ピース・ブレイカー

 

 自慢にも何にもならないが、クウヤは弱い。一応銃は持っているがそれはあくまで脅しのためで、実際に撃ったことなど一度もなかったりする。何しろ頭一つで世の中は渡って行けると考えていたし、旅に出るまでは本当に頭一つで渡って来れたのだ。

 そんなはずが、あるわけないのに。

 獣に言葉が通じないように、脳みその代わりに腐った筋肉が詰まっているようなバカ相手には、口の上手さも頭の回転も全く意味がない。生物としてどっちが高等なのかはさて置いて、殴り合いにおいてどちらが有利なのかは考えるまでもない。頭一つでは世の中は渡って行けない。身を守るのは頭脳ではなく、力なのである。

 それを踏まえた上で。

 チンピラ四人に路地裏で囲まれているクウヤは、一体どうすればいいだろう?

 

 脱ぐ。

 最初に思い浮かんだのがその案であることに、クウヤはさすがに自分の頭を疑った。こういう場合に真っ先に思いつくのは、普通金であるはずだ。脳みそのどこかが腐り落ちているんじゃないかと思う。

 とは言え、金を差し出すにしても、大した持ち合わせがあるわけではない。ちょっと良いところで夕飯を食べればそれっきりという額である。これだけで許してもらえるかどうかは、疑問だった。下手すると「盗って来い」とか言われるかもしれない。

 周囲を見る。薄暗い路地裏。自分は壁際に追い詰められていて、その周りをチンピラ四人が囲っている。通りからは何をやっているか見えないだろうし、見えたとしても、何かしようとする人間は稀だろう。通りすがりの正義の味方など、期待できるはずもない。町に入るまでは仲間が一人いたのだが、そいつともはぐれてしまっていた。

 自分を囲っている四人を、それとなく観察する。全員クウヤより背が高い。おまけに体格もいい。

 対するに。こちらは細身でさほど背が高いわけでもなく、武術の心得があるわけでもない。銃が一丁あるにはあるが、それだってたかが知れたものだ。筋肉バカを舌先三寸で言いくるめられるとも思えない。

 結論。絶体絶命。

 金の切れ目が運の切れ目――とは誰の言葉だったか。確かに金がなくなると同時に運もなくなった現状。至言だよなぁなどと、言葉の本来の意味とは少しずれた感心をしていると、頭上から声がした。チンピラの一人が発したものだ。

「おい、兄ちゃんよ」

 十七歳のクウヤより明らかに年上のチンピラは、そう言ってきた。その威圧感と言ったら。クウヤはその瞬間に全てを諦めて、答えた。

「は、はい……あ、あの、お金はあんまり持ってないんですけど……」

「あ!?」

 怖ぇ。

「す、すみませ……っ あの、その!」

「金なんかいらねえっての。んなもん有り余ってんだからよ」

「盗って来いというのはできれば勘弁して頂きたく……は? じゃ、じゃあ一体?」

 金ではなければ何なのか。怪訝に思うクウヤに、チンピラたちはにんまりと笑い、

「脱げ」

 人間は本気で驚くと石になる。今のクウヤを見れば、誰もがそれを納得できるだろう。

「……………………………ハ?」

「いやだから脱げっての。分かる? 服を脱ぐんだよ」

「…………フクヲ?」

「脱ぐの」

「ヌグ?」

「そう」

 間抜けなコントのような受け答えからたっぷり五秒後。ようやくクウヤの脳みそが、嫌がりながらも渋々活動を再開する。石化していた全身が徐々に肉体的柔らかさを取り戻し、感覚が消え去っていた指先に血が通い、チンピラ四人のお眼鏡に適ったらしい顔が驚愕に歪む。

「うええええええええええ!!?!!?! ちょちょちょちょっと待ってって言うか僕は別に同性愛を差別するわけじゃないけど何ていうか相互の理解? やっぱりお互いにイエスと言わなければそれはどう言い繕ってもただの陵辱でありましてだからこそイエスノー枕が存在するわけであり奥さんがノーと言えば旦那がどんなにサカっていようとその日行為に及ぶことは厳禁なわけでそれは同性でも決して変わることはないわけで更に言わせてもらえば何かちょっとキモいって感じでつまり誰が脱ぐかアホンダラァァァァァァ!!」

