12月18日
生き別れになった家族に会った。
自分の作った子供を置いて逃げた僕の前に、その子は突然現れた。
僕は殺されても文句は言えない。
だけど、せめて娘に一つぐらいは親らしくいろいろなことを教えてから死にたい。
そう思う僕は罪人だろうか?
親友に言わせると、大馬鹿者なんだろうな。
12月19日
人を騙して生きるのは慣れている。
僕は昔からそうだった。
第一、世間的にも騙している。
僕は戸籍上には死んでいる。
そして、死ぬ直前となった今も人を騙している。
今回のは最後にして最高の騙しだ。
言い訳などできない。
だけど、僕は騙している人たちを、愛している。
12月20日
夢を見た。殺される夢だった。
銃創が痛む。あのとき、脱走するときに撃たれたところだ。
思えば、彼にはずいぶん助けられたものだ。
命はもちろん、こうして逃げ延びた後も、ちょくちょく彼が来てくれるおかげで僕は今も
こうして生きている。
彼がいなかったら、僕は何度も死んでいた。
撃たれたり、絶望に押しつぶされたりして。
僕はいつも彼を傷つけてばかりなのに。
そして、最後の今回も。
僕は彼に何をしてあげたのだろう。
12月21日
僕の死後、娘はいろいろなことを知るだろう。
そのときに力になってやることは、当然僕にはできない。
娘には人間と同じようにとは言わないまでも、他の人間のように幸せに生きて欲しい。
僕を通じて、人間らしさを身に付けてくれたら僕も本望だ。
だが、娘のことも彼に頼るのはさすがに気が引ける。
できることなら、娘と彼は助け合って生きていって欲しい。
そんなことを望み考える僕はきっと親ばかで、かつ馬鹿な大人なんだろうな。
12月22日
彼にCDを渡した。
昔からいろいろな計画を立てるのは得意だった。
でも、自分が死んだ後の計画は立てられない。
僕は親友に頼るしかない。
そうやって僕は最後の最後まで彼のことを利用している。
12月23日
明日僕は死ぬ。
そう言うと僕の親友は顔を伏せた。
きっと彼はまた僕のことを助けようとしているんだろう。
すまない、としか言えないのに、僕は何も言えない。
そんな彼に「君しかいないんだ」と言った僕は、きっと地獄行きだろう。
すまない。
12月25日
「メリークリスマス、ゆみ。今日は聖なる日だ。雪は降ったかい? 僕の人生の中でホワイト・クリスマスは二回しかなかった。恋人と別れた年のクリスマスに雪が降ったのはよく覚えているよ。雪が降っても寒いだけなんだけどね、なぜかクリスマスには雪が似合うんだ。……はは、こんなことはどうでもいいな。――僕は最後まで誰の父親にも友達にもなれなかった。偉そうにこんなところで話せる人間ではないんだろうね。君には悪いことをした。重い荷物を背負わせてしまったかもしれない。すまないと思っている。僕は、最後までわがままで、嘘つきだった。だけど、僕は、君たちを愛している。僕はずっと、アンドロイドを作っていた。より人間に近いものを作るのが夢だった。ロボットは人間には成れないと言うのに。もし女になりたいと憧れる男と、人として生まれたロボットも同じことではないのか。そう思ったとき、僕は何もできなくなった。会社からは追われ、秘密保持のため殺されるところだった。本来はあそこで僕は死んでいた。それから何をするともなく一年が過ぎた。そんなとき、君が現れた。僕を殺すためとはいえ、僕が作っていたものが形となって目の前に現れたのは嬉しかった。僕が作っていた君たちが実用化の目処が立ったとき、上は君たちに非人道的なことをさせるためプログラムを書き換えさせた。それが一概に悪いとは思っていない。だけど、僕は君たちには君たちの幸せを見つけて欲しかった。誰から強制されたわけでもない幸せを。君は、君たちは僕の娘だ。子供の幸せを願うあまり僕はいけない父親になってしまった。だけど、これだけは知っておいて欲しい。僕は君のことを愛している。
――気が向いたら、僕としてはぜひ言っておいて欲しいのだけど、これを君に渡した僕の一番の親友に一言礼を言っておいてくれると嬉しい。彼はいいやつだ。君のことも組織のこともよく知っている。困ったことがあれば彼を頼りなさい。
メリークリスマス。幸せな夜を。
できそこないの父より
愛するゆみへ」