『おじいちゃん事件簿』
連日続く熱帯夜、子供がようやく寝てくれ、
ひとときの自由な時間を満喫している中、
それは突然やってきた!
「ガチャガチャッ!」
「なんだ?」
ドキッとしながら妻と2人目が合う。
「ガチャガチャガチャッ!」
再び奇妙な音がした。
「玄関だ!」
妻が先に玄関に向かおうとした。
ちょっと恐かったので、このまま先に行かせようかと思ったが、
ここはやはり一家の大黒柱!
仕方がないので自分が先頭で玄関に向かう。
「ガチャガチャガチャ!ガン!ガン!」
その音はどうやら玄関のドアを開けようとしているようだった。
って言うか、鍵が少し開きかかっている!
「ヤバイ!」
直感的にそう感じ、鍵を押さえながらドアチェーンを掛ける。
そして、ドアの覗き穴に目を近づけると・・・
そこには白装束のおじいさん、いや、白い下着姿のおじいさんが眼に映った。
そして何故だかわからんが、「はぁはぁ」言い汗だくになりながら、
必至の形相で我が家のドアをこじ開けようとしているではないか!
妻もその光景を目の当たりにし、「なんなの?この人?」
そんなことは、僕にもわかりません!
突然の出来事に唖然としてドアの外の光景を見ていると、
「とりあえず警察に電話するね」
と言う妻の声。
この状況下で冷静なご判断。
さすが先生!伊達に我が家の実権を握ってはいません。
こういう時のために税金払ってるんだから、警察の皆さんには、たっぷり働いてもらいましょ。
眼の前の状況も恐かったが、初めて110番する事へのドキドキもあってか、
腕には知らず知らずの内に鳥肌が立っていた。
早速、妻が警察に電話しに行くが、
その間にも、外のおじいの行動がエスカレートして行く。
「ガチャガチャッ!ガンガンガン!」
「はぁはぁはぁ・・・」
挙句の果てには、ドアの郵便受けにまで手を入れてくる始末・・・。
何か人に恨まれるような事でもしたか?
自分に問いただしてみるが、特に思い当たる節はなく、それに、こんなおじいなんか知らん!
もう、いったい何が目的なんですか!?
だんだんと恐怖から怒りへと変わって行くのがわかった。
ドア越しに良く見ると、ヒョロヒョロのおじいだし、
出て行って、ぶん殴ってやろうかとも思ったが、
そこはやはり、最近の物騒な事件を考えると、うかつに外へは出られません。。
そんな事を頭で考えている内に、おじいの行動が突然止まった。
「???」
ドア越しに外を覗くと、おじいが諦めたのか階段を降りて行く。(うちは5階建ての5階)
このまま逃がしてたまるか!と、
警察への電話が済んだ妻には、1階の階段からおじいが出て来ないか窓から覗いていてもらい、
オレは携帯で妻と連絡をとりながら、階段を降りて行く準備をした。
しかし、一向におじいが外へ出てくる気配はなかった。
シビレを切らし、オレは階段を少しずつ降りて行く事にした。
数段降りて行くと、階下からおじいの声がする。
「ピンポーン!すいません開けて下さい。」
どうやら下の方の家のチャイムを鳴らし、叫んでいるようだ。
おじいの行動が全く理解できず、どうしようか悩んでいると、
おじいが再び階段を少しずつ上がってきた。
慌てて再び家の中へと戻り鍵を掛ける。
「警察にもう一度連絡してくるね!」
妻が再び警察へ電話をしに行った。
まったく警察は何してるんだ?善良な市民がこんなにも恐怖にさらされているというのに!
オレはおじいとの2度目のコンタクトに備え、ドアの内側で待機する。
「家族はオレが守る!」
ちょっとした正義のヒーロー気取りで身構えていたが、一向におじいはやって来ない。
「どうした?何を企んでいる?」
焦るオレに妻の声が。
「警察やっと来たよ!」
ふぅ・・・なんとか逃げきったか?
妻と2人、少し安堵の表情が浮かぶ。
間もなく階下では、警察とおじいの会話する声が聞こえた。
そして、警察官の1人がうちへとやって来た。
これまでの状況を一通り警官に話し終えると、おじいの事について警官が口を開いた。
「どうやら自分の家と間違ったみたいですねぇ・・・」
・・・・・何ですと!?
よく話を聞くと、どうやら同じ棟で隣の階段の5階に住んでいるらしい。(うちは団地なのです)
「今、確認してきますから」
警察が一旦出て行くと、妻と2人その場にヘタヘタと座り込む・・・。
しばらくすると、さっきの警官が再びやって来た。
「やっぱり家を間違ったようです。1階の郵便受けを見に行ったあと、
なぜか隣の階段を上ってしまったようで・・・」
さらに話を聞くと、どうやらおじいは痴呆症で1人暮らしということ・・・。
我が家には何の恨みもなく本当に家を間違っていたらしい。
初めに家の鍵が開きかかっていたように見えたのは、
おじいが自分の家の鍵で開けようとしたため、少しだけ動いていた様子。
謎はすべて解けた!
この結果、数十分間におよぶ孤独な恐怖との戦いに終止符が打たれた。。。
今回の事件での教訓・・・ドアの鍵とチェーンは必ず掛けましょう!
そして、武器になりそうなものを置いておいた方がよろしいようで。。
しかし、この事件、今年の我が家の重大ニュースの上位に入る事は・・・間違いない。
最後に、この一連の騒動の中で終始目覚める事のなかった我が息子は、大物なのか?鈍感なのか?・・・・・