神器
〜ZINKI〜
第一話
「ささいな違い。大きな変化」
「あっっっっつぃぃぃ〜」
季節は初夏。
日本は地獄のような暑さだ・・・。
まったく、神様がいるんなら、こんな暑い季節どうして作ったんだろ。
なんて、独り言を言いながら私は幼馴染の待っているはずの’いつもの場所’へ向かい歩いている。
私、一条響(いちじょうひびき)は今年高校1年になったばかりの「普通」の女の子だ。
・・・・・。
・・・まぁ、普通でありたい。
私は人から見れば普通でない、らしい。
まぁ、家系は元来より悪霊払い(私は信じてないが・・・)をやってる住職の家系だし、
普通では無いのかもしれない。
しかし、暑い…。
今日も学校、明日も学校、明々後日も学校、夏休みまで後わずかだがこう暑いとサボりたくもなる。
しかし、そんなことも言ってられない。
あいつがまってる・・・・。
・・・
・・・・・・・・
ついた・・・。
幼馴染といつも待ち合わせをしている河原へついた。
いつも二人で学校へ行くとても仲のよい幼馴染。
幼馴染の名前は「長谷川 健」(はせがわ けん)
小、中、高と一緒の学校、同じクラスといった腐れ縁な仲なのだが、よい友達だ。
私にとっては友達というより、兄弟という感覚が大きい。
近所に同い年の子供が私と健しかいなかったので、うちの両親と健の両親はとても仲がいい。
私たちも他に遊ぶ相手がいなく二人で良く遊んでいた。
健の家は健が小学校の途中で引越しをしたが、(といっても、一丁目から三丁目に移っただけだが・・・)
その後も両親、私たちの縁が切れる事はなかった。
お互いに言うでもなく、双子の兄弟が一緒にいるように、いつも一緒だった。
学校に行くのも例外ではない。
ごく自然に決まった、ここの河原での待ち合わせ。
ふいに風が吹く。
このけだるい暑さだとちょっとした風さえとても気持ちがいい。
川の近くということもあり、ここの風は涼しかった。
しかし、今日のこの河原はいつもと違っていた。
「健が・・・いない・・・?」
そう。健がいない。
健は生真面目で毎日この時間は必ずいる。
いつも私より早く来てるはずなのに、今日はその姿が見えない。
・・・5分・・・
・・・10分・・・
・・・15分・・・
どうしたんだろ?
腕時計を見つつ、少し首をかかげる。
このままだと学校に遅刻してしまう。
仕方がないので私は学校へ向かった。
途中、背筋に嫌悪感を感じた。
が、ささいなこと、なにより遅刻しそうなので気にしないで歩いていった。
学校に着いたら健の席が空いていた。
あいつは馬鹿正直、生真面目、健康の三つがとりえなのに・・・
「夏風でもひいたんだろうか?」
そんなことを思いながら、カバンから教科書を出し、机の中に入れた。
・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
今日は先生が来るのが遅いな・・・。
そんなことを思ってると、クラスがざわめきはじめた。
そんな中、一人の女の子が私の横に来た。
「ねぇ〜今日は夫はどうしたのよ?」
と、からかう調子で話しかけてきた。
彼女の名前は「東 恵美」(あずま めぐみ)
女子の中では一番仲がいい。
いつも私をからかってくるが、どうも憎めないところがある。
いわいるカリスマなのだろう。
彼女はいつも私と健の仲のことでからかってくる。
彼女曰く、
「幼馴染がくっつくなんてベタだけどけっこうあるよのねぇ〜」
らしい。
「夫って、そんなんじゃないって。いつもいってるでしょ〜。」
と、いつものようにあきれながらに言い返す。
「それに健が学校を休む日を私が一々把握しますかって。」
「えぇ〜、じゃあ今日さぁ〜健君どうして休みか知らないのぉ〜??」
と不思議そうに聞き返す。
「あたぼう。」
と少し睨み付けながら言い返す。
しかし、恵美はそんな私の視線を全く気にせず話を続ける。
「でもさぁ〜健君が休むなんて珍しいよねぇ〜、ってか初めて?」
確かに・・・
私も考えをめぐらせたが健が休むなんてかなり珍しい。
いや、小、中、高一度も休んでない。初めてだ。
私が学校を休むと必ず学校のプリントやら何やらを届けてくれるのが健だ。
「そうだね。あいつ、‘皆勤賞は必ずとる!‘ってうるさい位言ってたのに・・・。
どーでもいいけど、休むんなら私に連絡入れろっつうの!おかげで遅刻しそうだったじゃない!」
と、今朝のことを思い出し、少し怒りながらいう。
恵美がニタッとしながら、
「おっ!夫婦喧嘩勃発か!?あ、痛ッ!!」
私は恵美のセリフを聞き、すかさず’でこピン’をかます。
恵美は悪びれた笑顔をうかべ、
「この、照れ屋さんめ!姉さん、あんたのそういうところ、す・き・よ♪」
「もう!いいかげんn・・・・」
私の怒りが噴火する前に、教室のドアが開いた。
ようやく先生がやって来た。
クラスメイトはいっせいに席についていた。
恵美もいつの間にか席についていた。
「素早いやつめ・・・」
などと突っ込みをいれつつ、先生の方に目をやると、なにやら暗い。
しばらくの沈黙。
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
先生が口を開いた。
「今日は皆さんに悪い知らせがあります。」
みんながどよめく。
「学食の値段が上がるのか!?」
「夏休みが減るとか!?」
「ジOングに足がつかない!?」
「ドリーソキャスト生産中止!?」
・・・・・・・。
お前らの悪い知らせの代名詞はそんなもんなのか?
とあきれつつ、先生の次の言葉を待つ。
みんなのどよめきがおさまった頃、先生は次の言葉を放った。
その言葉は予想外のものだった。
いや、
私は何故か知っていたような気がした。
「長谷川 健君が今日、交通事故で亡くなりました・・・。
男性が轢かれそうなのを助けようとして、代わりにトラックに・・・。
先生は今から健君の遺体を看取りに行ってきます。」
クラスが静まり返る・・・。
私は微動だにしなかった。
健が死んだ。
その事実が受け入れられないのか・・・。
いや、この感覚は果てしない諦めだ。
この事実は現実。
私は誰よりそれが分かってしまっていた気分だった。
7月14日、真夏。
いつもの待ち合わせ場所。
いなかった幼馴染
私の日常のささいな違いは、
大きな変化に変わっていた。
神器〜ZINKI〜
第二話へ続く。