昔から天国とつるんできたけど、あんなに不安がるのは初めて見た。
恋の力ってのは偉大なもんだよな…でも、あんな天国を見るのは忍びない。
おせっかいかもしれないけど、鬼ダチのために一肌脱いでやりますか


クッキングパニック■女性化編■

 「…一体いつまで隠れてる気ですか?」
天国が居なくなってから、物陰に隠れている誰かに声を掛ける。
天国は気付いて無かったみたいだが、アイツが女になっちまった頃から物陰から見てる奴がいる。
最初はストーカーだと思ってたが、今日相談を受けたおかげで正体がハッキリした。
物陰から出てきたのは…
 「何時から気付いておった?」
やっぱり、現在天国と付き合っているらしい蛇神サンだった。
…見れば見るほど変わった人だよな。どう見ても世俗に興味がありそうに無いし…
 「かなり前から気付いてましたよ。最初はストーカーかと思ってましたけど」
 「む…」
あ、機嫌が悪くなった。ストーカーだと思われたのが心外だったみたいだな。
だったらコソコソしなけりゃいいのに…まあ、今はそんな事気にしてる場合じゃないか。
 「オレと天国の話を聞いてたみたいだから単刀直入に聞きますよ。天国の事をどう思ってるんですか?」
 「…我は天国の事をちゃんと好いておる。」
うわっ!顔が真っ赤になってるし、しかも呼び捨て。
付き合ってる者同士だったら普通の事なのに、この人がやると凄く違和感が…
 「だったら何でそれを天国に言ってやらないんですか?天国不安がってますよ。」
 「うむ…言葉にしようと思っているのだが、実際天国の前に出ると照れて何も言えなくなる也」
……何だかな〜、この人も人間だったってことか?
 「じゃあ、何で天国が女になってから避けてるんですか?」
 「そ、それは……」
一分後…話さない
三分後…まだ話さない
五分後…まだまだ話さない
十分後………って、いい加減に話せよ(怒)
 「…わかりました、天国を不安がらせて理由を話そうともしない。そんな奴に天国は任せられません、今すぐ別れて貰えますね?」
オレには天国の恋路をどうこう言う権利は無い。だから、今言った事は蛇神サンに話させる為のハッタリだったが、見事に引っかかってくれたらしく狼狽してるのがよくわかる。
 「それが嫌なら話してくれますね?」
 「実はだな………」


 「アホらし……」
理由を聞いて、発した第一声はコレだった。
と、いうかこれ以外に言葉は見つからなかった。
ああ、この人にもオレたちが持ってる感情がちゃんとあったんだな……
 「そんな理由で天国を避けないでください」
 「済まぬ…」
 「謝る相手が違います。オレに謝ってもしょうがないでしょ?ちゃんと天国に言ってやってください。アンタがちゃんとしてくれたら天国が厄介な奴らに目を付けられる事も無いだろうし…」
 「牛尾の取り巻き達のことか!?」
 「え、ええ、どうしたんですか急に…?」
牛尾部長の取り巻き達はタチが悪いと聞いた事はある。
オレらが入学する前に野球部のマネージャーに嫌がらせをして、何人も辞めさせた事があるという噂も聞いた。
それはあくまで噂であって、証拠がある訳じゃないので信じてはいなかった。
でも、この人の態度を見るとあの噂を信じざるをえなくなった。
 「あの者達に目を付けられているとは…厄介な事になった。」
物凄く難しい顔してる…それが奴らがどれほどタチが悪いのかを物語っている。
やべぇ…本当に嫌な予感がしてきた……
 「…絶対に天国を守ってくださいね。」
 「心得た也」

 「あ、沢松。こんなところにいたのか」
アイツは…オレと同じクラスの男子だよな。なんか慌ててるけどどうしたんだ?
 「オマエ、猿野と仲良かったよな?」
 「ああ、それがどうかしたのか?」
 「急に教室に上級生がきてさ、猿野を連れて行ったんだよ。なんか雰囲気がやばかったから教えとこうと思って…」
 「それは真か!?」
オレが聞き返すよりも早く、蛇神サンが男子に掴みかかる。
すげぇ剣幕…この人は本気で天国が好きなんだと場違いだが安心した。
 「ほ、本当です……確かに体育館の方へ…」 全部を聞き終わる前に蛇神サンは体育館へ向かい走っていった。
天国をあの人に任せる事にしたオレは、別の方向目指して駆け出して行った


続く