ピンポーン!
「ん? 衛ちょっと出てくれ」
「いいよあにぃ」
今俺たちは家族全員でリビングにいた。理由はただなんとなく、だ。
「あ、あああああにぃ!」
「どうした? 衛?」
「そと、外来て!」
「?」×12
俺らはしぶしぶっといった感じで外(ちゅーか玄関)に向かった、そこには・・・。
「うわ!」
そこには赤く光る車があった。車体はどんな車よりも低い。これは・・・。
「フェラーリ、しかもF−40か・・・?」
「かっこいい〜。ヒナ、乗ってみたい!」
「うわあ、アニキ、これ改造してもいい?」
「いや、それはダメだけど、いったいだれがこれを?」
「お、お兄様! お父様の手紙が・・・」
「親父の?」
今、行方不明中の親父から? いったいぜんたいどういうことだ?
俺は咲耶から手紙を受け取って声にだして読み始めた。
『やあ昶。それにみんな、元気にしてるか? わたしは今イタリアにいる。詳し場所は言えないが、お前たちにはつらい思いをさせて
いるな。そこでわたしはこのフェラーリをお前たちに送る。だいじに使ってくれ。それじゃみんな体に気をつけてな。 父より』
「っておい! だからってフェラーリか! それにこれ二者専用で俺運転免許なんて持ってないぞ! どうするんだよ〜〜!!」
コスモス畑に行こう
「はあぁぁ〜、暇だなぁ」
俺はパソコンのマウスをせわしなく動かしながら言った。
「おにいたま〜、どこか行こうよぉ〜」
「お兄ちゃん暇です」
「お兄様ぁ〜。デートしましょう?」
「暇そうなみんなチェキデスゥ〜・・・」
「四葉ちゃんも暇そー」
「兄くん・・・・魔界でも・・・・散歩しようか・・・・?」
「兄君様、武道の稽古でもいかがですか?」
「にいさま〜、姫といっしょにお菓子でも作りますですの〜?」
「兄上様、ミカエルも暇そうです・・・」
「クゥ〜ン、クゥ〜ン・・・(暇です・・・)」
「あにぃ〜暇だよぉ〜」
「兄や・・・お馬さんして・・・」
「アニキィー、メカ鈴凛が暇で暇でしょうがないって・・・」
「アニキさんどこかにお出かけでもしませんか?」
みんなマジで暇そうだし、どうしようか・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ!
俺は急いで検索エンジンをもう一度開くと、キーボードを素早く叩き検索する。
検索結果・・・・・・。
お、あるある。よし、ここにしよう。
俺はあるサイトを数枚プリントアウトすると、椅子から立ち上がった。
「みんな、出かけるから準備してくれ」
「本当??」×13
「ああ、すぐにいくから早くな」
「うん!!」×13
13人全員が一斉に自室へと向かった。
我ながら思うが、みんなの行動力は俺をも凌駕するんじゃないか?
とは言ったものの、どうしようか?
俺たちは今、よそ行きの服装をして車庫の中にあるフェラーリを囲んで悩んでいた。
とにかくどうすれば今いる14人が乗れるか。んで俺は運転なんて当然できない。
・・・・・・・・・・・・やっぱり電車か?
俺はみんなにそう言おうとしたとき、
「心配はいらないよ、兄くん・・・」
「千影。・・・でも、どうするんだ? 俺は運転免許も持ってないし、だいたいこんなのに14人が乗れるかどうか・・」
「ふふふっ・・・。大丈夫、私がなんとかするよ・・・」
千影はすぅっと車に手をかざすと、突然、フェラーリが光に包まれた。
「わあ〜きれい」
可憐が口に出してそういうほど、美しい光だった。
やがて光が消えると、千影は手をそっと下ろした。
「中を見てごらん・・・・」
俺は言われるがままに運転席のドアを開いてみた。そこにはありえない座席がいくつもあった。本来、フェラーリとかランボル
ギーニとかのスポーツカーは運転席と助手席しかない。だが今は千影の魔術のせいか、あろうことかその後ろにいくつもの座席
が存在していたのだ。ゆうなればこれはバスの中っと言った方がいい。
とにかく広いのだ。
「うわあ〜、千影ちゃんすご〜い」
「ふふっ、それほどでもないさ・・・・・・」
「でも、これはいいとして・・・・」
「問題は、兄上様ですね」
みんな一斉に俺を見る。
そりゃそうだ。いくら座席が人数分増えたとしても、運転できなけりゃ意味がない。結局は・・・・・・。
「それも・・・問題はないよ・・・」
そう言うと、千影は俺に近づく。千影の顔、なぜか赤らんでいるような・・・。
「・・・・・兄くん・・・・・・・」
「ん? うわああ!!」
突然、千影が俺に抱き着いてきた。
首に両腕をまわしてきつく絞めてくる。
うっ! く、苦しい・・・。
苦しんでいる俺をよそに、千影はなおも俺に抱きついている。っと、次の瞬間、俺の体が先程のように光りだす。
なんか、とても温かいのは千影が抱きついているからか?
