澄み渡った青い空、もくもくとどんどん大きくなっていく積乱雲。陽炎が立ち上る、舗装された道。

異界の住民

「ったくよ、なんで、副教科はすべてレポートの宿題が出るんや?体育とか、なにを書けて言うんや。」
「高校野球の全試合の総評とか?」
「無理やん。」
「ラジオ体操の夏休み中の放送の中継先を全部記録とか。」
「それはもっと無理や。」
中津翔は高校に入って初めての夏休みの宿題について、友人と相談をしながら帰路についていた。翔はもともと茶色い髪をかき上げ、
「なにをすりゃぁいいんだよ!!」
と、一見さわやかだが、話の内容は悩ましい。
道路に転がっているコーラの缶を蹴って、友人は、話の内容を休み中の予定についてに切り替えた。
翔は後ろからうざったい存在の気配が近づいていることに気がついた。
「翔様〜!!」
黄色い声が聞こえてくる。学校内で屈指の美男子の中に入るほど、翔の評判はいい。それゆえに、どこに行ってもくっついて来るという女子が多い。その声の主も同じくそういう女子だ。
「わりぃな、翔、俺、あいつはどうしてもあかんねんや。先に帰る。武運をいのるで。」
といって、友人は先に帰ってしまった。翔は置いていかれた。
 「奇遇ですわね翔様。」
翔は右腕を強引に組まれた。組んでいる本人は満面の笑みだが、組まれているほうはこの世の終わりのような顔をしている
 「ぐっ・・・。」
突然何かに押し倒されたように翔が倒れた。翔の上には何者かわからない15ぐらいの少女が倒れこんでいる。
「熱いっ!!」
膝が道路に当たっていたらしく、急いで少女は立ち上がった。翔の見る限りは外国人のようだ。
「そこのあなたっ!!学校一の美男子、中津翔様に倒れこむなんてなんとも破廉恥な。ファンクラブ会長の姫川綾乃が許しませんわよ。抜け駆けは禁止でしてよ。」
(また始まった。とにかくこの状況からこの子を逃がさないとな。)と、翔は思った。
「なぁ、姫川、この子俺の従姉妹なんだ。だから、そんなに言うな。」
困った表情をしている倒れこんできた少女の様子を見て言う。
「あ、そうでしたの。私、姫川綾乃と申しますわ。翔様と同じクラスですの。」
「それじゃぁな。姫川。」
 翔は少女について来いという合図を出して、その場から立ち去った。
「あのさ、膝、火傷しているから、家に来いよ。母さん医者だし。」
「え、でも、初対面の人にそんなことできないし。」
「そういえばさ、名前何?」
「ガーネット・ナウンディア。」
「この辺じゃ見ない顔だけど、なにしに来た?」
「あ、えっと、知り合いのところに・・・。」
「ここ、俺の家。」
門を見る限り、たいそうな豪邸であるにもかかわらず、ガーネットはびっくりししなかった。
脇にある小さな扉から敷地に入り、家まで案内された。
「ただいま〜。母さん〜、お客さん。」
パタパタとスリッパを鳴らして二階から翔の母親である中津淑子は、降りてきた。翔の隣にいるガーネットにびっくりした。
「なーんでこんなところにいるのよ。」
右手でガーネットを指を指し、大きな声で言った。淑子の反応に翔は驚いた。
「母さん、この子しってるわけ?」
「知っているもなにも、何度もうちに来ているわよ。」
「俺知らないんだけど。」
「翔は寄宿舎にいたから知らないだろうけど。」
「道路で火傷したから、手当てしてやっててほしいんだけど。」
「わかった。それなら、あがって、ガーネット。」
来客用のスリッパを出して淑子は言った。

「はぁ?しばらく、おいておいてほしいだって?!」
ガーネットの唐突な発言に淑子は目を見開いた。
「別に構わないけど、それじゃ、学校はもしかして、脱走?」
「なんか、女王が学校に来て、どうのこうのっていうから、学校を抜け出してきた。どうせ、明日から週末で学校は休みだし。かまわないんだ、じゃぁ、よろしく。」
「女王ねぇ・・・。もしかして。」
と淑子はつぶやいた。
「なんか言った?」
「いや、なんでもないの。」
と、淑子は紅茶を一口飲んだ。
「淑子さんは、昔ナウンディアに住んでいたんでしょ?聞いていなかったけど、なんで、この世界に住んでいるの?」
ガーネットはぽつりと、前々から思っていたことを言った。
その質問に淑子は困って、
「それは、教えない。いつか教えるから。」
と言って、言い逃れた。


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