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クッキングパニック■女性化編■ 「イヤアアアアァァァ!!!」 辺りに天国の悲鳴が響き渡る。 授業中でしかも校舎から少し離れたところにある体育館の倉庫に近づく人は無く、誰も悲鳴には気付かなかった。 が、天国を探し回っていた蛇神の耳には辛うじて届き、蛇神は悲鳴の聞こえた方へ急いだ。 「天国!」 勢いよく体育館の扉を開け放ち中へ踏み込むが、そこに天国の姿は無く、かわりに倉庫の扉の前でこっちを見ている牛尾の取り巻の三人の姿が見えた。 誰も来ないだろうと思っていた三人組は、予想外の訪問者に唖然となっている。 「へ、蛇神君…どうしてここに?」 「それはこちらの台詞也。そなたらこそ、ここで何をしておる?」 「そ、それは……」 口ごもる姿を見て、更に問い詰めようとした時… 「ヤダッ!止めて…」 再び聞こえてきた天国の声。 三人組は『しまった』と言いたげな顔になり、蛇神から目を逸らす。 蛇神は既に三人組など眼中に無く、天国の声が聞こえてきた倉庫の中に入るために閉ざされた扉を開けようと手を掛ける。 「だ、駄目!そこは…」 三人組の静止の声など無視して扉を開ける。 その途端に蛇神は驚愕の余り目を見開き固まってしまった。 倉庫の中に居た二人の男は急に開けられた扉に驚き、こちらを見ている。 だが、蛇神には彼等など見えてはいなかった。 彼の目に映し出されていたのは天国だけ。 二人がかりで押さえつけられ、抵抗されない為に殴られた部分が酷く腫れ上がり、着ている服は無理矢理引き裂かれ、怯えきった目からは止め処も無く涙を流している天国は余りにも痛々しかった。 その姿を認識した蛇神は自分の中で何かか音を立てて切れたのを自覚した。 「尊せんぱ……」 弱々しく自分を呼ぶ天国の声が無ければ、この連中に何をしていたかわからない。 その声にハッとなった蛇神は男達に押さえ付けられている天国を奪い返す。 真っ青で涙でグチャグチャになった顔のまま小刻みに震えながらも自分の背に腕を回す天国に、もう大丈夫だと声を掛けてやりながらそっと優しく抱きしめる。 そうして少し天国が落ち着いたのを見計らい、呆然と自分達を見ている連中に顔を向ける。 「…ひっ!」 怒りを露にした冷たい目に睨まれ誰かが小さく悲鳴を上げた。 「何故このような事をした?」 怒りに満ちた声で問うが誰も答えない。 「答えよ!!」 声を荒げると、腕の中の天国が震えた。 それに気付いた蛇神は表情を一変させ、優しく穏やかなものにする。 「済まぬ天国。お主を怯えさせるつもりは無かった也」 「………あの、蛇神君。一つ聞いていい?」 三人組の一人が、天国が落ち着くのを待っている蛇神に恐る恐る話し掛ける。 途端に蛇神は不機嫌な顔になり、視線で『何だ?』と問う。 「ま、まさか、蛇神君とその子……付き合ってるの?」 「うむ」 一気に場の雰囲気が凍りついた。 まさか『あの』蛇神に恋人が出来るなどと想像できたものでは無い。 「オレは尊先輩の事が好きなんです。だからキャプテン達に何言われても興味ないんです。ご安心ください」 ようやく落ち着いた天国のその言葉に、蛇神はようやく今回の原因を理解する事が出来た。 「そうか、そういう事であったか……牛尾がこの事を知ったらどうなるであろうな?」 「そ、それだけは……」 「ならば今後一切天国に危害を加える事は許さぬ……よいな?」 「………はい。」 これでこの場は治まるかの様に見えたが…… 「「「「「「「「「ちょっと待った!」」」」」」」」」 突然、複数の大声が響き渡り驚いた天国達が何事かと声のする方を見ると、そこには牛尾他野球部のレギュラー達が体育館の入り口に勢揃いしていた。 「…キャプテン達、何でここに?」 「報道部の彼が『アンタの所為で天国がヤバイ事になってる。何とかしろ』と言われてたんだ。で、ここに来る途中で皆が集まってきてこんな大人数に…って、そんな事よりもチェリオ君!」 「は、はい」 「本当に蛇神君と付き合ってるのかい!?」 「そうだよ兄ちゃん!ウソだよね…ウソだって言ってよ!!」 「とりあえず冗談だよなバカ猿!?」 「どうなんですか猿野君!?」 「………(オロオロ)」 「猿野君、本気っすか!?」 「なんてこっTa!こんなことがあっていいのかYo!!!」 「…こうなったら蛇神さんに消えてもらった方がよかとね」 「許さないのだ蛇神……必ずこの剃刀カーブで始末してやるのだ」 現実を認めたくない彼らは一斉に二人に詰め寄った だが、蛇神は全く怯まずに一言 「その通り也。