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「・・・・・(汗)」 十二支高校1年、猿野天国。 ただいま、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている。 天国の目の前の机に並べられた数枚の皿。 その皿にはヘドロ色だったり、変な煙が立ち昇っていたりと、とにかく 奇妙で怪しい事この上ない物体が乗せられている。 「どうした?早く喰えよ」 ニコニコしながら、天国の兄である猿野大地が怪しい物体を食べるように 強制している。 (喰えるかー!!) 天国は心の中で叫んだ。本当は口に出して叫びたかったが、目の前に居る 兄・大地の恐ろしさをよく知っているので出来なかった。 大地を怒らすこと程、恐ろしいことは存在しないと本気で思っている。 だが、今回ばかりは素直に大地の言うことを聞くことは出来なかった。 『コレを口にすると命が危ない。』 天国の本能は必死にそう訴えていた。 だが、いくら命の危機を感じていても、大地への恐怖心からこの場から 逃げ出すことも出来ない。 2つの恐怖に挟まれ、天国は固まってしまった。 「・・・おい。」 固まった天国は、大地のやや不機嫌そうな声で元に戻った。 「早く喰え、さもないと・・・ヤるぞ?」 冗談のようだが、紛れもなく本気だった。 『食べないと殺られる』と確信した天国は覚悟を決めて、 (実は大地の言うヤると、天国が思い浮かべたヤるは全然違う) 奇妙で怪しい事この上ない物体を口に運ぶ。 その次の瞬間・・・ 「天国、食べたら駄目よ!」 天国と大地の姉である猿野明美が慌てて止めに入るが、時すでに遅し。 「○×□△◇▽ーー!!!」 天国は声にならない悲鳴を上げて、意識を失う。 「あ、天国、しっかりしろー!」 「しっかりして!」 慌てた大地と明美が必死に天国に呼びかけている間、天国は三途の川を 渡ろうとしていたらしい・・・ その後、天国は病院に運びこまれ、何とか一命を取り留めた。 そして大地は明美にたっぷり説教されたそうな これで、この騒動は終わった・・・かに見えたが、実はまだ 始まったばかりだった。 天国が死にかけた日からしばらく経ったある日 その日は野球部の朝練がないので、久々に天国と学校に行く 沢松が迎えに来ていた。 けど天国はまだ寝ているらしく返事が無い。 部屋に行ってみると予想通り布団を頭まで被ったまま寝ている。 「天国!早く起き・・・ええっ!」 布団を剥ぎ取って天国を起こそうとした沢松は驚きのあまり固まってしまう。 まだ布団で寝ている天国が小さな子供になってしまっていたからだ。 天国(?)の方は沢松の声で目を覚ましたらしく、寝ぼけ眼のまま 辺りを見回している。 「おじちゃんだれ?」 目の前に知らない人(注・沢松)が居たので警戒しているらしい。 「誰がおじちゃんだ!よく見ろ、俺だよ」 『おじちゃん』発言に怒った沢松は必死に自分をわからせようとする。 天国の方も沢松の必死の態度に押され、沢松の方をじっと見る、 少ししてから天国の顔から警戒が取れて、変わりに笑顔が浮かぶ。 「けんちゃんだv」 『おじちゃん』疑惑が消えて一安心した沢松だった。 「ねえ、けんちゃん。どうしておおきくなってるの?」 どうやら体と一緒に頭の中も子供になっているらしい。 沢松は明美と大地に相談したほうがいいだろうと思い、小さくなった 天国を連れて部屋を出た。 弟が子供に戻ってしまったことに最初は驚いていたが、すぐに その状況になれていた。 でも、ずっと子供のままではヤバイので、明美と大地と沢松の3人は 天国が子供になった原因を考えてみることにした。 「で、何が原因なんだ?」 「大地さん、それがわかれば苦労しませんって」 「だよな。何か変なモンでも食ったのか?」 「・・・大地の料理」 「「は?」」 明美がポツリと言った一言に2人は間抜けな声を上げてしまった。 「ちょっと前に天国は大地が作った料理食べさせられたもの。 絶対にそれが原因よ。」 「だ、大地さんの料理・・・」 その時の沢松は心の底から天国に同情する。 完全な家事不能者である大地が作った料理が、人が食べられる代物でないと いうことを身を持って思い知らされているからだ。 「たしかに大地さんの料理なら何が起こっても不思議じゃない」 「でしょ?」 普通は料理食べても子供にはなりませんとツッコミを入れたいが、 彼らの間ではどんな非現実的な現象が起こっても、大地が原因だと 『なんだ、あの人が原因なら仕方ないか』で納得してしまうのだから、 ツッコミを入れるのはよしておこう。 (コイツら・・・人を何だと思ってやがる?) 大地本人は蟻がライオンに突っ込んだくらい傷付いていた。(つまり、殆どノーダメージ) 原因が判明したところで3人の出した結論は『しばらく様子を見る』だった。 元に戻らなかったらまた何か案を考える事にして様子を見てみることにした。 「健吾、今日一日天国を預かれ」 次の日の朝早くに呼び出された沢松は大地にそう言われた。 「お、俺がですか?」 「ああ、俺と明美はそれぞれの大会があるから面倒見れん。 だから頼む。放課後そっちに迎えに行くから。」 「で、でも・・・」 「頼んだぞ?」 大地は笑っていた。笑っていたが、何故かとてもとても怖い。 笑っているうちに言うことを聞かないと地獄を見る羽目になるということを 沢松は長年の経験で知っている。 「・・・わかりました。」 なので、天国を預かることを引き受けることになった。 「仕方ない、今日一日学校サボって・・・」 大地達を見送り暫く途方にくれていた後、サボリを決心した時、 急に携帯が鳴り出した。 『沢松!どうして昨日部活を無断でサボったんですの(怒)!!』 「す、すいません梅さん。これには理由が・・・」 『問答無用ですわ(怒)、今日もサボろうとしたらあの写真をばら撒きますわよ(脅)』 「!! もうサボりませんからあの写真だけは・・・はい、必ず行きますから!」 梅さんの脅迫により、学校をサボることが出来なくなってしまった沢松は、 天国を連れて重い足取りで学校に向かっていった。 これから大騒ぎになることも知らずに・・・ 続く |