進路取捨選択<前編>


「二村さん、ここの大学は、どう?」
「あぁ、ここですか?やめておきます。私の勉強したい方じゃないし、
それに、お金さえ払えば入れるんでしょう?こういう学校は。私、好きじゃないんです」
「どうして?」
「そういう所は、誰でも入れるんですよね?」
「うん」
「就職をしたくないから、入る人もいるし、何の目的を持たない人も、
お金さえ出せば入れるんじゃないですか?」
「そうだね」
「私は、嫌いです。そういう所は、嫌いなんです」
「そうなんだ」
少し考えて、私は、笑って先生に、こう言ってやった。

「特待生で行くんなら、考えないこともないです。
だけど、私はこういう学校には、行きたくありませんし、興味さえ、ありません」

夏休みの間、先生と私の間で、こんな会話が流れたような気がする。
だけど、その時の私は、行きたい学校に向かって、ただ勉強していたから
そんなこと、気にもとめなかった。

ただ、私が校内推薦テストに落ちてからは、状況が、かなり変わってしまった。

その学校、そのものを受験していないんだけど、学校推薦は、落ちたから受けられないし、
センターを受けようと思っても、申しこむ日が過ぎてしまったから、受けられない。
かといって、今から就職を考えても、お水ちゃんや、他の先輩のようになることを想像すると、
私はすっかり、こわくなってしまった。
学校の成績は良かったし、人望もあって、生徒会長をしていた人達なんだけど、
一般企業は、そんなことおかまいなしに、単なる養護学校卒業生としか、見てくれない。
学校の先生が、一生懸命に頼んだのにも関わらず、全部電話で、断わられた人がいた。
卒業して、働いたのはいいけれど、ずっと給料を貰えずに、仕事先で倒れて入院した人もいる。
何て、世間は悲しい目を持っているんだろう。どうして、人を、人として、見れないんだろうか。

私は、すっかり悲しくなってしまった。だけど、今はそれが、ひとごとではなくて、自分の事になってしまう。
その時に、また、夏休みの時に先生と話した学校の名前が出た。

その学校は、私が行きたかった学校と違って、勉強よりも就職の方を、大切にする学校だった。
お母さんは、お母さんで、「就職のサポートが、他の大学と違って良いから、とってもいいみたいよ」
と言って、しきりに私に、その学校を、勧めるようになっていった。
人から言われるままに、資料請求をしてみると、なるほど、確かに良いことが、いっぱい書いてある。
だんだん、私はその学校に、興味を持ち始めた。
その学校に保母さんになるための勉強が出来ると聞いた私は、
その大学に行って、保母さんになりたいと願った。

だけど、そこでも、やっぱり、私の病気が邪魔をしてしまう。


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