ハロウィンの日 俺は自室からリビングに降りてみると、春歌を中心に12人全員がなにかを編んだり貼り付けたりしていた。 ―――なにしてるんだ? 「おーい、なにしてるんだ?」 「あ、兄君様」 「えへへへ、なにしょのしみつ。ねえ、亞里亞ちゃん」 「うん。・・・・・・兄やには・・・ないしょ」 「えーなんだよそれぇ〜。教えてくれたっていいじゃないかぁ〜」 俺は少し甘えたふうに言ってみた。第三者からすれば、かなりの「危ない人」に見えるだろう。・・・たぶん。 「まあまあ。お兄様、私たちはハロウィンの日に着る衣装を作ってるの」 「ハロウィン?」 「まさかあにぃ、知らないの?」 「うっ。そ、そんなわけないだろう。ハロウィンって言うのはだな、つまり・・・挨拶をいっぱいする日だ」 「兄くん・・・・・・ぼけつを掘ってるよ・・・・・・・」 「うううっ」←唸っている。 「ボケツを掘った兄チャマ、チェキです!」 「うううううううっ」←泣きそう。 「お兄ちゃま。ハロウィンって言う日はね、子供たちがお化けの格好をしてみんなからお菓子をもらう日なんだよ」 「お菓子をくれなかったらいたずらしちゃうぞ! って言うんだよアニキ」 「ふぅーん。なんだか面白そうだなあ。俺もしてみようかな・・・」 「それはダメ!!」×12 俺のこととなると見事にハモるなあ。 「な、なんで?」 「え? だって、お兄ちゃん、これは子供がやる行事なんだよ?」 「兄上様には、ちょっと、似合わないかと・・・・・・・」 「クゥ〜ン、クゥ〜ン(そう、そう)」 ぬうう。ミカエルも肯定的なら仕方がない。それにみんな俺にお化けの格好はするなって、必死で目でうったえてるし。 「はああ。わかったよ、それでそのハロウィンはいつやるんだ?」 「10月の・・・・・・・31日だよ兄くん」 「後一週間か・・・」 「それまでにはみんなの衣装はできてるから、楽しみに待っててね、お兄様」 「ああ、わかった。じゃ俺ちょっとミカエルといっしょに散歩行ってくるから、みんながんばれよ」 「はーい!!」×12 ミカエルといっしょに外へ出たものの、やっぱりなんか気が引ける。 『ハロウィンの日』を知らなかったのは事実だが、 なにもみんな一斉に否定しなくてもいいんじゃないのか? まあ俺に内緒で何かをやるっていうのは日常茶飯事だし・・・。 みんなのお化け姿も見てみたいとも思う。 でもやっぱり仲間はずれはやだなあ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ! そうだよ、なんでこんな誰にでも思いつくことを思いつかなかったんだろう。 よし、これでいこう! 「クゥ〜ン?(どうしたんですか?)」 「ミカエル、みんなをあっと言わせる方法を思いついたぞ」 「?」 「くくくくっ、一週間後が楽しみだなあ。な、ミカエル?」 「ワンッ、ワンッ、ワンッ(何か知らないけど・・・がんばれ昶さん)」 「ありがとう、ミカエル」 俺はしゃがみこんでミカエルの頭をなでてやる。 犬と会話をしている高校生なんて、意地でも友達には見せられない。 まあ何を思っていて何を考えているのかわかってしまう俺が化物なんだろうが・・・。 それはそれとして、一週間後、ホント楽しみだなあ。 ―――1週間後(10月31日) みんなの話によると、行うのは夜だそうだ。 俺は本を読みながらその時を待った。 なにげなく、視線をベッド横に移す。 そこにはお菓子を大量に詰め込んだバスケットと白い箱がある。その中身は・・・・まだないしょだ。 ここであかしてしまっては、SSのネタが終わってしまう。(管理人:その通り) 本を読みはじめて三時間がたったころだろうか。 トン、トン、トン ノックの音が響いた。 「開いてるよぉ」 普段俺の部屋は特別な鍵でロックしている。 なぜかって? 対咲耶・春歌夜這い防止のためだ。 「おにいたま!お菓子をくれないといたずらしちゃうぞー!」 「兄や・・・お菓子ちょうだい・・・」 扉を開いたのは全身黒一色で統一した雛子と亞里亞だ。 細長い三角帽子と肩にのっかっている黒猫(もちろんぬいぐるみ)と手に持ったなが〜いホウキから見ると、かわいい魔女さん だろう。 