プライド
*3*
高校にはちゃんと受かった。普通くらいのレベルの学校なんだけど、その学校の中ではあたし、
結構成績よかったみたい。いきなりクラスの副委員長になっちゃったの。
めんどくさいけど、目立てるからまあいいやと思った。
部活はもちろん演劇部。
副委員長ってね、なかなか仕事多いんだよ。一学期は、六月にある体育祭がメインの行事なんだけど、
そのまえになると会議会議だし、クラスで決めなきゃいけないことがいっぱいあるし、
準備とか仕切らなきゃいけないし、おまけに生徒会の仕事まで手伝わされて大変だった。
まあそれが楽しいんだけどね。
うちの学校の生徒会って結構権力握ってて存在感あるの。
体育祭の準備でよく生徒会室に行くようになって、生徒会長と仲良くなったんだけど、
この生徒会長がなかなかかっこいいの。
さわやかで、生徒会長だけあって器がでかいし、リーダーシップをとるのが上手い上手い。
ルックスもいいからさぞかしもてるんだろうなと思ってた。
入場門の看板塗りながら生徒会長と話してたの。
生徒会長は二年で一つ上だったんだけど、話しててすごく楽しい人だった。話術が巧みなの。
さすが生徒会長って感じ。そんなこんなで、だんだん仲良くなっていきました。
こういう体育祭とか文化祭のとき、やたらカップルが増えるっていうのはうなずける。
人間って共同作業して何かを一緒に成し遂げると、相手のこと好きになりやすいんだって。
そりゃあカップルも増産されるよね。
でもみんなで一つのことに向かって何かをするときの雰囲気ってあたし大好き。
だからこういう行事の準備って好きなんだ。もともと工作とか好きだし。
それでかっこいい人と仲良くなれたら、もうサイコ-に楽しいでしょ。
体育祭は無事終わって、あたしは生徒会の打ち上げに呼ばれたの。
ホントは打ち上げ禁止だし、生徒会の他には三年生くらいしか打ち上げしてないから、
部外者のあたしは嬉しかった。
打ち上げって言っても、みんなでバーベキューしただけなんだけどね。
その打ち上げのときにさ、会長に今度一緒にご飯食べに行こうって誘われたの。
誘い方も自然で上手いの。この人遊びなれてそうって思ったんだけど、
あたしは次ぎの土曜日に、一緒にご飯食べに行ったんだ。
店の選び方から待ち合わせの段取りまで、会長はまったく隙が無くて、
あたしは感心しちゃった。
それでちょっとは予想してたんだけど、そのときに会長に付き合ってって言われちゃいました。
なんか体育祭カップルって安っぽくないかとか、あたしは流されてるだけなんじゃないかとか、
色々考えてたんだけど、やっぱり生徒会長っていうのはおいしすぎると思って、返事は決めてたんだ。
だからほぼ即答でよろしくお願いしますって答えてた。
だって生徒会長よ生徒会長。全校生徒が顔を知ってるのよ。
おまけに体育祭のときだって、一緒に写真とってくださいっていう女の子が、列作ってたくらいもてるのよ。
生徒会長の彼女になれば、あたしも有名になれるし、ハクガつくでしょ。
こんなチャンス二度とないかもって思った。
今思うとバカなことしたなと思うけど。
それにしても男って単純よね。あたしはこの時点で四人に告白されてるけど、
みんなあたしの顔に騙されてる気がする。あ、城本君はそうでもないかもしれないけどね。
だってあたし、たいていO型っぽいって言われるんだけど、実際はA型なんだよね。
血液型と性格は関係ないかもしれないけど、占いとかで植え付けられたイメージってあるじゃない?
O型は大雑把、A型は几帳面ってよく言われるでしょ。
あたしけっこう几帳面なんだよ。靴下は必ず右から履くし、トイレでトイレットペーパー三角に折ったりするし。
それに性格だって真面目でしょ。城本君のときだって誠実に対応したし。
みんなあたしの中身なんて見えてないんだよね。
生徒会長とはさ、世間一般で言う普通の高校生カップルができると思った。
放課後にコンビニの前でだべったり、たまには一緒にお弁当食べたり。
ああ、あたしって乙女チックかも。乙女チックって懐かしい言葉ね。
まあ、実際そんな感じだったんだけどね。学校近くのコンビニのおばちゃんに、
会長さんの彼女でしょって言われておまけしてもらったり、
あたしの知らない人に名前覚えられてたりして、着実にあたしの知名度も上がってたしね。
でもさ、付き合ってくうちに、会長って結構毒舌だって言うことがわかってきたの。
本人が聞いたら絶対傷つくようなことを、陰でぽろっと言っちゃうことが結構あって、
会長自身も悪いと思ってないみたいなの。そういうとき、あたしどう答えていいかわからなくて、
ただ曖昧に笑ってるしかなかった。あたし陰口って絶対したくないの。
人を傷つけるようなことはしちゃいけないって小学校で習わなかった?
