先行公開

 山村武久(男子25番)はホテルの3階にある一室を出た。
日は西に傾きかけていた。
部屋を出るときに見た時計は4時30分を少し過ぎたところだった。
夕日に染まった廊下をコルトを片手に歩いてゆく。
 ほぼ刻を同じくして、三ツ矢梅輝(男子24番)は同じホテルの2階の一室から出てきた。
梅輝の手にはルガーP08をベースにした水鉄砲が握られていた。無いよりはあった方がましだった。
 武久は今、まさにその階段を降りようとしていた。2階と3階の間の踊り場までは10段程であろうか。
その1つに足がかかった。
 梅輝はホテルに泊まっているのは自分ぐらいのものだろうと、少しリッチな気分に浸りながら階段へと続く廊下を歩いていた。
階段まではあと、5mあるかないかだ。
 武久は踊り場に降り立ち、その体を180°変えようとしていた。
 梅輝はまさに、その階段への曲り角に辿り着こうとしていた。
もう下への階段を目線の端でとらえている。
 武久は踊り場から2階へと降り始めた。
 梅輝はその角を曲がった。
 二人の視線は同時に相手の姿を捕らえた。
武久は咄嗟にコルトを構えた。
梅輝もそれに応じて、水鉄砲を目の前に構えた。
次の瞬間、武久の銃が火を吹いた。
梅輝は右肩に被弾した。その勢いで梅輝の銃が水を吐いた。
流石に特別に改造されているだけあって、直線距離にして4、5mはあった距離をものともせず、武久の額に命中した。これが実弾であったなら、ここで雌雄は決していたのだが…
 武久は予想に反して飛んできた水飛沫に驚いて、銃を乱射していた。
気が付いた時にはすでに銃の弾倉は空だった。
窓硝子には蜘蛛の巣状の罅が入っていて、梅輝のトレードマークとでも言うべきカッターシャツは血飛沫と夕日によって、真っ赤に染まっていた。
まるで、この国の国旗を表すかのような赤だった。
 武久は目の前に転がっている梅輝の死体を見て恐ろしくなって慌てて階段を降りた。
こうして、ザ・サード・マンと呼ばれることのなかった男、三ツ矢梅輝はその短い生涯に幕を降ろした。

[残り30人]



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