学校に行きたくない

朝が来た。

意識が目覚めるけど身体は動かない。
起きようと必死になって目をあけて身体を起こそうとするけれど
私の身体はとても重い何かの塊のようになってびくともしない。
感覚が戻ってきて、身体を起こそうとすると
今度は意識の方が拒絶した。

昨日のことを思い出す。
1時間目から6時間目まで、マサヤンはずっと暴れていた。
誰かの叫び声、何かが倒れる音、破壊される音。
泣きながら教室から無理矢理出される彼、榊原先生の悲しそうな顔。

いや、違う、一昨日は違う、何か違うことがあったはず。

何か楽しいことが一つぐらいあったはずだと
楽しい光景を思い描こうとするけれど、私の頭からは何ひとつ出てこない。

1週間前、1ヶ月前はきっと違うんじゃないかと思って
必死になって頭の中を模索するけれど、そこからも何も出てこない。


そこから出るのは
誰かの泣く顔や彼の叫び声ばかりで、それ以外に出てこない。

今日もそこに行くと思うと、身体が鉛のようになって動かない。

少しだけ、少しだけと思って、まぶたをとじた。



今は何時だろう。
目をつぶり、布団に潜り寝たふりをしながら思う。

トイレに行きたくなった。

「あれ、ねぇちゃんはまだ寝てるの?」
「そうみたいですね」
向こうの部屋から両親の話声がした。
トイレに行きたいけど、部屋から一歩出たら嫌でも両親と会ってしまう。
どうしよう。

「だけど、あの子はまた寝たふりをしてるんでしょう」

顔が赤くなる。

立ちあがってふすまを開け、トイレの方へ歩いていく。
「ねぇちゃん、もう11時だぞ、学校どうするんだ」
後ろから追うようにお父さんの声が聞こえるけれど
私は聞こえないフリをしてそのまま中に少しの間、閉じこもる。

トイレから戻ると、居間に心配そうな顔をしたお父さんとお母さんの顔が見えた。


学校に行きたくない。

休むんだったら、自分で学校に電話しなさいといわれ仕方なく制服を着て、
午後の分の授業の教科書を適当にカバンに詰め込んで私は家を出る。

空を見上げると、太陽が眩しい。真っ青だった。
右を見ても、左を見ても。
私と同い年ぐらいの人は一人も歩いていなくて
一人、学校に行く通学路を歩いていた。

戻る