しっぽ



ある時、猫はしっぽの折れた猫になった。
痛みだけしか覚えていない。喜びも、感動も無い。
猫は当たり前のように、しっぽをふらふらさせながら歩き出した。
猫はふと立ち止まる。
しっぽの折れた猫は、自分の折れたしっぽを見て一声、鳴いた。
「かっこいいにゃー」
近所の猫仲間たちに、この変わったしっぽを自慢したくてたまらなかった。
尾れ猫は、自分が仲間たちから羨ましがられる光景を想像して有頂天になった。
「・・・にゃは」
尾れ猫はニャハリとにやけると、飛び跳ね、駆け出した。

「やあ、くろ。ごきげんだね・・・」
斜向かいのお銀に出会った。尾れ猫は猫仲間たちからくろと呼ばれていたが、本当は、くろと言う名前の猫がいないというだけの理由だった。
実際のところ、尾れ猫の白と黒の比率は3:7ほどで黒猫と言うには白かったのだ。
まあ、そんなことはどうでもいい。
「お銀!お銀!みてみてみて」
くろは興奮していた。第一の標的を見つけたからだ。くろは絶対羨ましがられると信じて疑っていなかった。
お銀は折れ曲がったしっぽを見せられた。正直、痛々しくてコメントに困る。
しかも、くろは喜んでいるようなのだ。どうしたものか。
「あ、うん・・・。」
しどろもどろに、曖昧な返事をする。くろは気に入らないらしく表情が曇る。
「いいんだいいんだ、このしっぽのすばらしさが分からなくても!」
くろはごねて走り去っていった。お銀は呆然と見守っていた。
「・・・・・・」

くろは猫仲間たちがよく集まる広場にやってきた。
広場には数匹の猫がいつものように日向ぼっこをしている。
「みんなーみんなー」
気持ちよく寝ていた猫たちは一斉に顔をあげ、騒音の主を睨み付ける。
「このしっぽ、みてみてみてみてみてみてー」
騒がしく、鬱陶しく、そしてしつこく、しっぽを見せびらかさんとするくろに、広場の猫たちは耳も傾けずまた眠りに入るのだった。
「なんだい!もう見せてやるもんか!」
くろはそう言い残し、広場をあとにした。広場に平和が戻り、猫たちは安息の眠りに付いた。

とぼとぼと暗い路地をしっぽの折れた猫が歩いていた。
猫は時折立ち止まっては、折れたしっぽをふりふりさせて感触を確かめていた。
「かっこいい・・・よにゃー」
くろがそんなことを言いながら歩いていると、塀の向こうからひらりと何かが降って来た。
「わ!」
折れたしっぽを、ピクッと伸ばし――といっても折れているのだが――体を強張らせた。
「やあ、くろ」
空から降ってきた正体はお銀であった。くろはお銀と気付くと興味を失ったかのように、
「なんだ、お銀か・・・なんだい」
と、言った。
「そのしっぽのことだけどね・・・」
くろの耳がピクリと反応した。お銀はそれを見てニヤリと笑い言った。
「僕は結構好きだよ」
くろの表情はたちまち良くなって、さっきとは別猫のようになったくろは、大はしゃぎでお銀とともに帰路についた。




あとがき

オー素晴らしいできばえデース。感動しまシータ(爆)

いやね、うちのアパートにしっぽの折れた猫が住み着いてましてね。
その猫ちゃんが私を見るのですよ。かわいいのですよ。
部屋ん中にまで入ってきちゃうんですよ。2回くらい入ってきましたよ。むしろいれましたよ。
猫かわええ・・・


・・・これってあとがきになってんのかな?

そうだ、見所でも紹介しておくか。
見所:「かっこいいにゃー」
ここです。シリアスからお笑いに走ったのです。リアルタイムでの変化でした。
しかし・・・シリアスみじかっ。