「何の研究してるの」

「穴を掘る研究」

「穴なんか誰でもほれるじゃない」

「誰でも掘ってちゃ事故が絶えない」

「事故なんて最近聞かないわね」

「我々の成果だ」

「それじゃもう研究は終わったのね、ほかのテーマ見つけなきゃ」

「まだまだ掘るべき穴はある、あそことあそこも・・・」

「答えになってないわ、それとも研究じゃなくて肉体労働するのね、

穴を掘るっていうのはもっとも原始的な労働で偽らない快感を

ともなうって何かで読んだことがあるわ」

「穴を掘って人間の生活空間を広げるのだ」

「穴を掘ったらそれと同じ体積の土が余るけど、それはどうするのよ」

「海に捨てるのさ、人間は海に住めないんだよ、海を埋めて

人間の生活空間を広げるのだ、これぞまさにフロ・・・」

「よおするに土地を広げて平らにしていきたいのね、世の中平等になれって、

あなたも社会主義者じゃないの」

「人をアカ呼ばわりするのか」

「そうじゃないわ、平等主義はすばらしいじゃないの、この国はれっきとした

社会主義国だったのよ、知らなかったの、親の恩子知らず、っていうわよね、

医者なんて代表よ、医者の免許持ってたら、うまい下手なんて関係なく

誰でも同じ値段なのよ」

「とすると我々患者はあなたたちを医者としてみるより、医師免許とみなしたほうが

正しいというのか、医者は人間だが医師免許は人間じゃないぞ」

「そのおかげであんたたちは毎日安心してメシ食ってクソして眠ることができるのよ、

感謝しなさい」

「うそだ、我々は安心なんてしたことは無い、

いつわりのイリュージョンなんかもうたくさんだ、

わかったぞ、この国を腐敗させているのはおまえたち女医だろう、

いったい何が目的なんだ、

そうか、僕たち健気な青少年を弄ぶつもりなんだろう」

「なに甘えたこといってんのよ、今どれだけ多くの人が病気で苦しんでるか知らないの、

その貧弱な想像力で少しは考えてみなさい、彼らは苦しみを取り除いてほしいのよ、

誰がその役目を担ってるとおもってんのよ、私たちがやらなきゃほかに誰ができるっていうの、

誰のおかげで平均寿命が年々伸びてると思ってんの」

「どうしてそう簡単に自分のすることを正当化できるんだ、

どうして延命が正義だと言い切れるんだ」

「あっ、いったわね、あなたは長生きしたくないのね、

明日車にひかれてはらわたぶちまけながら

うちの病院に担ぎ込まれても助けてやらないわよ」

「医療制度の一部にしか過ぎないあなたにそんな芸当ができるはずがない」

「重ね重ね甘いわね、すねかじってるくせに文句だけはうるさく言う、

あなたの本性がはっきり見えてるわ、法が常に正しいとは限らないように、

法が常に守られるとは限らないのよ、あなたも今はぴんぴんしてるけど、

いつ死のふちをのぞき見ることになるかもしれないのよ、そのときせいぜい

今までの無意味な人生を悔いるがいいわ」

「いやです、謝ります、いえ、謝らせて下さい、ごめんなさい、長生きしたいです、

なんでもしますから、どうか助けてください」

「あーあ、私たちはね、あんたたちと違って忙しいのよ、

せっかく時間を割いて来てやったのに、

あなたのせいでコンパが台無しよ、まったく、どうしてくれるの。あら、もうこんな時間、

そろそろ店をかえましょう、二次会よ、カラオケでいいわよね」




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