 何をどんな風に口走ったとしても、クウヤに罪はそれほどないはずである。

 それだけショックは大きかったのだから。自分が「脱げ」と言う場合なら、まだ、夜空の星が全て自分に向かって特攻をかけてくる事の次くらいに可能性があっただろう。が、同性のしかも見も知らぬ他人からいきなり「脱げ」と言われる可能性は、それよりずっと低いと思っていた。どっちかと問われたなら、夜空の星が全て自分に向かって特攻をかけてくる方が、まだありそうな気がしていたのだから。

 だがしかし、言われているのは事実なわけで。

 もっと言えば、さきほどの大演説のうちに、チンピラ四人の逆鱗に触れるようなことを口走ったのも事実なわけで。

「……ってめ、この! 優しくしてやりゃつけあがりやがって!」

 いつどこで優しくしてくれたのか激しく疑問だが、そんなことを問うても答えてはくれないだろう。手が何本か伸びて来ているし。服が破かれようとしているし。

「って、やめろ! 離せ、やめ……やめてぇ!!」

「うるせぇ!」

 クウヤもじたばたと暴れるが、四人対一人では勝ち目がない。銃を、と思うが、抵抗する方にばかり意識が向いて手が思うように動かない。こうなったらせめて優しくしてくれるといいなと、割と余裕のある言葉が脳裏をよぎった、そのとき、

「……あー、盛り上がってますねえ」

 間延びした声がした。クウヤにとっては聞き覚えのある声。

「ジュリ!?」

 思わず叫ぶ。その声に、チンピラ四人が一斉に声のした方を向いた。

 少女、である。にこにこ微笑みながら、第三者のようにこちらを見ている。

 白い服にスカーフ。ツバの広い帽子を目深に被っていて、下から覗き込まなければ目が見えなくなっている。ショートカットにした焦げ茶色の髪。小柄で細身の体格。

 そして、腰に差している不似合いな武器。カタナと言うらしい東洋の剣。遠目からも、ずっしりと重い感じが伝わってくる。

 町に入っていきなりはぐれた、クウヤの旅仲間。

「突然いなくなったと思ったら、何いきなりレイプされそうになってるんですか? しかも相手四人だし。このまま行くと伝説の五人同時プレイだし。と言うかクウヤさんって本当は女性? そういう設定でしたっけ?」

「好きでこんな状況になってるんじゃないし伝説なんて知らないし僕はれっきとした男だよ! 何だよ設定って! と言うか何傍観者決めこんでんの! 助けてよ!」

「男の人としてその叫びは正しいのでしょうか。それより、やっぱり男ですか。しかもレイプに関しては否定しないんですね。まあ、そうすると男五人? 禁断の薔薇園ですか? ちょっと興味ありますね」

「わー! 妙なもんに興味示すなー! いいから助けて! 早く!」

 恥も外聞もないクウヤの必死の叫びにも、ジュリは「?」と笑って小首を傾げることしかしない。コノヤロウと思うが、今は彼女に対する報復よりも助かることが先決である。幸い、チンピラ四人はジュリの登場で呆然としているようだ。今のうちに包囲から抜け出せば――

「あ、わたしのことは気にしないでいいですよ。って言うかむしろ魅せてください。漢の生き様を」

「お、おお!」

 やる気になりやがった。

 ホモである時点で漢の生き様の斜め上を突っ走っている気がするが、そんなことは現時点で考えるべきことではない。包囲が再び迫ってくる。何か手はないか。何か、何か、何か――

