「わかった。一緒に行こう」
大和は決断を下した。
「OK。じゃぁ、早速だけどここを移動しようか」
流は急かすように言った。
3人は川に沿って歩き始めた。
歩きながら大和は呟いた。
「…なぁ、鬼は誰だと思う?」
「鬼?」
理恵が大和に聞き返した。
「鬼か、断定してしまうのは危険だが、ある程度絞っておくのは必要かもな。
お前は誰が鬼だと思うんだ?」
流が大和に聞いた。
「不良グル−プの誰かだと思うんだけど…」
「不良グループって言うと、鬼窪君や、土方君、沖田君、近藤君に齋藤さん、田宮さんとか?」
「いや、あいつらはまだ筋が通ってる。
危険なことにかわりはないが、リーダー格の鬼龍は恩義には厚い奴だし、
自分の信念は曲げないタイプだ。
それよりも、桐原一派だろう。加藤や五反田は自分の意志が希薄で、
直ぐに桐原に頼ろうとしているんだ。
竹宮は危険だ。あの中で一番喧嘩っぱやいし、短絡的な所が有る。
それに桐原はなお危険だ。あいつの考えは読めない。
あいつの喧嘩を見たことあるか?全く容赦をしていなかった。
喧嘩もただ機械が作業をこなすだけと言った感じだったよ。
女子では川田、京野、齋藤といったあたりは危ないな」
流が饒舌に語った。
「ふ〜ん。じゃぁ、岩本範夫なんてのはどうなんだい?」
「あいつは見た目が派手なだけだ。虚勢を張っちゃいるが実際は大したことない。
人に手をあげる勇気すらないだろう。そのことが分かってるから桐原も鬼龍も岩本は無視してる」
「へぇ〜、驚いたな」
「ん?何がだ?」
「お前がそんなにクラスメイトのことに詳しいとは。俺はそこまで深く考えて見たことはないなぁ」
「情報を持っていて損はないからな」
少し微笑しながら流は言った。
理恵が何かに気付いて立ち止まった。
「ねぇ、あそこにバッグが落ちてるんだけど」
理恵が指差す方を見ると、50m前方、斜度50度ぐらいの急な斜面との境界ぐらいに自分達に支給されたデイパックと同じものが落ちていた。
「何…だろう?」
「まぁ、辺りに人が居るのは間違いないだろう。生きてるにせよ、死んでるにせよ。
二人とも周囲に注意してあのバッグまで近寄ってみよう」
流が先頭に立って3人は慎重にバッグのもとまで進んだ。
「驚くぐらい、人の気配はないわね」
「確かに、だが油断はするなよ」
「崖の下!誰か倒れてる。暗いし遠いから誰かまではわからないけど、助けなきゃ!」
「冷静になれ。生きてるか、死んでるかもわからないんだ。
助けるのも安全じゃない。それに罠かも知れない。それでも助けるつもりか?」
流が大和の胸ぐらを掴ん問うた。
「あぁ、それでも助ける。お前がやらないんなら俺一人でもやるよ」
大和の目は真剣だった。
「本気の目だ。まぁ、そういう奴だから声を掛けたんだがな。
おい、理恵。お前のバッグにロープ入ってたろう、貸してくれ」
「はい。そう言うと思ってもう準備してあるよ」
もうすでに理恵はロープの一端を木の幹に結び付けていた。
そして、もう一方の端を崖下に投げ入れた。
「よし、俺が行く」
「いや、だめだ。場合によっては動かしてはいけないケ−スもある。俺が行こう。
それと理恵、病院施設があるところへの道順を確認しておいてくれ」
焦る大和を制し流は崖下へとロープを伝い降りて行った。
5分後、流は怪我人を背負い崖を登ってきた。
「倒れてたのは、月代飛鳥だ。とりあえずは致命的な傷はなさそうだが…。
きちんと調べないと何とも言えんな。ここでは暗くてはっきりとしたことは言えない。
理恵、道順は分かってるな。先導してくれ」
「任せといて。大和君、ロープの回収お願いできる?」
「あっ、あぁ。わかった」
大和は倒れていたのが月代飛鳥(女子8番)だと知って動揺を隠せないでいた。
焦るとロープはなかなか解けなかった。
しばらくの苦戦の後、ようやくロープを解くと、300mは先を進む2人に走って追い付いた。
[残り36人]
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