光はさっきと同じように唐突に消えていく。
「兄くん・・・これで大丈夫だよ・・・」
まだ顔が赤い千影が耳の近くでささやく。
なにが大丈夫なのだろう?
千影が俺から離れると、なに事もなかったように一足先に車に乗りこんだ。
俺はやれやれと思いながらみんなを促した。
「よくわかんないけど、みんなとりあえず乗・・・る・・・・・・」
俺は途中で言葉を切った。
しかたない。
みんなの目が太陽のようにギラついていたのだから。
「いいなぁ〜千影ちゃん」
「亜里亜も・・・兄やにギュッてしたい・・・」
「可憐もしたいです」
「姫もですの」
「花穂も」
「あにぃ、ボクもしていい?」
「アニキってああゆうので喜ぶのかぁ」
「マスター。後でデータに入れておきましょう」
「兄上様ったら、だいたん」
「四葉も兄チャマに抱き着いたら・・・」
ここらへんはまだ年歳応の反応だが、問題はこの2人・・・。
「私の・・・私のお兄様にあんなことを・・・。私だったら、私だったら・・・」
「兄君様はこのワタクシに抱き着かれた方が喜ぶに決まっていますわ。絶対に!」
なんかつっこんでいいのか悪いのか、そこらへんの勢いがうせる。
俺は小さなため息をつくと、とりあえず顔を赤くした10人と、体をくねらせている2人を無理に押し込み、運転席に乗る。
なんとなく違和感。
なんか始めて乗ったような気がしない。なんと言うか、長年乗り続けた愛車みたいな気がする。
「千影ぇ〜。俺になにしたんだ?」
「・・・ただ、プロのF1レーサーの魂を・・・兄くんに入れただけだよ・・・」
助手席(春歌と騒動のすえ咲耶が乗っている)の後ろから3列目の座席から平然と返す千影。
「(※アイルトン・セナか?)・・・ありがたいけど、2度とやるなよ」
俺はなるべく笑顔をつくってそう言い、ギアを押し込み車をスタートさせた。
今は高速道路にいるが、やはりスピードが一般乗用車よりも桁違いにすごい。
アクセルを軽く入れるだけで、一般車を抜いてしまうのだから。
しかし、運転しているのが高校生とわかれば、いつ警察がきてもおかしくない。あいにくと言って、俺は免許所は持ってないからな。
「お兄ちゃんこれからどこ行くの?」
可憐が俺の後ろから2列目の座席から言ってきた。
そういえば、エンジン音がまるで聞こえないのは気のせいか?
