前作を見たのはずいぶん前のことであり、またわかりにくい映画であったのでほとんど忘れてしまい、今回の作品と比較することは難しい。そういえば前作にはエマニュエル・ベアールが出ていたかしらん。
 とにかく微かな記憶によれば前作ではこれほどトム・クルーズは判断基準に女を据えたりしていなかったはずだ。任務を遂行する上でかくも露骨に私情をはさまなかった。ストーリーに口を出せば、トム・クルーズが女に出会う前にその目的を伝えておいても別にかまわない。そうすればトムは女とどうこうすることもなかっただろう。しかし、もう少し考えれば具体的な目的「女を男にぶつけて、閨房で情報を得るという)を知っていようがいまいが、プロであるなら、女は仕事の相方、道具に過ぎず、にもかかわらず結ばれてしまったということは、それほど強い運命性があったということになる。さらにしかし、トムはその目的の中身を知らされて激しく動揺する。これはプロとしてカッコ悪い。自分が動揺するような性格であるなら、それを改善するか、それをあらかじめ認識し、女に愛情を抱かないよう心がけるべきだ。
 だからラストシーンで平凡な夫婦みたいに人の群れる平和な公園に溶け入ってしまうことになる。もう二度と姿をあらわさないという意味にしか見えない。
その他は特にいうこともないよく出来たアクション映画だ。トムがワイヤーでぶら下がる、あの好評のシーンは今回も踏襲されている。
 アクションシーンはジョンウーならではの執拗なカメラワークで迫力がある。ただ、バイクを使うと急に泥臭くなり、あるいはテレビゲームのようになってしまう。トムがバイクに乗るのはわからなくないが、敵役の男までバイクに乗る必要はない。またスタントマンを使うので顔を隠すためにサングラスをかけなくてはならない。でも巧みにバイクを扱う様子は感心してしまう。格闘シーンはマトリックスに負けず劣らずである。スローモーションはもともとジョンウーのやり方だったのだ。
 お馴染の鳩も飛ぶ。今回はあつかましくも、微妙にストーリーに絡んでくる鳩がいた。監督の鳩への思い入れは不気味である。
 ぼくはあまりジョンウーが好きではない。顔のアップが多すぎて胸やけがするからだ。またカメラがせわしなく動くから落ち着かない。しかし、見せる側からすれば観客の頭を痺れさせて映画の良し悪しも何もかもわからなくしてしまう、といううまい手ではある。だが今回の作品ではずいぶんすっきりした印象もある。ひょっとしてジョンウー自身は物足りなかったのではないか。ピストルを両者突きつけあってしばらくにらめっこして、その周りをカメラがぐるぐる回るシーンもなかったし。




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