昼前から降り始めた雨は2時間たってようやくその勢いを緩め始めた。
浅木伸一(男子2番)はとある民家で雨宿りをしていた。
その民家の2階、通りに面した部屋でカーテンの隙間から外を覗いていた。
伸一は雨の降り始める1時間前からそこにいた。
突然の大雨にそこから出るに出られず、すでに3時間…
あと1時間も留まれば鬼に居場所が知らされてしまう。
雨の中の移動で体力を奪われることは極力避けたかった。
しかし、あと1時間を待たず動き出さなければいけない。
伸一は時計に目をやった。
早く止んで欲しいと切に願っていた。

 何気なく再び外に目をやった。
誰かが外に立っている!
伸一は全身から血の気が引き、背筋が凍り付くのを感じた。
「まさか、ここにいるのがバレた!?」
彼は混乱していた。
勿論、部屋には電気を点けていなかったし、カーテンを閉め、中の様子は外からは分らない。
ハズだった。
(少なくとも伸一本人はそう考えていた
 立ち並ぶ民家の中で一ケ所だけカーテンの閉じた窓は
 外から見ればよく目立っていたことを彼は知らなかった。)
この僅かの間にまったくもって恐怖が彼を支配した。
彼は慌てながらも隣接していた寝室のベッドの下に身を隠した。
ガシャン
下で硝子の割れる音が聞こえた。
さっき見た人影が中に入ってきたことは容易に想像がついた。
階段をゆっくりと上がる足音が響いた。
その足音は程なく廊下を進む音に変わった。
カチャ。キィィ。
隣の部屋(つい先程まで伸一のいた部屋)の戸が開く音が聞こえた。
少し軋んだような物悲しい音だった。
疑いようもない。自分の存在は気付かれている。
伸一はそう思った。
3分だったのか、5分だったのか、隣の部屋の戸が閉じられる音が聞こえた。
次に開いたのは今まさに伸一の隠れている部屋の戸であった。
伸一の鼓動はヴィヴァーチェを付されたかのようなリズムを刻んだ。
そしてその高鳴りは外にも漏れ聞こえるのではあるまいかと言うほどに大きく感じられた。
ベッドの下からでもクローゼットの中などを探っているのが感じられる。
バタン
この部屋の戸も閉じられた。
あの人影(ほぼ間違いなく鬼だろう)は出ていったのだろうか?
伸一はベッドの隙間から周囲を見回そうとした。
その瞬間彼は再び戦慄した。
「み〜つけた」
その声と同時に一発の銃弾が伸一の両足の腱をを貫通していた。
「ッっぎィゃ〜」
伸一の絞り出された悲鳴が部屋中に響いた。
鬼は右手に拳銃を握りながら、左手で髪をかきあげた。
「あんた、かくれんぼ下手ね」
嘲笑うかのように鬼、川田祥子(女子4番)は言った。
「ヒィィ」
悲鳴にならない悲鳴をあげながら伸一はベッドの下から這い出てきた。
両足の腱が切れているから立ち上がることもできず、まさに這いずり回っていた。
せめてもの抵抗なのだろうか、彼は辺りのものを手当りしだいに祥子に向かって投げ付けた。
不思議なことにそのどれ一つも祥子には当たらなかった。
それは彼女のプレッシャーのせいだったのかもしれない。
或いは彼女の運動能力を持って避けていたのかも知れない。
だが、そんなことを考える余裕はすでに伸一には残されていなかった。
次の銃声で伸一の右腕は痛み以外の感覚を失った。
「女の子に物投げるなんて非道いんじゃない?」
祥子が悪戯っぽくそう言った。
「ぐッウ…」
伸一は唸り続けた。
祥子はムスッとした表情で伸一の左腕を蹴り上げた。
「何とか言いなさいよ。私無視されるの大キライなの」
伸一の折れた左腕が皮膚を突き破り露出していた。
伸一の顔からは涙、鼻水、涎とおよそ全てのものが溢れていた。
「たっ助けて…」
か細い声で伸一は命乞いしていた。






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