「はは、かわいい魔女だね」 「おにいたま、にあってる?」 「兄や・・・・」 「ああ、ふたりともすごく似合ってるよ」 「本当ぉ? わぁ〜い」 「兄や・・・お菓子・・・」 「はいはい」 お菓子が大量に入っているバスケットを差し出すと、両手で持てる分だけ雛子と亞里亞はひっつかんでいった。 「後でみんなといっしょに食べるんだぞ」 「はーい」×2 雛子と亞里亞はうれしそうに笑いながら部屋から出ていった。時計を見るともう6時だ。 ―――そろそろかな? 俺はバスケットを持って廊下に出た。すると・・・。 「お兄ちゃん、いたずらしちょうよ?」 「お兄ちゃま、お菓子ちょうだい」 「あにぃ似合ってる?」 マントを羽織って手には杖を持っている魔法使い姿の可憐。 どでかいかぼちゃのマスク(?)をかぶった花穂。 これまた黒いマントを付けてタキシードを着て口から飾り物の牙を貼り付けた吸血鬼姿の衛。 ―――うん。みんないいセンスしてるなあ。 「3人とも似合ってるぞ」 「ホント? お兄ちゃま?」 「可憐たちかわいいですか?」 「ああ、かわいいぞ」 「わぁ〜い!」×3 3人とも異様にはしゃいでいる。元気な証拠だな。 「あにぃ、血を吸われたくなかったら、お菓子ちょうだい♪」 「そんな吸血鬼いないぞ。ほい、両手でとれるだけな」 「は〜い」×3 文字通り取れるだけとると、3人ともニッコリスマイル。なんだかこっちまで楽しくなってくる。 「みんながそろったら食べるんだぞ」 「はぁーーい!」×3 返事を返すと、3人とも一目散に1階へと駆け下りていった。 ほんと、元気だなあ・・・。 5人が両手で持てるだけ持っていったというのに、バスケットの重みは一向に減らない。 ―――ちと買いすぎたかな? そう思いながら、俺は階段に向かった。すると・・・。 「あ、兄上様」 「やっほー、アニキ」 「にいさま。お菓子をもらいにきましたですの(はあと)。」 「兄チャマ。四葉、オオカミ男デス!」 着物姿でなぜか真っ白の丸いお皿を数枚持った(たぶんお菊さんの)鞠絵。 頭から二本の角をはやした鬼の格好(のつもり)の鈴凛。 体中全部を包帯で巻き付けたミイラ(だろうか?)の白雪。 顔中に茶色の毛を貼り付けたオオカミ(俺的にはライオン)の四葉。 なんかみんな、西洋と東洋の妖怪をごちゃ混ぜにしてるなあ・・・。 「うん。みんな似合ってるぞ。ほら、好きなだけ持っていいぞ」 俺がバスケットを差し出すと、我先にと掴みかかる計8本の手。 そのうちの1本が俺のポケットをまさぐりはじめた。 ・・・・・・はああ。 「こら、鈴凛!」 「あ、あ、あははははっ・・・」 「どさくさにまぎれて財布探しか?」 「そ、そんなめっそうもない、ははははっ」 ごまかし笑いをしながら、鬼の鈴凛が立ち去っていく。 「バスケットを持った兄チャマ、チェキデス!」 「にいさま。こんな格好の姫を、食・べ・て(はあと大)」 「よし! 3人とも、下行ってお菓子を食べような!」 包帯を脱ごうとしている白雪をなんとか受け流した俺は、鞠絵と白雪と四葉といっしょにリビングに入った。 そこには・・・・・・。 「あ、兄君様」 「やあ・・・・兄くん・・・・」 「お兄様。どう? 似合ってる?」 真っ白い着物を着て頭には白の三角巾を付けた典型的な幽霊姿の春歌。 作りものの(ってか本物っぽい)黒い翼をはやした悪魔姿の千影。 赤いドレスを身にまとい、胸元を大きく開いている咲耶。 ―――・・・・・・なに!? 「咲耶、なんのお化けだ?」 「わからないのお兄様? これはマリリン・モンローの格好よ」 「マリリン・モンローはお化けじゃない。そんな格好してたらカゼひくぞ。ってかどっからその服購入してきた?」 「そ、そんなにいっぺんにつっこまなくてもいいじゃないのお兄様」 「つっこみたくなるんだよ・・・・。はああぁぁ・・・。ほら、持てるだけ持って」 「はーーい!」×3 お菓子をひっつかんでいく咲耶と千影と春歌。 「ほら、とったらみんなの所に行く」 「はーーい!」×3 12人全員がリビングに集まると、なんだか東洋と西洋の妖怪たち(一人除く)のお茶飲み会に見えてくる。 これもまた楽しい哉神家の一興だろう。 