 閃いた。

「ジュリ!」

 目を輝かせて(いるのだろう、多分)身を乗り出している少女に、クウヤは叫ぶ。

「こいつら実は町の実力者の息子でつまりこいつらを倒せば町の実力者を敵に回すってことで、それで戦って倒せば――」

 一番大柄な男に、服を掴まれる。

 自分とジュリの立場が逆なんじゃないだろうかとか、そんなことを考えている暇などない。

「世界を乱すことができるよ!」

 その直後。

 服を掴んでいた一番大柄な男が、文字通り吹っ飛んでいた。ビリィッと、彼が掴んでいた服が破れる音が聞こえる。目の前に迫っていた体が徐々に遠ざかる。向こうの仲間の間をすり抜けて、反対側の壁に、

 激突した。もの凄い音がした。

 そしてクウヤの前には、どこをどうやっていつの間に現れたのか、ジュリがのほほんとした雰囲気のまま立っていた。

「今の言葉は本当ですか?」

「え? あ、ありが――」

「今の言葉は本当なんですよね?」

 お礼を言おうとするが、そんなものには何の価値もないとばかりに、質問を繰り返してきた。あくまで雰囲気は変わらない。変わらないが、二度目の声は若干の険が混じっていたようにも聞こえた。

「あ、いや……」

「嘘だなんて言いませんよね? もしそんなことを言ったらわたしが直々に犯させますよ。クウヤさんって童顔ですからね。“あそこ”ではいい生贄ですよね本当に。ああ可哀想に」

 あそこってどこだよ、と思わなくもなかったが。それよりも彼女を言い含める方が重要である。

「ああいやその、何て言うか……うん」

「嘘なんですか?」

「嘘じゃないけど、何て言ったらいいかな、うん。えーっとね……」

「嘘なんですね」

 ふう、と、小さなため息が聞こえた。

「……短い間だったけど、楽しかったです」

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って。“あそこ”ってどこ? 僕の人生が終わるほど凄い場所なの?」

「お前ら! 俺らを無視すんな!」

 残り三人となったチンピラが、忘れられていた存在をアピールしてきた。

「調子に乗りやがって……不意打ちが成功したからっていい気になってんじゃねえぞ!」

 と、ジュリに向かって怒鳴り、次いでクウヤに向いてきた。

「お前がどうやって俺らのことを調べたのか知らねえが……まあいい。じっくり責めながら聞き出してやるよ」

 下卑た笑み。

 背筋に寒気が走るクウヤの前で、ジュリがポツリと呟いた。

「嘘から出た真というやつですか……良かったですね、クウヤさん。血便が出るまで掘られるところでしたよ」

「……そういう描写は、女の子はあんまり口にしない方がいいと思うな」

「さてまあ、それは置いといて」

 ぎゃーぎゃー喚いているチンピラ三人をきっちり無視し、ジュリは一言。

「二秒以内に終わらせます」

「……殺しちゃダメだよ?」

「心配しなくても、大事な人質ですから。一人は確実に大丈夫です」

「ひと――」

 言い終わらないうちに、ジュリの姿は消えていた。

「――りはって、」

 そして、そう言う頃には、チィンという納刀の音。ジュリは既にチンピラ三人の向こう側に屈んでいる。

 その三人が、突然、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。全員白目をむいている。血を流したりしている奴は……一応、いない。

「今日は調子がいいです」

 遅かったか、とため息をついているクウヤに、ジュリは口元だけで微笑みながら言ってきた。

「ちゃんと峰打ちが成功しました」

 苦笑する以外にない。

 

『世界の平和を乱すため』

 それが、ジュリが刀を手に戦う理由なのだと言う。

 初めて会ったときはネタかと思ったが、どうやら彼女は大真面目らしかった。たった一人で、本気で世の中を混乱に貶めようとしている。無理だとは何度も言ったし、理詰めで追い詰めたことも数え切れないほどあった。刀一本でできることなど、たかが知れている。誰だって分かることだ。

 けれど、彼女は言葉に詰まることはあっても、決して諦めようとはしなかった。

 その理由もクウヤは知っている。知っているが、納得はしていない。どういう理由であれ、彼女がやろうとしているのは間違いなく大罪であり、一種の狂信めいた感情である。同情や共感など、しろと言う方が無理な話だ。