でさ、なんかだんだん会長に疑問を感じるようになってきたんだけど、
あるとき会長が手をつないできたのが、なんか嫌だったの。気持ち悪くなってきちゃって、
ああ、あたしはこの人のことが好きじゃないんだって気づいた。
それからもしばらく付き合ってたんだけど、会長が他の女の子と歩いてたって聞いて問い詰めたら、
浮気してたことが発覚して、あたしは思いっきり会長のほっぺたひっぱたいてやった。
それで別れたんだ。
一ヶ月くらいしてから、会長がよりを戻したいって言ってきたけど、もちろんあたしは断った。
そのときはすがすがしささえ感じたな。
もう当分彼氏なんていらないなって思った。清く正しく美しく。これがあたしのモットーだから。
それでしばらく一人でのんびりしてたら、男嫌いになったんじゃない?って友達に言われちゃった。
別に男嫌いになったわけじゃないんだけど、なんかこう、楽しくないのよ。
いろんなことがめんどくさいって思っちゃう。どうせいつか別れちゃうんだから、とか考えちゃうのよ。
好きになる前からね。
二年になったらさ、今度は同じクラスの男の子が言い寄って来た。
色々誘ってくれるんだけど、なんかその気になれなくて、悪い人じゃないし、
友達もみんな付き合ってみればって言ってくれてるんだけど、どうしようかすごく迷ってて、もやもやしてたの。
だから会話も上っ面だけの表面的なものだし、メールも当り障り無く、わざと短く返したりしてた。
なんであたしはこんなに悩んでるんだろうと思ってずっと考えてた。
そしたらちょっとわかってきた。
あたしはその人のこと恋愛対象として見てなくて、好きなわけじゃない。
でも好意を持ってもらうのは嬉しい。あたしはみんなに好かれたいと思ってる。
自分が嫌いな相手にも好かれたいと思ってしまう。
だからその人を振るのはもったいないって思ってたんだ。
その人のことは好きじゃないのに、振ってしまうのはもったいないなんて、
なんて卑しいんだろうと思った。とっとと振っちゃえばいいのに、それがもったいないと思う自分が嫌で
もやもやしてたんだってわかった。
そんな状態でねちねち悩んでる自分が嫌だったんだ。
だって今まで自分のことが好きだったし、好きになれるように努力してきたんだもん。
自分が何で悩んでるかわかっただけでもだいぶすっきりした。
問題は全然解決してなくて、まだ決断は下せてなかったんだけど、
それでも自分が何を考えればいいのかわかったから、だいぶ楽になった。振るべきか、付き合うべきか。
そんなとき、ほんとに偶然城本君からメールが来たの。
あたしの初恋の亮助君。城本君と同じ高校へ行ったって言ったよね。
その亮助君に、彼女ができたらしいって。
ショックだった。なんか幸せそうな感じがしてうらやましかった。
亮助君を好きだったときは、一日中目で追って、ちょっと手が触れただけでも、ものすごく嬉しくて。
一番純粋な感情だった。相手からの見返りなんてまったく求めてなくて。
今は自分が相手に与えたものと、相手からもらったものを比べてしまう。
あのころみたいに人を好きになれたら、幸せだろうなと思った。
そのときね、答えが見えた。あたしが振ろうか付き合おうか迷ってた人。
めんどくさいとか思っちゃうのは、あたしがその人のこと好きじゃないから。
あたしが好きじゃなきゃ楽しくないんだって気づいた。だから振ることに決めた。
答えが出て、晴れ晴れした。あたしのほうがいっぱい好きじゃなきゃだめなんだって気づいて、
今度はちゃんと人を好きになろうって決めた。それで好きになったら告白するの。
あたし告白は何回もされたことがあるけど、したことはないじゃない。
気持ちを伝えるのって難しいから、上手くできるかどうかわからないけど、待ってるだけじゃだめ。
本当に欲しいものは自分の手で手に入れなくちゃ。
昨日ね、夢の中に亮助君が出てきたの。内容はよく覚えてないんだけど、
亮助君と一緒にいられてすごく楽しかったのは覚えてる。
重症だね。現実逃避して、夢の中で亮助君と楽しく遊んでたのかなって思った。
これはそうとうきてるなと思って、髪を切ることにしたの。
今までずっとロングだった髪を、ばっさり切ってストレス解消。
それで気分も一新して明日からがんばろうって。亮助君みたいにあたしが好きになれる人に会えるように。
サラサラロングは美少女の証だけど、今度はちゃんと中身も見てもらいたいから。