「こいつこれから女と飯を食いに行くんだぜ」
「風呂には入っていくのか」
「何でそんなこといわなきゃなんねえんだ」
「一体その女は何者なんだ」
「バイト先の新入りらしいぜ、年は十九」
「処女なのか」
「どうなんだ」
「だからなんで俺がいう必要があるんだ」
「処女だったらいいのにな、と考えているだろう」
「そこまで考えないよ、俺は」
「ならどこまで考えるんだ」
「かわいいらしいぞ」
「なんでお前が知ってるんだ」
「こいつ、俺と二人っきりのときなら、嬉しそうに喋るんだ」
「お前たち仲良かったのか」
「そうだ、お前らこそ、お似合いだ」
「特に仲がよいというわけではないだろう、我々は派閥は作らない規則ではなかったか」「それで実際彼女はかわいいのか」
「質問の意味が分かりかねる」
「といいつつ、彼女の笑顔なんか思い浮かべているんだろう」
「そうそう、笑顔がかわいいらしいぞ」
「笑顔はかわいく見えるもんなんだ」
「いや、彼女の笑顔は特別なんだ」
「ついに白状しやがった」
「相好が崩れてきたぞ」
「そうかあ、この前振られてからもうかれこれ、どのくらいになるんだ、あのころが懐かしいなあ」
「そういえば、俺は今でもあの娘が好きだといっていたのはなんだったんだ」
「そんなこといった覚えはない」
「この二枚舌」
「それで計画のスパンはどのくらいに見積もってるんだ」
「今日中に決めてしまうのか」
「だから風呂に入るのか」
「エロ河童」
「いやだねえ、どんな子か想像もつかないからその子の裸もイメージできないけど、いやだねえ」
「なんでいきなり裸になるんだ」
「裸にならないなら風呂に入れないだろう」
「風呂に入るって誰が決めたんだ」
「はいらねえのか」
「風呂っていうのに、シャワーも含まれてるのかい」
「あたぼうよぉ」
「つまりだ、二人にはシャワーなんて必要ないんだ」
「なるほど、汗や垢なんて気にならないっていうわけね」
「くさいのはいやだろ」
「愛があれば嗅覚は鈍る」
「鼻が詰まってるだけじゃねえのか」
「愛があれば鼻水が出る」
「あ、そうか、愛っていうのは空気中に漂っているんだ、花粉みたいに」
「愛はアレルギー」
「俺は鼻が詰まったこと多分ないよ」
「それでよくここまで生き延びてこれたもんだねえ」
「文明のお陰だ」
「だれの文明だ、いったい」
「しるかそんなもん、ただなんだよ、誰でも使えるんだ、人類はすべからく均等に」
「文明をいうなら女引っ掛けてニコニコしてんじゃねえよ」
「俺はまだ文明なんていう言葉ひとこともいってないぞ」
「いっしょだよ、聞いてるのも喋ってるのも一緒なんだよ」
「どういう意味だそれは」
「人類はすべからく…」
「まだいってんのか」
「とにかくポコチン野郎は文明をいうんじゃない」
「そうだそうだ、粘液も開脚も勃起も腰の回転も非文明的だ」
「勃起もか」
「うん」
「お前は勃起しないのか」
「インポテンシャルだな」
「性欲がないんじゃないのか」
「性欲はある」
「性欲こそ非文明的だ」
「ならば我々は皆、野蛮なのか」
「俺はいやだな、野蛮人」
「仕方ない、性欲は文明的なことにしよう」
「そんなんでいいのか」
「喋る気なくすよ」
「だってしかたないだろ、我々は猿はいやなんだから」
「女への挿入も認めろよ」
「そこまでは譲れない」
「何なんだ、その基準は」
「貴様童貞だな」
「馬鹿いうんじゃない」
「おれ知ってるよ、こいつの昔の彼女」
「お前こいつの味方すんのか」
「どこまで僻むんだ」
「もてねえやつばっかだもんな、我々は」
「性欲はあるのにな」
「オナニーは文明なのか」
「またその話かよ」
「もちろんそうだ」
「猿もオナニーするぜ」
「猿はさ、オナニーしだすとやめないんだ、何十回も」
「お前は何十回もオナニーすることあるのか」
「何でそんなこと教えなきゃなんねえんだ」
「文明的なオナニーかどうか見極めるのは回数だからさ」
「おれは自分でいうのもなんだけど文明的なオナニーだよ」
「セットで認めざるをえないもんな、ここまできたら」
「でもね、わたしはオナニーも何にも全部、下品でいやらしい行為だと思うわ、自分の肉体の自然と脳が戦うわけだけど、あなたたち負けてるのよ、控えめに見ても引き分けね、あなたたちは脳の中に住むことはできないの、男も女もないわ、女には生理があるけど、男には安易なオナニーがあるわ、それともあなたたちには脳がないのかしら、脳はあって当然と思っているのでしょうけど、誰も自分の頭を割ってみたことはないでしょう」




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