 それでも、クウヤはジュリと一緒にいる。

 彼女が世界を乱そうとする、その歯止め役として。

 そしてできれば、その狂った感情から、彼女を救ってあげるために。

 

 ……だが、その決意は、今のところ全く意味を成していなかったりもする。

 嬉々として捕らえたチンピラ四人を縛り上げているジュリを見ながら、クウヤは黙っているしかない。助けてもらった直後に強気な発言などできようがないし、それに今回は、結果的にそうなっただけとは言え、我が身可愛さに世界平和を乱すことに加担してしまったのだ。

 救ってあげるどころか、更に深みに突き落としてしまった。あまりに情けない。

 歯止め役が手を貸してどうする。誰も叱ってくれないので自分で自分を叱っていると、ジュリの不満そうな声が飛んできた。

「クウヤさん。そんなところで傍観してないで、手伝ってくださいよ」

「……ああ、うん……って、何を? もう全員縛り終えてるじゃん」

「とりあえずこの四人を抱えて適当な軟禁場所まで運ぶ係を担当してもらおうかと」

「ごめん普通に無理。て言うか運び終わる前に僕が捕まる。思いっきり誘拐犯だよ、その姿は」

「そうですか? この四人の人相なら、どっちかと言うと悪者を捕まえて連行している正義の味方に見えると思いますけど……でもまあ、どのみちクウヤさんの体力がもちませんか………………役立たず」

 最後にボソっと呟かれた言葉は、果たして聞こえるように言ったのか。

 少し待ってみても反応がなかったので、クウヤは聞かなかったことにした。下手に藪を突付く必要はない。

「で、どうするのこの四人。個人的には放置して宿を取りたいんだけど。お金も入ったし」

 チンピラ四人の財布の中身を全て巻き上げたおかげで、当面の間は金の心配は不要となっている。実力者かどうかはともかく、金持ちの息子たちであることは間違いなさそうだった。

「倒した意味がないじゃないですか。使えるものは最大限に使わなければもったいないです。人質として価値があるなら使うべきです」

「でも、どこに捕まえておくのさ? ここに縛り付けとく?」

「それだと誰かに見つかっちゃうかもしれませんから……埋めておきましょうか。顔だけ出しても、上から箱でもかぶせておけば見つからないでしょうし」

 人権も何もあったものではない言葉。危うく襲われそうになったクウヤだが、さすがにその案には賛成しかねる。

「それはちょっと……もうちょっと奥に転がしておけば大丈夫じゃない? どこかに縛り付けておけば逃げられないだろうし」

「甘いです。尖った石でもあれば縄もいずれ切られてしまうかもしれません……あれ? 起きてたんですか、鬱陶しい」

 さりげなく辛らつな言葉を加えながら、ジュリはふと横を見る。チンピラのうち一人が目を覚ましていた。最初に倒された大柄な男。派手に吹っ飛んでいたが、鉄製の刀で殴られるのに比べれば、小柄なジュリの体当たりの方が威力は少なかったらしい。

 男は何やら憤怒の表情でジュリを睨んでいるが、いかんせん猿轡を噛まされている状態では喋るに喋れないのだろう。

 その表情を見て、ジュリが鼻で笑う。

「何ですかその負け犬そのものなツラは。あれですか? こんなことしてただで済むと思ってるのかってやつですか? 言っておくが俺の父親はどこそこの偉いさんと知り合いでってパターンですか? 親の威光も武器のうちと言えばまあそうですけど、見苦しいですね。女の子に負けておいて、まだそんなことを言うつもりだなんて。そんなあからさまなザコキャラやってないで、潔く負けを認めて人質になったらどうですか? 既に地の底まで下がりきった貴方の評価ですが、そうしておけば地下にまで落ち込むことはありませんから」

 グサグサグサグサ。ジュリの言葉の一つ一つが、彼の胸を抉っている。手に取るように分かる。憤怒から、事実を言い当てられたことの驚き。ナイフで突き刺された方が幾分マシなような言葉の暴力、それによる計り知れない精神的ダメージ。見ているクウヤまで同情したくなってくる。

