星が騒ぐ夜



星たちが騒ぐ夜に

月の上にふたつめの月がのぼる

犬たちの見上げる先に

天空の獣が尾を見せる

もはや祈りは通じず

わたしたちはひれ伏すしかない



汗の朱に染まる家屋で

指先のしびれを隠そうとしないのは

わたしたちの父だ

覚えているのは傷を負わせた者たちの名と

わずかに輝いていた時間ばかりだ

からだのがらんどうには

ぎっしりと声がつまっているというのに

もうそれは流れ出してはこない



ゆろゆろり漂う思念は

声から遊離すれば立ち消えそうになるというのに

朽ちてゆくからだを抜け出そうと躍起だ

だから父たちの痣班は増えてゆくばかりだ



星空だけが輝きを残すころ

風は止む

丸くなった姿のまま

犬が息絶える

もう月はのぼらない