実際に魔法使いが認められている、異世界の中の一国、ナウンディア。
 年々、国の認める魔法使い試験の受験者数が上がっていっていた。

魔法使いの卵

 「やべっ、逃げろ・・。」
短い金髪碧眼の少女が、長い石畳の廊下をブーツで走って逃げていく。カールした黒髪をなびかせて後から追いかけてくるのは、彼女の先生だ。
「待たんか、ガーネット。廊下は歩きなさい!!今は、授業中だ!!」
今日は追いかけている張本人キャルルは、ガーネットを逃がしたくなかった。なぜなら、どうしても、キャルルが追いかけている教え子である、ガーネット・ナウンディアに会わせなくてはならない人物がいたからだ。14年前の約束どおりに。
「あぁ、ノームおはよ。っていうか、遅いよ。朝、何度も起こしたじゃん。」
ガーネットは前方に長い茶髪に碧眼の同じ年ぐらいの少女を見た。寄宿舎の同い年のルームメイトである、ノーム・ウェザーだ。この、王立魔法学校の開校以来の秀才であり、ガーネットと同い年ながら最高学年であるが、校内屈指の遅刻魔である。キャルルとの距離に少し余裕があったのでノームに話しかけたのだった。
「また、なんかやらかしたんでしょ。」
「そうそう。そういうわけで、追いかけられちゃってさ。あぁ、3、4日戻らないからよろしく。」
ガーネットは後ろを確認して、キャルルが迫ってきていることを見ると、
「後ろがやばいから、じゃあね。」
と言って、再び走り出した。
「キャルル教頭、おはようございます。」
「ノーム!また遅刻か。昼休みに、教頭室に来なさい。」
「女王陛下が訪問なさってくるんだ。待ちなさい。」
「そんなの、私がいなくたってどうだっていいことだよ。というわけで、待たない。」
ガーネットは走るスピードを上げたのと同時に、
「いでよ、壁!!」
と、キャルルは右手を進行方向に向け呪文を唱えると、床から、地響きを立てて、壁がせりあがる。
「おっと・・・、キャルル教頭、ここは何階だと思っているんですか。」
ガーネットはすぐ左に見えた部屋に入り、開いている窓を潜り抜け、学校の校門の直前へ出た。
「ここなら、もう追いつきはしないだろ。」
「追いついているんだよ。ガーネット。」
後ろから、肩を二回たたかれて、振り向くとキャルルがいた。
 「今日は容赦しないぞ。」
そう言ってキャルルがガーネットへ詰め寄る。
「いでよ、チャリ!!」
「ほう、大胆にも自転車で逃げるのか。」
(ゴォォォォ・・・)
「間違えたな。これは、砂利だ。」
どこからともなく砂利が出てきて、校門周辺は砂利で覆い尽くされた。キャルルは、砂利に気をとられて、ガーネットを見失った。
キャルルは、指を鳴らして砂利を消して、ガーネットの姿を探した。しかし、ガーネットの姿はどこにもなかった。
 そのころ、ガーネットは、森の中にある、ナウンディアのよじれと呼ばれる、一見何の変哲もない池の前に立っていた。
よじれの水の中に入っても、濡れることはないが、底はなく、異世界へとつながっている。しかし、どの世界のどの時代につながるかは、通る者次第というかなり危険なもので、本来、異界追放刑という刑を執行するのに使われる。
ガーネットの場合、前にも試したことがあり、試したところ、日本へとつながっていることがわかった。どうやって試したかと言うと、実際に飛び込んだのだ。
 よじれのふちにガーネットは立ち、勢いをつけて飛び込んだ。
 ナウンディアのよじれをくぐることで、命の危険から脱することができたとは、ガーネット自身知る由もない。

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