レイプとか、まわされるとか
「沙誉ちゃん、大丈夫だから、もうアイツのことはいいからっ!」
水ちゃんと、その友達の咲子ちゃんが必死に私を止めようとした。
その手をふりほどいて、私は叫びながら裏門の方へ走って出ようとした。
高校1年生の時、私は水ちゃんに連れられてカラオケに行った。
初めて行ったカラオケはとても楽しくて、その味をしめた私は
それから水ちゃんや咲子ちゃんと、頻繁に近所のカラオケに出入りするようになった。
毎日、夜遅くまでカラオケに行って、外が真っ暗になって家に帰った。
そして翌日、私は日が十分に登ってから社長出勤で学校に行く。
そんな生活を送っていた。
ある日、いつものように仲間とカラオケに行ったら、歌ってる時に外の窓から中を覗いてる男の人達がいた。
男の人は2人いて、1人は太ってて、おんなの子には縁の遠そうな人だと感じた。
そしてもう1人の人は背が高くて、世間で言われるイケメンってこういう人をいうんだろうなと思った。
水ちゃんと咲子ちゃんは、最初2人に気づくと、目を開けてびっくりした顔で見ていた。
だけど、すぐに嬉しそうな顔をしてきゃぁきゃぁ言いながら騒ぎ始めた。
「どちらさまでしょうか?」
興味よりも先に警戒心が出る私はドアを開けると質問した。
私の存在を認めると、それまで食い入るように窓にへばりついてた
男の人達はたどたどしく質問に答えてくれた。
「あ、いや、、、幼馴染がいたから」
「幼馴染?」
「あ、もしかしてケンジ?お久しぶりー」
そう言って咲子ちゃんはケンジと呼ばれたイケメンの人の方へ嬉しそうに手を振った。
「咲子ー。お久しぶり」
「水ちゃん、沙誉ちゃん、ケンジって、超カッコいいでしょ?」
咲子ちゃんはそう私に耳打ちをするけれど、
彼の何処がカッコイイのかわからない私は、彼らをじっと見ていた。
「あのさ、よかったら俺らと一緒に歌わない?」
水ちゃんと咲子ちゃんの顔が明るくなった。
もう答えは出てるのに、「どうしよう」とかいっている。
そんなことを言いながらも、
数分後には水ちゃんと咲子ちゃんはそそくさと男の人たちが待つ部屋へ荷物を持って行った。
迷った私は、彼女達についていくことにした。
男の人達がいた部屋は、それまでいた部屋と本当にすぐ近くだった。
ドアから男の人たちの歌声が聞こえた。
タバコぐさい。
タバコの匂いが充満していた。
部屋に入ると、軽く自己紹介が始まる。
ケンジと名乗ったイケメン風の男と、公輝と名乗った太ってる男は
同じ高校に通っていると言った。
「沙誉ちゃん、私ね、小学生の頃にケンジにいじめられてきたんだよー」
いじめと聞いて男の子のことを思い出す。
あの子は元気にやってるのかな。女性恐怖症になってないのかな。
そんなことを次々に思い浮かぶけれど、私の声は届かない。
時間がやってきて、私達はカラオケから出た。
外でケンジが、水ちゃんに携帯の番号を交換しようよと言ってくる。
それを聞いて水ちゃんは嬉しそうに自分の携帯を彼に差し出した。
私のはいいの?と咲子ちゃんは言うけれどケンジは答えない。
そのやりとりを見ながら、あぁ、これはただのナンパだったんだと思う。
そして少したってから、水ちゃんがケンジと付き合ったことを聞いた。
水ちゃんは楽しそうに話してくれたけど、ぼそっと言ったあの一言が忘れられない。
「だけど、二人でまだ遊んだことがないの」
「え?」
思わず聞き返した。
「咲子がね、いつもついてくるんだ」
水ちゃんがケンジと付き合う前から、咲子ちゃんはケンジのことを好きだったと言っていた。
だけど、ケンジが選んだのは水ちゃんの方だから、どうにも出来ない私は彼女の話を聞くことしかできない。
好きで好きで、諦められなかった咲子ちゃんは、二人が何処へ行くにしてもついてきて、
ケンジさんがどんなにいやがっても、彼のアルバイト先にヒマさえあれば行っていた。
すぐに水ちゃんとケンジは別れた。
「付き合ってる気がしない」とう言われたらしい。
原因の1つに咲子ちゃんが関係あったんだけど、咲子ちゃんは知らない顔をしていた。
咲子ちゃんは
水ちゃんとケンジが別れても、まだ、アルバイト先に行ったり電話やメールをしたりしていた。
最初は優しくあしらっていたケンジの方も、我慢できなくなって次第に
「ぶっ殺す」とか、そんな脅迫メールを送るようになってきた。
咲子ちゃんはそのメールを見て落ちこんでいたけれど、
彼にそんなメールを書かせたのは紛れもなく咲子ちゃんだった。
そして、ある日。
彼の今までたまりにたまっていた怒りが爆発した。
ぶっ殺す、いい加減にしろとか、好きな人からそんなメールを送られてきた
咲子ちゃんはどうしていいのかわからずに、あの時、彼と一緒にいた
公輝に電話をした。「どうしたらいいだろう」と。
彼に会いたい、だけど会えない。彼が会ってくれないから。
彼女と別れたばかりの公輝は、色々あったんだろう。
とても恐いことを言った。
「やらせてくれるなら、アイツに会わせてあげてもいいよ」
咲子ちゃんは、数秒悩んだ後「それでもいい」といってOKした。
受話機の向こうから「アイツマジでくるんかよ」と、ケンジの声がしたらしい。
その日の夜、咲子ちゃんは心配してついてきてくれた水ちゃんと
彼が待つバイト先へと行った。
行くと、荷物が積んである倉庫に案内され、中に入ると閉じ込められ、外から鍵をかけられたらしい。
部屋の中には、ケンジと公輝や、他にも沢山男の人たちがいた。
ケンジはこれから起こることを思って嬉しそうに口笛を吹いていた。
男の人達は犯る順番を決めようと、じゃんけんを始めた。
水ちゃんの顔が真っ暗になった。
うろたえる咲子ちゃんを「咲子、逃げるよ!!」と腕をつかんで
必死にドアを開けてくださいと、懇願して開けてもらい逃げた。
その話を翌日学校で聞いた私は激怒した。
ふざけるな。
水ちゃんと咲子ちゃんが必死に、ダメだよと腕をつかむ。
その手を思いっきり払いのけたい衝動にからかわれながら、私は前へと進んだ。
「もういいから、いいんだよ」
二人は必死にそういって、私をなだめようとした。
水ちゃんや咲子ちゃんが、どうして「いいんだよ」って言えるのか私にはよくわからない。
彼女達の方がいいんだよっていう言葉を必要としているのに。
友達がまわされそうになった。しかも大多数の人に。
レイプとか、まわされるとか。テレビや小説だけの世界だろうと思っていたのに、こんなに身近で起きるなんて。
背筋が寒くなった。
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