春日大和(男子8番)はGとHの境に有る川の畔に座っていた。
月代飛鳥(女子8番)に言った『GとHの境』は言葉が足りなかった。
先程までGとHの境を歩き回っていたが、飛鳥と会うことはできなかった。
いや、誰にも会うことはなかった。
それは不意の遭遇だった。
ふと顔を上げた先。向こう岸の林の間に人影らしきものがあった。
月明りが届かず顔ははっきりしなかったが、二人連れであった。
向こうもこちらに気付いたのか直ぐに林の間にすっかり体を隠した。
大和も慌てて近くの木の後ろに身を隠した。
それから2分か、3分か。あまり時間が経ったとは思えなかった。
「貴方は誰?」
川の向こうから、大きくもなく、小さくもなく、落ち着いた女性の声が聞こえた。
「俺は大和だ。春日大和。君らの方こそ誰なんだ?」
大和の声は女の声とは逆に多少荒々しくなっていた。
「私は丸川理恵よ。一つ聞いていい?」
「何だ」
「貴方、5分間も貴方逃げようとしたり、攻撃をしかけようとしたり、何らの行動も示さなかったのはなぜ?」
5分。大和の思っていた倍の時間が流れていたようだ。
「なぜかって?下手に動いた所を狙い撃たれたらたまったもんじゃない。だから動かなかった。君らの方こそ何で動かなかった」
「動かなかった判断はまぁ、正しい。だが、我々が複数いることを勘付いていたのなら多少無理しても動くべきだったろう」
大和の後ろの方、川のこちら側からの声だった。
『えっ、何で?どうしてこっち側にいるんだ?』
大和はその5分の間、木の影からではあるが、向こう岸の林の間は警戒していたはずだし、川を渡る音などしていなかった。
ここから一番近い橋でも1km以上はある。行って戻って来るのには5分では短い。
ましてやその2kmの道のりをまったく気付かれずに走るなんて、それこそありえない。
「不思議か?俺がこっちにいるのが」
読心術でも使われてるかのようだ。大和はそう感じた。
「…流か? 何で?俺は気は緩めてなかったはずだ。どうやってここに?」
「種明かしをすれば簡単さ。お前は、いや、人は木の裏に隠れる時には幹に背を凭れるのが普通だ。そこから自分の背後を気にしても死角ができるんだ。その一点で渡河したのさ。音を立てずに川を渡るのも不可能ではないし」
「まぁ、それはいいよ。で、俺に何か用なのか?」
「私を無視して話進めないでよ」
大和と流が話している間に理恵も川を渡ってきていた。
理恵は続けた。
「単刀直入に言うわ。私たちと一緒に来ない?」
「…一緒に?」
大和は訝った。
「バラバラでいるよりは大勢でいた方が助かる確立は高いってことさ」
「だから私は流君と手を組んだの」
理恵が付け加えるように言った。
「3分で決めてくれ。俺達と一緒に動くかどうか。あまり長居はできないいんでね」
大和は悩んだ。このまま流の言うことを信じ一緒に行動するべきなのか。
ここで飛鳥を待つべきなのか。
大勢でいるのは確かに良策だ。
交代で見張れば休むこともできる。
だが人数が増えれば逆に危険もある。
咄嗟のときに動きずらいし、仲間内で裏切るものがでるかも知れない。
それにここを離れると言うことは飛鳥に言ったことに反する。
最悪の場合、ここを自分が動いたばかりに二度と生きて飛鳥に会えなくなるかも知れない。
『クソッ。何が正しい方法なんだ!』
「時間だ。、結論を聞かせてくれ」
[残り36人]
一人でここに残る。
流達と一緒に行く。