それでも、ずっと、あなたのことが、好きでした


あなたのことが、好きでした。
今は、もういないけど、それでも、ずっと、あなたのことが、好きでした。

受験期に入って、いつものように勉強して、
シャーペンを握っていた私の手は、動かなくなった。
また、あの人のことを考えてしまった。
もう、終わったはずなのに。
恋人じゃないのに。
私は、いつまであの人のことを想ってしまうんだろう。
目を瞑ったら、今でも、色んなことを、思い出す。

あの人のことを。

私が初めてPCに触ったのは、高校1年生の秋。
不登校になったのを、心配したのか、親は使っていたPCを借してくれた。
それまでPCの存在は知ってたけど、自分で使ったことは、ただの1度もなかった。
生まれて初めて触る、キーボード。電源を入れたら、画面がうつった。
慣れない手つきで、ネットサーフィンをしたら、次々に、色んなものが出てくる。
何もかもが、新鮮な世界で、私はすっかり、びっくりしてしまった。
それでも、インターネットは、楽しかった。

そしてある日、桃子ちゃんの家に行ったら、
桃子ちゃんはソファに寝ながら、PCをしていた。
画面を見たら、沢山のメールが着ていた。

「桃子ちゃん、これはなぁに?」
私は、どのメールのタイトルにも、必ずある文字を指しながら言った。
「これはね、MLっていうんだよ」
メールを見ながら、桃子ちゃんはそう言った。
「MLって?」

何も知らない私に、桃子ちゃんは、丁寧に説明してくれた。
どうやら、MLはメーリングリストと言って、たくさんの人とメールできるらしい。
チャットと似てるようだけど、違って、MLは、いつでも好きな時に、
メールが出来る。そんなことを、桃子ちゃんは言ったような気がする。

「桃子ちゃん、私も、入りたい!」

そう言った私を、桃子ちゃんは、私をびっくりした顔で見た。
私が人一倍、気難しがり屋で、人間関係が下手なのを、知っていた
桃子ちゃんは、うーんと、悩んだ。
そうして、一言、桃子ちゃんは、言った。「わかった、みんなに、話してみるよ」

そして意外と、歓迎ムードで、
桃子ちゃんの紹介の元に、私はMLに入った。
MLの代表の人は、私にメールで、「沙誉さんを歓迎しますよ」と言ってくれた。
だけど、彼は、その次に、こうも言っていた。

「桃子ちゃんは、MLで私達に、自分が障害を持っていることを告白してくれました。
失礼ですが、沙誉さんは桃子さんと友人だということを、聞いていますが
沙誉さんも障害者なんでしょうか?」

はい、そうなんです、私は障害者なんです。
と言ったら、どうなるんだろうと、思った。

だけど、言う前も、言った後も、その人の態度は、変わらなかった。
ちょっとだけ、安心した。

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