高等部へ

私の学校に限った訳じゃないんだけど、養護学校は大体小学部から、中学部、高等部まである。
だけど、私立じゃないからエスカレーター式にあがれるといったら、決してそうじゃない。
教育委員会が定める、ある程度の定員人数があるから、それを超えたら
内部進学生だろうと、外部からの受験者だろうと、誰かが落とされるシステムになっていた。

その年は、高等部の定員が9人なのに対して、中学部からの受験希望者は私を含めて5人だった。
外から受験にくる人もあまりいないみたいで、みんな安心してるのだろうか。受験勉強をする人はあまりいなかった。

当時担任だった原口先生は、少しでもみんなに勉強をしてもらおうと必死になっていた。
地元の大宰府天満宮に行って、合格祈願して、人数分の鉛筆を買ってきた。
そして、合格祈願と書かれた封筒を、クラス目標の下に置いた。
それでも私はあまり勉強をせずに、ただ毎日ゲームをしたり漫画を読みながら過ごしていた。

そして、当日がやってきた。

学校に行く前までは全然緊張していなかったのに、
受験する教室に入った途端に身体が急にかたくなる。
それはみんなも同じみたいで、友達と話したりする人もいれば、
教科書に書いてる言葉を、ノートに書き写す人もいた。

そして、一教科目。
受験科目は、国語、数学、理科、社会、英語の5教科で、最初は数学だったと思う。

私の学校は、ただむやみに受験する人を落とすためのテストをつくらない。
その人が、いかにどれだけのことを学んできたか、理解できたかを見る。
それによって高等部に入ってからのコースが大分決められる。

小学1年生から、中学3年生までテストの範囲だから、

今更じゃないけど、とっても広かった。

最初は、テスト用紙に書かれているおはじきの数を数える問題や
簡単な足し算引き算だったんだけど、段々問題が難しくなってきた。

どれもちゃんと事前に勉強して、冷静に考えれば物の10秒で
解けるようなモノばかりだったんだけど、
受験勉強を全然していなかった私は混乱する。

次の社会科も、地理、歴史、公民のそれぞれの問題が出される。
全て基礎的な問題なのに、その基礎すら出来ていない私は鉛筆を握り締める。

理科は理科で、めだかの雄雌を見分けなさいっていう
マニアックな問題が出て、暫く呆然とする。やってられない。

国語は、きれいな字で問題が書かれていた。全て手書きだった。
文章問題から始まって、文法やことわざも出る。
時々埋められない問題もあって、国語は得意教科のはずなのにと、悔しむ。
3枚目の問題用紙に、あなたの中学の頃の思い出を書きなさいと、書かれていた。

中学の頃の思い出と言ったら、まず最初に思い出すのは水ちゃんと木村さんの不和。
そして次にアキちゃんとおばあちゃんが死ぬことしか思い出す。
他にも沢山色んな楽しい思い出があるはずなのに、私の頭はそのことばかり浮かぶ。

最後の英語は、ごくごく簡単な基礎問題だった。
単語を書いたり、問題文を読んだり、穴うめ問題だった。

だけど、そこでも私の鉛筆は先に進まない。

全部、基礎的な問題ばかりだったのに、
基礎的なことを事前に勉強していなかった私は、
合格ラインぎりぎりで高等部に合格したと思う。

結果的には、1次試験は6人受けて全員合格で、2次試験もあったんだけど、
もっと、ちゃんと勉強すればよかったと後になってから後悔した。


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