これから天国に手を出す事は許さぬぞ」 と、言い残し天国を抱き上げるとさっさとこの場を去ってしまった。 残された野球部員達はしばらくの間、放心した後…体育館の隅で逃げるに逃げれないでいる女三人組と男二人の方へ向き直った。 「う、牛尾君(汗)」 「チェリオ君に危害を加えようとした輩どもに制裁を与えようと思うけど…依存は無いよね?」 いつもと同じキャプテンスマイルを浮かべた牛尾がそう言えば、他の野球部員達はいっそ清々しい笑顔で同意した。 その後、体育館には今回の騒ぎの主犯と実行犯が響き渡った それはモチロン牛尾達による制裁という名の蛇神に天国を取られた八つ当たりが原因だった…… それから数日間、天国は殴られて腫れ上がった部分が元に戻るまで学校を休んでいた。 明日からはまた学校に行けるようになるまで回復した日、蛇神が見舞いにきた。 「尊先輩!全然に来てくれなかったから寂しかったんですよ。」 「済まぬ…大地殿がなかなか入れてくれなかった……」 「………(あんのバカ兄貴が〜)」 天国の大地への好感度はガタ落ちになった。 「でもよかった。オレ、先輩はホントはオレの事好きじゃないんじゃないかって真剣に悩んだし。」 「? 何故そのような事を?」 「だって、先輩オレのことずっと避けてたでしょ」 「ああ、それは……」 「それは?」 「……」 黙り込んでしまった蛇神に少しムッとした天国は脅しのつもりでこう言ってみた。 「先輩…嫌いになっちゃいますよ」 「!!」 途端に冷や汗をダラダラかきながら狼狽する蛇神に『嫌われなくなかったら話して』と続きを促す。 観念したのか蛇神は少し赤くなりながら口を開いた。 「女子のお主に必要以上くっつかれると…自制が効かなくなりそうだった也」 「………」 今度は天国が黙り込む番だった。 蛇神の言った事をようやく理解すると心底驚いた。 「ええっ!先輩にも性欲ってあったんですか!!!!!」 「…お主は我の事を人と思っておらぬだろう?」 「先輩ってそういう事修行で超越してそうだったからつい……」 「うむ、修行とは一切の欲望を捨てる事なのだが…我も修行が足りぬ。」 「大丈夫!先輩には何されても全然平気!」 そう言って甘えるように抱きつく、蛇神が硬直してしまったのにも気付かず更に上目遣いで一言。 「先輩大好き」 ここで蛇神の理性はついに途切れた。 「天国!!」 気が付くと蛇神は天国の事を押し倒していた。 状況が理解出来ない天国が自分の身に起こった事を理解するまで後5秒 …後4秒…3秒…2秒…1秒… 「な、な、な、何でえぇぇー!!!」 終り 〜おまけ・次の日の事〜 「えぇー!兄ちゃ…じゃなかった、姉ちゃん今日も休み?」 「まだ腫れが治らないのでしょうか?」 「今日は腰が痛いから休むってらしいっすよ」 「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」 子津の一言に思わず固まってしまう野球部の皆さん 「そう言えば…今日は蛇神も休みなのだ」 鹿目の恐ろしい一言に皆さん昨日何が起こったのか理解できたご様子 「な、何という事でしょう…悪夢です」 「……あの仏教徒ぶっころ」 「酷いZe!蛇神サン!」 「…もう許さんばい!」 「蛇神…覚悟するのだ……」 「ふふふ…蛇神君。いい度胸してるじゃないか……」 「………(シクシク)」 こうして『蛇神尊抹殺同盟』が結成されたとかされなかったとか…… 〜おまけ・その2〜 「あの仏教徒……絶対に許さんぞ!」 「…許せないのはアンタよ」 大地さんも機嫌が悪そうですが、明美さんも機嫌悪そうですね 「ど、どうした?そんなに眠そうなツラして…」 「眠そう?アンタが私の部屋で隣の部屋に聞き耳立てて昨日の事全部実況中継したんだから眠れるはずないわよね(怒)」 …だ、大地さんそんなことしたんですか? そりゃ明美さんも本気で怒りますよ。自業自得です。 「覚悟!!」 「おい!や、やめ…どわあぁぁぁー!!!」 〜おまけ・その3〜 「腰痛い…身体動かない…」 天国が辛そうに布団につっぷしてます。 「済まぬ。押さえが効かなかった。」 蛇神さんは反対にスッキリしてますね〜、しかも全然反省の色が見えてないような… 「先輩!お嫁に行けなくなったらどうしてれるんだよ(怒)」 「案ずるな。我の元にくればよい」 「……(赤面)」 天国が真っ赤になりましたね。でも、まんざらじゃない様子。 むしろうれしそうでした。 これ以上ここにいると鳥肌立ちそうなんでとっとと逃げましょうか。 今度こそ本当に終り |