人を愛するということ
私が通っていた学校には、カッコイイ人はいなかった。
勿論、中身をみれば「わー、カッコイイ!」
なんて思わず叫んじゃうような人は、いっぱいいたけれど。
だから、おんなのこ達はいつも「カッコイイ男のコいないかなぁ」と言っていた。
私もよく桃子ちゃんと「うちの学校ってカッコイイ男のコいないよね」と言っていた。
桃子ちゃんが高等部に入学したとき、
何人か、他の学校から友達がやってきた。
その中に、とてもとてもカッコイイ人がいた。
その人はおんなのこだったけれど。
自己紹介の時、高倉ですと名乗った人は
身体はおんなのこだけど、ココロは男のコだった。
色でいったら、黒でもないし白でもない。
灰色だった彼女は、いわゆる性同一障害だったと思う。
そんな高倉さんは、スカートを嫌って学校に来る時は、いつもズボンで学校に来ていた。
そしてとうとう、卒業する時もズボンのまま卒業していった。
水ちゃんはケンジと別れて、暫くたってから高倉さんと付き合うようになった。
同性愛だった。
「私はゲイだよ。男の人も好きだし、おんなの人も好き」
そう水ちゃんはタバコを吸いながら言っていたことを思い出す。
水ちゃんは高倉さんに「響」っていうあだなをつけた。
彼女の、もう一つの名前だった。
その頃、私は水ちゃん達と一緒に
近くの病院に頻繁に出入りをするようになった。
みんなでお菓子やジュースを持ちこんで、屋上に行ってみんなで喋った。
風が気持ち良かった。
病院の屋上から見えた空や街はとってもキレイで、
私は地面にねそべって雲を眺めていた。
横を見ると、水ちゃんが高倉さんと
喋りながら抱き合ったりキスをしているのが見えた。
見慣れたはずなのに
何故か私は顔を真っ赤にして、目を違う方向に向けてしまう。
だけど、それは長く続かなかった。
水ちゃんが卒業してから、2人は別れてしまった。
だけど、高倉さんは水ちゃんが卒業する時、
顔にいっぱい涙を浮かべて、手でぬぐいながら泣いていた。
人からは泣かないだろうと思われていた彼女が、
先生や友達の目の前で泣き出した。
大声で泣かなかったけれど、隠れて泣こうともしなかった。
ただ、泣いていた。
彼女のことが本当に好きだったから。
彼女に、卒業してほしくなかったから。
ボクも一緒に、卒業したかった。君と離れたくなかった。
ただ、それだけのために高倉さんは涙を流した。
戻る