「一応はここなんだけど・・・」
俺は手探りでプリントアウトした紙をバックから出し、咲耶に渡す。
「んと・・・コスモス畑?」
「ええ、本当ぉ?」
真っ先に反応したのは花穂だ。
まあ偶然見つけたとはいえ、花穂には嬉しい1日になるだろう。
「ああ、後もう少しでつくからな」
俺が行ったとおり、高速を抜けると、すぐだった。
駐車場に車を止め、外にでる。すぐそこに花があるのがすぐにわかる。
なぜって花の匂いがぷんぷんするからだ。
周囲がざわついているのはとりあえず無視して、俺たちは花畑に向かう。
「うわあああ〜・・・」×14
もうそれしか言いようがなかった。
俺たちの目の前には紫、白、青紫色をした花々が地面を覆い尽くし、そこに太陽の光が当たってきれいなイルミネーションをか
もしだしていた。
さらに一陣のそよ風が吹くたびにまるでそれに合わせているように美しい色がさわさわと、まるで波のように揺れるのだ。
空も雲ひとつない快晴だ。
青く澄んだ空と陽光を跳ね返すコスモス。
なんかいっぺんに得したような気分だ。
「みんな、思いっきり遊んでいいぞ」
「はあ〜〜い!!!」×13
それぞれの場所に散らばっていく13人。
ふう。こういうのもいいな。
俺は適当に歩道を歩きながらそう思っていた。
―――できれば・・・龍也と亜矢さんもいればなぁ・・・・。
・・・・・・はあぁ。俺はまだ、まだるっこしいことを言っているみたいだ。
「お兄ちゃま」
「ん?」
「ほら、花穂が作ったコスモスの花冠だよ。花穂、お花の精に見える?」
「可憐も、花穂ちゃんに教えてもらったの。お兄ちゃん、似合ってる?」
「ボク、不器用だけど、なんとか作ってみたよ。あにぃ、どおぅ?」
「ああ、三人とも花の妖精みたいだぞ」
「本当ぉ? お兄ちゃま?」
「うん!」
「わあぁ〜い!」×3
3人とも嬉しそうな笑みをつくる。
「お兄ちゃま。このお花、記念に一本持ち帰ってもいい?」
「うん、いいよ。帰ったらちゃんと活けておこうな」
「うん!」
俺は微笑しながら足を進めた。
その先にはスケッチブックに絵を書いている鞠絵と白雪がいた。ミカエルは尻尾を揺らしながらくつろいでいた。
俺はそっと鞠絵と白雪に近づき、その絵を盗み見る。
「へぇ〜。うまいなぁ〜」
「きゃっ!」×2
突然の登場にいささかビックリしたようだが、俺とわかると、2人とも安心したように微笑む。
「兄上様。ビックリさせないでください」
「ははっ、ゴメンゴメン。すごくうまい絵だなって思って」
「フフフッ、にいさまったらぁ」
本当に鞠絵と白雪の絵はうまい。特に鞠絵なんか花の線一本一本が本物にそっくりだ。
「鞠絵って絵のセンスがあったんだな」
「いえ、ただ療養所にいたころ、暇を持て余す時によく絵を描いていましから」
「姫も、絵を描くのは好きですの。後でにいさまの絵を描いてあげますの」
「ああ、かっこよく描いてくれよ」
「はい!」×2
2人ともにっこり笑った。つられて俺も微笑む。
さらに足を進めると、ココちゃん人形とクマさん人形を持った雛子と亜里亜が花畑の中で遊んでいた。
はは、なんだか親指姫みたいだ。
「雛子、亜里亜、なにをしてるんだい?」
「あ、おにいたま! ヒナたちねオママゴトをしてるの」
「兄や・・・いっしょに遊ぼ・・・?」
「う〜ん、今日はパス。かわりに明日遊ぼうな」
「うん! おにいたまゼッタイやくそくだよ」
「兄や・・・あした遊ぼうね」
「ああ」
「わあ―――い!」×2
2人の頭をなでなでしてやると、さらに足を進める。
「兄チャマ、チェキデスゥ―!」
「うわぁ、四葉!!」
いきなり花の中から四葉がデジカメを連射撮影しながら出てきた。
しかも俺に体当たりをする格好だったので四葉が俺に抱き着く。
「クフフフフッ。ついでに兄チャマのハートもチェキデス!」
「四葉、いさかいなく俺に抱き着いてると咲耶が怒るぞ」
「エヘヘ、そうですネ。怒った咲耶姉チャマは恐いですからネ」
「そうそう。って、いまの会話は咲耶には内緒な」
「ハイ! 四葉と兄チャマとのシークレットトークデス!」
「うん。そのいきおいでみんなをチェキしてくれるかな?」
「ハイ! まかせてくだサイ!」
四葉はそう行って、ピューっと行ってしまった。
う〜ん、四葉って以外と足速いんだなぁ。
そう思いながら足を進める。っと一個所だけにやたら蝶が集まっている。
なんだぁ?
「ア〜ニキ。どう? この『花粉発生機』は。蝶がす〜ぐに寄ってくるんだよ」
「アニキさん。チョウチョは綺麗ですね」
なにやら傘みたいなものをさしながら自慢げに語る鈴凛と、蝶に見入っているメカ鈴凛。
はたから見れば双子のように見える。
「へえぇ〜、なんだか便利そうな物だな」
「へへへへっ。だてに何回も部屋爆発させてないからね」
「アニキさん。これは何て言う蝶ですか?」
「ああ、これは紋白蝶だよ」
「ふぅーん。アニキものしりだね」
「だてに12人の保護者やってるからな」
俺はまた微笑むと、先を歩く。
前後左右コスモスだらけ。
停学中だからできる喜びってこういうことなのか?
