「俺は残るよ。…実は俺、告白したんだ。返事は聞いてないけど俺、ここでそいつを待ってるって言ったんだ。
 俺がここで待つのは傍から見れば変かも知れないけど、今の俺にとってはそれが全てなんだ。
 誘ってくれたことには感謝する。でも行けない。すまない…」
 大和は思っていることを流達に伝えた。
「生き延びることよりも大切なことなの?」
恵理が不思議な顔をした。
「ああ」
そう応えた大和は迷いが吹っ切れた、清々しい顔をしていた。
「そうか…、なら仕方ないな。会えるといいな。そいつに…」
流も大和の気持ちを解してそう言った。
「月並みな言葉だけど…、また生きて会おう」
「ああ。約束する。また生きて会おう」
 大和は去っていく2人の後ろ姿を見送った。
『さて、これからどうするかな?俺は飛鳥に告白はしたけど、返事は聞いてないしな。これは振られたかな?ははっ』
大和は自嘲した。
自嘲した後に、涙が頬をつたった。
 飛鳥を待つこと5時間。月が地平に沈んでいった。
『あぁ、夜が明ける』
ガサッ。
大和の後ろで葉の擦れ合う音が聞こえた。
大和の心臓は凍てついた。
慌てて、音のした方へ振り返った。
ガササッ。ゲギャァ、ギャーギャー。
「なんだ鳥か。驚かせるなよな」
大和が鳥が飛び立つのを見ていた、その遥か先。300m程の所に男が佇んでいるのを視界の端に捉えていた。

パンッ。
大和の耳に聞き慣れない銃声が飛び込んできたのと同時に、胸の当たりを鋭い痛みが襲った。
「痛ッ。えっ?何?」
大和は自分の身に起きたことが理解出来ずにいた。
ゴホッ、カハッ、グッ。
咳き込んで吐血し、胸からも夥しい量の血が流れ出していた。
『アァ。俺は撃たれたのか…』
視界の端に捉えていた男がこちらに歩んできているようだった。
思った。流、すまない。約束、果たせそうにない。
思った。飛鳥、返事、聞きたかった。もう一度、会いたかった。
思った。父さん、母さん、ゴメン。俺、帰れない。
思った。あぁ、日の出だ。最期に見れてよかった。
 大和は死んだ。
その死に顔は微笑んでいるようにも見えた。
男は大和を見下ろしていた。
「…」
男の名は桐原和也(男子10番)という。
男は大和の傷跡を見て考えていた。
男の計算していた着弾点より大和のそれは3cmばかり下であった。
3cm。すぐには死ななかっただろう。
実際、大和は被弾してから数十秒は息があった。
愛に命を賭した男。春日大和、散る。享年17歳。

[残り35人]



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