「よし、みんなそろったな? それじゃあみんな・・・・・」 「いただきまーす!!」×13 みんなが一斉にお菓子を食べはじめる。 とくに亞里亞は『いただきます』を言い終わった瞬間わずか0.5秒でチョコレートを口に運んでいた・・・。おそるべし甘党。 雑談も入り混じってみんなの意志は完全にハロウィンだ。 ―――よし。今なら・・・・。 俺は誰にも気づかれないように、そっとリビングを出た。 「ありりりり? おにいたまは?」 最初に兄がいないことに気づいたのは口の周りをチョコやアメでべとべとにした雛子だ。 「あ、ホント。可憐たちお菓子とおしゃべりに夢中だったから・・・・」 「私、呼んでくる」 咲耶が立ち上がった瞬間。いきなりリビングの明かりが消え、部屋中真っ暗になった。 「ああ! 真っ暗になったああぁ!!」 「・・・くすん。くらいの恐いです・・・・くすんくすん。兄や・・・」 「きゃー!! いやですのーー!!!」 「ふええええええんっ! お兄ちゃまあぁー!!」 まっさきに反応したのは年少組の雛子、亜里亜、白雪、花穂の4人だった。 「だ、大丈夫だよ・・・。ぶ、ぶれいかーを上げれば・・・。・・・うわああああああああ!!!!」 何かを目撃したのか、衛が壮大な悲鳴を上げた。 「ど、どうしましたか? 衛さん」 「か、かかかかかかかかか、かお、顔!!」 春歌の質問には答えることはかろうじてできるらしい。 みんなもそれに気づいたのか、一瞬にして顔面蒼白になった。 そこにはにたりと不気味に笑う白色の顔(?)が浮かんでいた・・・。 これを見て悲鳴を上げない女の子はまずいないだろう。ほらこの通り・・・。 「きゃあぁぁ――――ー!! お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん!!」 「わあああああああああ!! あにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「あ、アニキいいいい!!! 化物――――ー!!!」 「きゃあああああああ! 兄上様ぁぁぁぁ!!!」 「あ、あ、兄チャマ――ー!! モ、モンスターデスゥゥゥゥゥ!!」 「いやああああああ!! お兄様ああああああ!!!」 「兄君様ああああああああああああ!!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・」 あ! 例外者千影。 それはさておき、部屋中が悲鳴や泣き声やら(1人除く)で埋め尽くされる。これは近所迷惑だ。 「お菓子を〜、渡せぇ〜〜・・・」 暗いところで暗い声だされたら不気味の一言にかぎるだろう。 悲鳴が数倍にふくれあがったのは言うまでもない。 「はははははははははは!」 突然、白色の顔(?)が笑いだした。 途端に電気もついて、みんなの泣き顔があらわになる。 「ははは・・・・、ごめんごめん。まさかそんなに驚くとは思ってなかったよ」 白色の仮面をとったのはまぎれもなく昶だった。 「わああ―――ん! おにいたまのばかぁ――――!」 「兄や――――!!」 雛子と亜里亜が、お化けの正体が兄と知るや否や昶にものすごい勢いで抱き着いてきた。 それが連鎖反応を引き起こして、みんな次々と昶に抱き着いてくる。 「お兄ちゃぁぁぁん!」 「お兄ちゃまぁぁぁぁぁ!」 「あにぃぃぃぃぃぃぃ!」 「お兄様ぁぁぁぁぁぁ!」 「兄上様ぁぁぁぁぁぁ!」 「にいさまぁぁぁぁぁ!」 「アニキぃぃぃぃぃぃ!」 「・・・兄くん・・・」 「兄君様ぁぁぁぁぁ!」 「兄チャマぁぁぁぁぁぁ!」 昶は、壊れ物を大事に扱うように、12人全員を優しく抱きしめた。 「ハイチーズ!」 カシャッ! あの後、俺たちは記念写真を撮った。 思い出は1つだけではない。 だからこうやって1枚1枚大切にしていく。 それが例えささいなことでも。 嬉しい時でも、悲しい時でも、大切なことはたくさんある。 俺にとっては、みんなこそが、大切な宝物だ。 いつまでも・・・・・・・。 作者コメント みんなの衣装、ホントにどんなのだろうか? 東洋と西洋混ぜて大丈夫かな? 不安が・・・・・・。 感想はBBSorMAILでお願いします。 戻る