その日の目覚めは最悪でした。
どうしてかというと、オレの中で最強で最凶の最高位に位置している我がお兄様の所為です。
あのお兄様は破滅的に家事が出来ないくせに、やたら料理を作りたがるのです。
ちなみに腕前は…説明の必要はありませんね……
その腕前で作られた料理はもはや人間の食べるものではありません。
あんなもん喰ったら人間としての尊厳が失われますよ…いや、マジで。

 でも、それをいつも食べさせられているオレって一体何なんでしょうね?
おかげでオレ、何回も死にかけたんですよ。
お兄様は毎回仮死状態になるオレを見て焦るくせにそれでも食べさせようとするんです。
抵抗したいんですが、お兄様に逆らって地獄を見た人達を沢山見てるんですよね。
ある人は姿を消して、ある人は廃人となって病院送りに、ある人は…ゴメンナサイこれ以上は言えません
そんな人に逆らえますか? 逆らえませんよ。

 ……話が脱線しちゃいましたね。
とにかく昨日もその人外料理を食べさせられたんですよ。
もちろん食べた瞬間に意識吹っ飛んで目が覚めたら朝になってましたけどね。



クッキングパニック■女性化編■


 で、話は冒頭に戻る。
身体が重いし、頭はズキズキするし、目が覚めたばっかりなのに気分は最悪。
それでも何とか起き上がる、なんか違和感が…
パジャマがブカブカになってる。こんなに大きかったっけ?
気になって自分の身体を見下ろして見て…オレはそのまま固まった。
ブカブカのパジャマの隙間から、男には絶対存在しないものが見えた。
硬直から立ち直って胸に手をみる。
そしたら手に柔らかい感触が……慌ててパジャマの前を開くとそこには決して小さくなく、かと言って大きくもない二つの膨らみが!

む、む、む、む、む、胸がある!!!!!
しかも、大きくもなく小さくもないBカップだー!
って、そんな事は今は関係ないって!

何とか気を取り直して、今度は恐る恐る股間に手を伸ばす。
そこには本来あるはずの感触が…無い

オレ…オレ…オレ…………
女になってるううううう!!!!!

何で!?
オレは女の子は大好きだけど、自分が女になりたいわけじゃないんだぞ!
オレがあんまり女の子にもてないから、男である資格がないって事か!?
それでいっそ女になって男にモテろということなのか?(いや、君は女にならなくても男にモテるから)

 「天国!いつまで寝れば気が済む…」
オレを迎えに来たらしい沢松が、いつまでも降りてこないオレに痺れを切らしたらしく部屋にやってきた。
沢松がドアを開けたときのオレの格好はパジャマの前をはだけさせたままで、胸が丸見えの状態。
当然、沢松の目にはオレにはない筈のものがしっかり目に入っている訳で…

 「なんじゃこりゃー!!!!!」

と、叫んで沢松は固まった。
いや、叫びたい気持ちはよ〜くわかるけどさ…何で松田優作?


沢松の叫び声を聞いてやってきた兄さんと姉さんもオレを見て固まった。
でも、兄さんはすぐに元に戻って…胸掴みやがった
 「80のBくらいか?可でもなけりゃ不可でもないな。
  俺としてはCは欲しい所だな…大きくしてやろうか?」
何で胸掴んだだけで胸のサイズがわかるんだよ!?とか、アンタの好みは関係ねえだろ!とか、大きくするってどうやる気だ?とか、色々言い来た事があったけどオレの中で色々なモノが渦巻いていて、口から出たのは…

 「ぎゃああああああああ!!!!!」

という悲鳴だけだった。
そして、兄さんは姉さんの鉄拳制裁を受けた…いい気味


ちょっと時間が経ってショックが和らいだから(沢松はまだ硬直中)、何でこうなったのかを考えてみることにした。
 「で、大地は天国に何をやったの?」
 「…おい、何で俺が原因だって決め付ける?」
 「いや、アンタ以外考えられないって」
そう、兄さんが原因なら、何の不思議も違和感も無い。
たとえキャプテンが野球嫌いになろうが、獅子川先輩が真人間になろうが、辰羅川のモミアゲがなくなろうが、兄さんが原因だったら『ああ、そうなんだ』と納得できる自信がオレにはある。
 「別に…ただ、料理作って喰わせただけだ」
 「「ソレだ!!」」
オレと姉さんは同時に叫んでいた。


 「なあ、沢松。この身体で野球部続けられると思うか?」
 「別にいんじゃないか。ただし…」
 「ただし?」
 「絶対に野球部の奴らに教えるんじゃないぞ」
沢松の凄まじい剣幕にオレはただ頷く事しか出来なかった。
結局、原因はわかったけど治し方がわからない。
別に命に別状は無いみたいなので、学校はいつも通り行くことにした。
胸や細くなってしまった身体はサラシを巻いて誤魔化しておく…結構苦しい
……オレこれからどうなるんだろう?


続く