腕時計に目をやると、2時5分を過ぎた辺りだった。
不知火涼子(女子10番)は淳子と分かれてから北の丘陵に来ていた。
ここに至るまでには誰にも遭うことはなかった。
今は閑散とした林の中の道を歩いていた。
『草が踏みつぶされて間もない…
近くに誰かいる…!?』
涼子は心の中で呟いた。
なお一層の注意を払い、再び歩を進めた。
程なくして、道が二手に分かれていた。
一方は下る道。他方は上る道。
『どっちに行ったのかしら? ……下…かな?』
とりあえず涼子は下の道を選んだ。
5分程だろうか、慎重を期しつつ歩いたところで眼前300m程度のところに並んで歩いている二人の人影があった。
『…二人いるのなら、鬼ではない…か。声を掛けてみようか…』
そう思った瞬間、迂闊にも足下の小枝を踏んでしまった。
パキッ。
静かな林に響くには十分な音だった。
「誰?」
一人が言った。
足下にやっていた視線を再び前方に向けた。
異変に気付いた。
一人がいない。
『しまった。視線を外すべきではなかった…』
そう思った瞬間には、すぐ背後で声がしていた。
「誰?」
涼子は両手を挙げてみせた。
「県立第三高等学校二年J組10番、不知火涼子よ。敵意はないわ。仲間を探してるの。心配ならボディチェックでもしてみる?」
「なんだ、涼なの」
背後の女が言った。奥にいた人影もゆっくり近寄ってきた。
「相変わらず、恐れ入るわ。一瞬で後ろに回りこむなんて。ねぇ、汀?」
涼子は顔は見ていなかったが、共にいた2人は、氷室汀(女子15番)と炎群灯(女子16番)だと当たりをつけていた。
「あれ、バレてた?声質も変えてたつもりだったんだけどな」
後ろにいた汀が言った。
「ボディチェックはやらなくてもいいの?」
少しばかり戯けた調子で聞いた。
「涼は鬼じゃないでしょ。もし涼が鬼で銃を持っているのなら、ここまで近付く前に殺されてるでしょ、私たち」
灯が近寄りながらそう言った。
「そんなことよりも、仲間を集めてるって、どういうこと?何か考えでもあるの?」
汀も涼子の正面に回った。
「策は… ないわ」
しばらく間を起きながら続けた。
「でも、普通にやっていて生き残れる可能性はほぼないと言っても過言じゃぁない。」
時計の針は3時を刻んだ。
「命に関わるかも知れないから、よく考えて結論は出して。
6時にここで待ってる」
そう言って地図を拡げて淳子と落ち合う予定の場所を示した。
月が傾いていた。
「他には、誰か誘ってるの?」
地図から目を上げた灯が涼子に聞いた。
「私が会ったのは貴女達が最初。そしてこれからも時間までは信頼できる人に声は掛けてみるつもり。淳子も同じことをしてるわ。信じる、信じないは貴女達の自由。来る、来ないもね。6時ちょうどにその場所から移動するから。でも、私としては貴女達が来てくれれば心強いから、来て欲しいな」
灯と汀は黙っていた。
「じゃぁ、私は行くわ。死なないでね」
[残り36人]
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