(顔を見ぬ祖父への追想より)
◇ 北 遠 の 花 街 ◇
私が始めて「あかばしゃ屋」の屋号を耳にしたのは小学校に入学する前であった。
その頃、北遠の町「二俣町」は山間に窮屈に横たわる古い田舎町であり, 町は天竜川とその支流の二俣川に挟まれていた。
このため南北に連なる家屋は肩を潜めて並び埃の多いのが印象的であった。
埃っぽさの記憶が強いのは、町の位置が川沿いに在って北風が強く、2間ほどの道路はどこも舗装の無い砂利道ばかりのためである。