僕のケージは
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遅刻するたびに思う。
僕はどうしてこんなにも束縛されているんだろう。
時間にも、空間にも。
どうして僕はこの場所、この時代に存在しなければならない?
どうして時間も、空間も超えられない?
大学まで自転車をとばしながら、いつもそんなことを考える。
もう何度目になるかわからない。
遅刻することにも慣れてしまった。
すでに講義の始まっている教室のドアを開けるとき、
僕はそっと耳を澄まして中の様子をうかがう。
たいてい何も聞こえない。
しかたなく、音を立てないよう注意して扉を開く。
だけど僕がそんなふうに気を使っても、先生は僕のことなんか見ない。
2,3人が振り返るだけだ。
入り口近くの後ろの席に座る。
出欠確認の名簿が、一番最後に回ってくるから。
意味不明の線形代数学は、ノートを取る気にもならない。
教科書をパラパラとめくって時間をつぶす。
僕が授業に出た証拠、僕のサインがあればそれでいい。
僕がその時間、その場所にいたという事実が。
それだけで単位はもらえる。
勉強する気にはならない。
ようやく前の席まで名簿が回ってきたと思ったが、どうやら違う紙のようだ。
後ろから覗いてみる。
−クラスコンパのお知らせ
そういえば、最近なかったな。
−水曜の夜、6時半開始
なんで水曜なんだ?次ぎの日の授業がきついじゃないか。
そうしているうちに前から紙が回ってきた。
僕は授業が終わる直前までねばって、出席のところに自分の名前を書いた。