受かってしまった


「次のグループの方」

とうとう、私の番が、来た。
使い古しのノートに、面接の練習をする、私の目と、手が、止まった。
今日は、集団面接で、私の他にも、たくさん、たくさん面接を受ける人がいる。
この中で、一体何人が、合格するんだろう。

入ってくださいと言われ、小さな教室の中に、ぞろぞろっと、みんなが入って、私も入った。
面接官の人達が3人いるけれど、誰が誰なのか、私には見分けがつかない。
他の子の、顔を見ると、とっても、緊張した顔をして、手が、震えているように見えた。

志望動機はと聞かれ、勢い良く理由を言った子。
高校生活で、何かしたことを聞かれ、実績を述べた子。
大学に入ったら、何をしたいかと問われ、自分の希望を話した子。

色んな人達がいた。

私は、Special Need Schoolにいた頃、生徒会に入っていたことが、何回かあった。
そして生徒会と同じぐらい、学校では、大切な委員会の長をつとめたこともあったし、
1年間に1回ある、生徒総会の時に、議長をした経験も、ある。
最後の年には、運動会で応援団長をして、学習発表会の劇では、主役を演じた。
また、勉強を頑張ったせいなのか、学校で、1番か、2番の成績を誇るようになり、
特別に進学するための勉強を、先生に、時間を割いてしてもらった。

こんなにも、普通の人よりも、たくさんたくさん、たくさん、したことがあるのに、
私は、ちっとも、言えなかった。
学生証明書を見て、元気付けても、やっぱり、私はまだ迷ってた。
受かりますようにと、答えている一方で、どうか、落ちますようにとも、私は願っていた。

そして、数週間たった後、ある朝のことだった。

いつも通り、遅刻か、それともまぬがれるのか、
死に物狂いで走って、自分の教室にかけこんだ私は、何とも、神妙な空気に迎えられた。
みんなは、いつも通り、今日もぎりぎりセーフだったねと、笑って言ってくれたけど、
先生達の顔が、とっても変な顔に見える。いつもと様子がおかしい。
そして、担任の春谷先生が、HRの途中、教室から出て行ってしまった。

急ぎ足で出て行って、同じように帰ってきた先生の顔は、とっても悲しそうな顔をしていた。
そして、「皆さんに、今日は悲しいお知らせがあります」と、春谷先生は一言、ぽつりと言った。
その言葉を聞いて、私は、また人が、死んだのかと、思う。
何だ、何だと、明英や、マサヤン、たっくんや、マジメ君までもが、同じように神妙な顔になった。

「二村さんが」


深呼吸して、次の瞬間、春谷先生は、とっても大きな、大きな声で、嬉しそうに、言った。

「二村さんが、大学に合格しました!」

観声が、沸き起こった。

沙誉ちゃん、おめでとう、おめでとう、おめでとう、と、みんなの声が聞こえる。
山田先生や、鈴木先生、華子先生が、
本当に嬉しそうな顔で、おめでとうと言って、拍手をしてくれた。
声を聞きつけて、1年や、2年のクラスからも、おめでとう、おめでとうと、
いつもお世話になっている先生や、後輩が来てくれて、また、同じように笑って、拍手をしてくれた。

拍手が、雷鳴のように、鳴り響く。

噂が広まったのか、その日、一日中、私は来てから、帰るまで
色んな人に、おめでとうと、おめでとうと、言われた。
友達から、おめでとう、先生から、おめでとう、後輩から、おめでとう。
母父の方から、おめでとう、 給食のおばちゃんから、おめでとう。    

私は、ありがとう、ありがとうと、
沢山の人に、言いながら、受かってしまったと、早速、後悔し始めていた。
とうとう大学に、受かってしまった、合格してしまったんだ、と。
一人、呪文のように、呟いた。

戻る