そうれはそれで少しさびしいような・・・・。
「お兄様」
「兄君様」
「ん? あ、咲耶、春歌。なにやってるんだ?」
「コスモスの匂いっていうか、色とかを細かく見てたの」
「兄君様。このコスモスなんか不思議な色をしてますわ」
春歌から受け取ったそのコスモスを見てみると、全体は白なのだが、周りに紫色の線が一本入っている。とても芸術的なコスモスだ。
「へえ、こんなのもあるのかぁ」
「不思議ねぇ、お兄様」
「ああ。世の中には人の力でも解決できないものもあるからな」
「フフフフッ。私たちのお兄様にたいする思いも、誰にも解けないわよね?」
「兄君様はずっとワタクシたちのそばにいれば、他人なんて関係ありませんもの」
「・・・・・・そうだな」
俺は静かに微笑んだ。
そう。他人がどう思おうと、俺たちは俺たちだ。
第三者なんて、関係ない。
俺はそう考えて歩いているうちに、ひそひそ声が聞こえた。
「・・・そうか・・・君たちも、苦労しているんだね・・・・・・」
千影?
俺は物音を立てないように声の方へと向かった。
コスモスに囲まれながら、1人でぶつぶつと言っている千影を見つける。
よく見てみると、千影の周りには小動物たちが列をなして千影を見上げていた。
「・・・千影・・・?」
「あ、兄くん。・・・うん、大丈夫・・・。私の・・・兄くんだよ・・・」
千影は自分の手のひらに乗っているリスにそう話した。
魔術でかな? 動物と話せているのは。
「今、そのリスと話していなかったか?」
「・・・そんなわけないよ・・・兄くん・・・」
「隠さなくてもいいよ。俺だって話せ――」
俺はそこで言葉を切った。でも・・・。
「話せ・・・?」
「・・・・・・・・・はあぁ。俺だって動物がなにを思ってるかわかるんだからな」
「・・・兄くん・・・? 兄くんも・・・魔術を・・・?」
「いや、そうじゃないんだ。みんなには内緒にしていてほしんだけど、俺、人の心とか読めるんだ。なんでかはわからないけど。」
「・・・兄くん・・・。ふふっ、大丈夫だよ・・・」
「・・・なにが?」
「最初は・・・そうだよ・・・。私だって・・・好きでこんな魔術を使っているわけじゃないから・・・」
「じゃあ、どうして今は・・・」
「兄くんの・・・ためだよ・・・」
「俺?」
「兄くんが・・・いたから・・・今の私がいる・・・。だから、今度は・・・兄くんを守って・・・ちょっとでもいいから・・・恩返
しをしたいんだよ・・・」
「で、でも、千影――。・・・・・・ありがとう。でも、無茶はしないでくれ。千影にもしものことがあったら、俺・・・」
「だから、使うんだよ・・・」
「え?」
「もしものときがあったら・・・兄くんが・・・その力を・・・使えばいい・・・」
「千影・・・」
「大切な人に力を使う・・・。私も・・・そうだから・・・」
「・・・千影・・・・・・ありがとう・・・。なんだか、すっとしちゃったよ」
俺はにっこりと笑うと、千影も微笑んだ。
秘密ごとがまた増えたけど、今のは―――。
「お兄ちゃま―! 花穂ね、衛お姉ちゃまと可憐お姉ちゃまとでお兄ちゃまの花冠作ったんだよ――!」
「あにぃ――!」
「お兄ちゃ―――ん!」
「おにいたま―! お花のシャワーしてあげるね―!」
「兄や―!」
「兄上様! 絵ができました!」
「今度はにいさまのばんですの―!」
「兄チャマ―! みんなそろって記念写真をとりまショ―!」
「アニキィ―! これなんて蝶?」
「お兄様―! これなんてお兄様に似合うわよ―!」
「兄君様! これもよくお似合いになりますわ―!」
みんな一斉に俺に向かって走ってくる。
そうだよな。
みんなは俺が守っていくんだ。
親父もお袋もいないけど、今は俺だけでみんなを守っていくんだ。
この力がある限り。
その後、俺たちは記念撮影をして、帰路についた。
今日も、いい日だったな・・・。
作者コメント
コスモス畑行く時に見たフェラーリ、
かっこよかったなぁ〜。
兄貴も秘密ごとを話せてよかったろうなぁ〜。
感想等はBBSorMAILでお願いします。
※アイルトン・セナ――ブラジル出身の超一流F1レーサー。数年前に事故で死去。
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