時計の針は5時23分を指し示した。
朝日が半分以上その顔を覗かせていた。
涼子(女子10番)が待っている鳥居のもとに淳子(女子9番)が相川未来(女子1番)と供に現れた。
「未来、久しぶり。生きていてくれて何よりだわ」2人が来るなり涼子は未来に軽く挨拶をした。
「誰誘ったの?」
「灯と汀に声を掛けておいたよ。来るかどうかは別だけど…」
「まぁ、来るでしょうね。彼女らは賢いから。私はあと恵那に声を掛けてあるわ」
「それと、残念なことなんだけど…。2時間前、海が死んでるのを見たわ。
角膜が乾燥していて、頸間接に硬直が見られたから、死後約3時間ってところ。
0時30分頃のあの銃声で恐らくは…」
「う、嘘。海が…?」
「そうよね、未来は海と仲よかったもんね」
「海は高校から籠球を始めて、でも人一倍努力してこの前初めてレギュラーになったばっかりだったのに…」
「泣きたい時には泣いてもいいよ」
その言葉を聞いて未来はその場に泣き崩れた。
時計の長針が90度動いていた。
「ゴメン…」
そう言いながら未来は涙を拭いた。
「泣いたらすっきりしたや。でも、もう大丈夫だから…。もう泣かないから…」
「そう…。でも無理しないでね」
「ん。大丈夫」
それから約5分して、突然周囲の木の枝に止まっていた鳥が空へ羽撃いた。
淳子は体を緊張させた。涼子も異変に気付き臨戦体制に入った。
「あぁ!いたぁ!」
少し場にそぐわない明るい感じの声がした。
向井恵那(女子20番)だった。
空気が弛んだ。
「探したよ〜」
「恵那ァ〜!おどかさないでよ〜」
そう言った未来の顔に笑顔が戻った。
恵那が加わったことにより、3人の間にあったどこか緊迫した空気は一気に和んだ。
四半時間もそのゆったりとした空気は流れていた。
時計が5時58分を回った。
「あと2分…。恵那、未来。そろそろ動く準備をしておいて」
「でも、まだ灯と汀が来てないよ。待たないの?」
「待てないよ。長く留まるのはそれだけ危険が増すしね。安全な所に早く動きたいし」
「それにね。待つ必要もないんじゃない?」
「えぇ?どういうこと?」
「ん〜。もう出てきたら?」
「えっ?え?」
鳥居の両端の林が動いた。
「いつから気付いてた?」
右側の林から出てきた炎群灯(女子16番)が淳子と涼子に対して聞いた。
「上手く隠れてたつもりだったんだけだな…」
逆の林から出てきた氷室汀(女子15番)が付け加えるように言った。
「ついさっきね。小鳥が戻らない木があったから」
「淳、6時になったから動きましょ」
涼子が急かした。
「どこに行くの?」
「とりあえずは集落まで行くことになるかな」
「ここからなら、だいたい700mってとこかな」
「直線ならね」
「どういうこと?」
「ちょっとね、気になる所があって。
…開けた土地で小高い丘もあって、狙撃には絶好の場所を通らないと集落には行けなくて…
回り道するから1500mぐらいかな」
「まあ細かいことはいいじゃん。とりあえず、出発!」
「重要なんだけどなぁ…。
じゃぁ、淳子が先頭で一列でね。私が殿を行くわ」
「「OK!」」
一行はまず北へと向った。
[残り36人]
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