないと………命に関わるから。」
天国は意味不明な一言に沢松は納得したように頷く。
 「「「「「?」」」」」
言葉の意味が解からない犬飼達の頭の中は疑問符でいっぱいになったのは言うまでもない。
 「だから、いつの間にか作れるようになったんだよ。」
そう言いながら何気無くおかずの一つを口に運んだ瞬間……
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」
声にならない悲鳴を上げて天国は倒れた。
 「……………」
犬飼達は急な出来事に硬直していたが、やがでハッとして天国に駆け寄った。
 「天国!おい、どうした!?」
 「兄ちゃん!」
 「猿野君!どうしたのですか?」
 「しっかりして下さいっす!」
 「!!!」
必死に犬飼達が天国に呼びかけている横で沢松は天国の弁当箱をずっと見ていた。
 「…まさかな」
真っ青になりながら天国が倒れる前に口にしていたのと同じものをほんの少しだけ食べてみた。
 「………」
途端に周りの景色が歪んで意識が遠退きそうになる。
 「…原因がわかった。」
その一言に一同が一斉に沢松を見た。
 「誰でもいいからコレ少しだけ食べてみろや」
 「?」
一同を代表して犬飼が沢松と同じように少しだけ食べてみる
 「!!!!!」
口に入れた瞬間に複雑でかつとても表現出来ない不味さが襲い掛かる。
犬飼は天国が倒れた理由を理解した。
ほんの少し食べた自分がこうなのだから、まるまる一つ食べた天国のダメージは図り知れないものだろう。
こんな物体がこの世界に存在するのか?消えそうとなる意識を繋ぎ止める為に下らない事を考えてみたり…
 「あっ!目を開けた!」
 「!」
慌てて天国を見ると確かに目を開けていた。
意識が戻ったばかりの所為か目の焦点が合わずにボーッとしている。
 「天国!気が付いたのか!」
嬉しそうに天国を抱きしてる犬飼。
それに他の一同はムッとするが、天国が意識が戻った事の喜びの方が強かったので特に邪魔はしなかった。
が、そんな彼らに天国は本日二度目の爆弾を投下したのだった……

 「………誰?」

続く