 目の光を急速に失っていく男に対し、ジュリはなおも言葉を続けた。

「あら、けっこう打たれ弱いんですね情けない。まあいいです。貴方の男度なんかわたしの知ったことではないですし。それより人質としての心構えができたなら、拷問される前に質問に答えるべきだと思います」

 夢も希望も失ったような顔の男は、ジュリの言葉に人形のように頷いた。どうでもいいが、拷問する気だったらしい。

 一体何をするつもりだったのか……薄ら寒いものを感じるクウヤの目の前で、ジュリは男の猿轡だけ外してやっている。すっかり大人しくなってしまった男は、ただされるがままになっていた。哀れの極みである。

「それでは質問します。嘘をついたら泣いて謝るまで痛めつけるので覚悟してください。具体的に言うと○○を××してから△△に□□など……」

「じゅ、ジュリ。そのへんは具体的に言わなくていいと思う。て言うかやめようよ、そういうこと言うの。一応女の子なんだからさ」

「今何か男女差別と言うか、わたしがまるで女の子ではないような発言が聞こえたような気がしましたが。まあいいです。でも次に言ったら容赦しませんよ。謝るまで許しませんからね」

 謝ったら許すらしい。言葉の割に易しい条件である。

 はいはい、と頷くクウヤから、ジュリは再び男の方に向き直った。告知するまでもなく嘘などつきそうにない(と言うより、つけそうにない)男を前に、口を開き――

 そのまま停止すること二秒。怪訝に思うこちらの方を再度向いて、

「何から聞きましょう」

「何からって……家族構成とか?」

 適当なことを口にするクウヤ。すると、ジュリはあからさまに不満そうな顔をした。

「こんな根性もなければ潔さもないホモのロクデナシの家族構成なんか聞いてどうするんですか。砂漠の砂粒が幾つあるか並に興味のない疑問ですよ。それとも何ですか? クウヤさんは興味あるんですかこんな社会のクズのプロフィールに。襲われること、実はちょっぴり期待してたんですか? Mですか。メチャクチャにして欲しいんですか」

 適当に思いついただけの言葉なのに、どうしてここまで言われなければならないのか。

 世の中の不条理さを噛み締めつつも、ここで引き下がってはクウヤもまた“根性なし”に仲間入りさせられてしまう。旅仲間にもジュリは容赦ない。

「じゃあ……父親の仕事とか。何をやっている人間とかを知っておけば、やりやすいと思う。あと家の場所とか、間取りとか、使用人含めた人数とか。そのうち護衛が何人で、武器がどれくらいあるのかも大まかでいいから知っておいた方がいい。こっちから攻める場合は、そういう情報も必要になるだろうから」

 言っているうちに、歯止め役どころかむしろ良き相棒と化していることに気がついた。救うどころではない。このままでは、クウヤもジュリと一緒に奈落の底まで転落してしまう。

 だが、しまったと思ったときにはもう遅い。ジュリは「ふむ」と頷いて、心なし満足そうな表情でこちらを向いた。表情と言っても、見えるのは口だけだが。それでも微笑んでいることは分かる。

「そんなところですね。さすがクウヤさん、ここにいるクズ連中とは一味違います。それでこそわたしのパートナーです」

 パートナー。いつの間にか、彼女の中ではクウヤは相棒となっていたらしい。

 泥沼にはまってもがいている自分がやけにリアルに想像できる。そんなクウヤに構うことなく、ジュリは三度男に向き直った。

「では。今のを聞いていましたね。可能な限り全て答えてください。可能じゃなくても全部答えなさい。普段全く使ってない穴だらけのスポンジみたいな脳みそでも、絞りつくせばそれなりに出てくるでしょう。制限時間は五秒です。はい、始め」

 人間、限界までコキ下ろされると本当に白くなるらしい。

 いち早く目覚めてしまったために、言葉の刃に晒されている男を見ながら、クウヤはそんなことを考えていた。

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