冬馬が目を覚ますと辺りは暗闇に包まれていた。寝惚けた眼を凝らして見ると、そこは教室のようだった。前の方には教壇があり、黒板があり、その左(入り口があったのとは反対側)には大形のテレビが備え付けてあった。やっと目が慣れて周囲を見回したら、そこにはついさっきまで(少なくともそう思えた)一緒にバスに乗っていた49人のクラスメイトたちがきちんと席に着いていた。ただ−誰一人として動いているものはなかったが…
 冬馬は腕時計に目をやった。ちょうど長針が動き。0時01分を示した。少なくとも3時間、或いはそれ以上眠っていたようだ。
 オーケイ、まぁそれはいいとしよう。それよりも何か息苦しい。何故ホックなんてしているんだ? 冬馬は襟に手をかけた。ホックを外した際に指先に冷たい感触があったことに気付いた。ん?不思議に思い再び首に手をやった。確かに何かひんやりとした感触が伝わってくる。
そして改めてクラスメイトを見た。どうやらそれは、いや…、これは首輪のようだ。
ちくしょう、外れやしねぇ、一体なんだっていうんだ?
どうしても外れなかったので、已むを得ず諦めた。
 それはそうと俺はホテルに向かっていたのでは?ここはいったい?
 ガラッ。唐突に教室の前、教壇側の入り口が大きな音をたてて開いた。電気が点いた。
 まず、男が一人入ってきた。
 男は地味な紺色のスーツの上下にグレーのネクタイを締め、黒い革靴を履いていた。襟元には政府関係者であることを示すバッジ。
そして、何よりも特徴的だったのは、その髪型だった。あたかも妙齢の女性がそうするかのように、肩口まで真直ぐと髪を伸ばしていたのだった。
 男は教壇の位置に立ち、教室を見渡した。と、その視線はただ一人目を覚ましていた冬馬の顔に止まった。そして、フッと一笑して何か合図をした。すると軍服姿の男たちが次々と教室に入ってきて、まだ眠っているクラスメイトたちを起こし始めた。全員を起こし終えた男たちは教壇の両脇に立った。
 そして長髪の男が快活な声でこういった。
「はーい。みなさ〜ん。目が覚めましたか〜?よーく眠れましたか〜?」
 誰も一言も喋らなかった。いや、喋れなかったのだろうか?
とにかく静まり返っていた。

[残り50人]



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